~~外海~~
「貴様……人間の分際で調子に乗りおって! 私の傷もとうに癒えておる! 貴様にはあの馬鹿ども以上の苦痛を味合わせてくれるわ!」
皆さんどうも! とんでもないクズと相対中のハムザ君です!
「黙れ三下。やれるものならやってみろ」
こんな奴にはさっさとこの世から退場してもらうとしよう。その自信を粉々に砕いた上で倒してやる!
俺は頭の海賊王の帽子を鉢巻のように付け直して気合を入れ,剣を構えなおした。
さあ! やろうか!
【海神のつかいが あらわれた!】
俺は先手必勝とばかりに相手に接近し,剣に雷を纏わせて敵に斬りかかる。
「ふんっ!」
「甘いわっ! "らいじん斬り"!」
しかし,敵もそれに対抗するように剣に電撃を乗せた一撃を合わせてきたことで再び拮抗してしまう。
……ねえ,それってホントにドラクエ11に出てくる技かい? いや,それはおまいう案件か。
「では次だ!!」
そこでこちらも纏う属性を変えながら続けざまに攻撃を仕掛けていくが,そのたびに敵も技を切り替えて対応してくる。
雷には"らいめい斬り"炎には"れんごく斬り"氷には"ブリザーラッシュ"といったように敵も多様な攻撃手段を用意しているようだ。
更には俺がその場で成功させた風属性や闇属性などのエンチャントによる斬撃に対しても"ふうじん斬り"や"ダークマッシャー"などの同属性の技を使って相殺させてくる。
「どうした人間! 大口を叩いた割には貴様の手札もその程度で尽きたか!」
なんともやりにくい……いや,ムキになって斬りあいに乗ってくるような敵であるという点ではやりやすいかもしれない。
実はここまで剣を巧みに扱う魔物と戦うのは初めてなのだ。そもそも最近は騎士の中にも剣1本で俺とここまで戦える相手すらいなかったので,俺も少しづつ感覚を確かめながらの戦いだ。
しかも敵の攻撃は'技'としての完成度が高い。その技も"かえん斬り"などではなく"れんごく斬り"などである時点で技の威力が察せられるというものだろう。
今見ただけでも,こと技の豊富さに限れば奴の上司かもしれないデスエーギル以上だと言える。
とは思いつつも,俺はその攻防の間にも少しづつ相手の剣のクセをなどを把握しながら,互角かそれ以上に渡り合うことが出来ていた。
これは戦闘前に投擲を受けた段階で急いでかけた強化の影響が大きいだろう。単純な力負けをすることなく戦うことが出来ている。
むしろこれがなければ今よりも遥かに苦戦を強いられていたことは間違いない。
というかあまり関係ないかもしれないが,俺の"天馬の大剣"の攻撃力補正込みでそれなら,相手の'ちから'のステータスだけでなく,持っている剣も中々の業物だな。
……べ,別に欲しくなんてないんだからねっ!!
そのままお互いに少しの傷を作りつつも攻撃を放ちながら船の上で激しく動き回る戦いを続ける。
甲板にいくつものへこみが生まれるが……許容範囲だと思いたい。
俺と敵とでは,単純な剣の技量ならば僅かながら俺の方が有利だ。ただ,流石にこれで押し切ることは難しいだろう。
敵の手札を少しでも早く暴くためにここは軽く挑発してみようか。どうせ奴なら乗ってくるだろう。
「お前の攻撃にも随分と慣れてきたぞ! 自称海神のつかいも大したことがないようだ!」
「なんだと!? フンッ! この斬りあいなんぞ前座に過ぎぬわ!」
そう言って反応した敵は,少し下がって瞬時に魔力を高めてから手のひらに集め,呪文による攻撃を行ってきた。
「"マヒャド"!」
すると船の真上に氷塊が現れ,俺に向かって勢いよく落下してくる。
俺はそれに対処するために"イオラ"を放つ準備をするが,それより先に再び敵の声が届く。
「まだ終わりではないぞ! "メイルストロム"!」
なんと敵は海から出現させた水の柱をこちらへの直接攻撃に用いるのではなく,その氷塊にぶつけたのだ!
そしてぶつかった水は氷塊を覆うようにして固まって氷となり,マヒャドをより巨大な氷塊へと進化させた。
「フハハハ! どうだ! 船もろとも沈むがいい!!」
敵の愉快そうな声があたりに響く。
貴様もセルフ連携を!?なんて冗談が浮かぶが,そんな場合ではない。
「……」
作戦通りではあるが,予想以上に強力な攻撃だ。
俺はそのままイオラを放とうとしたものの,そこで動きを止める。明らかに威力不足なのがわかる。
外側の氷は中心の氷よりも強度は落ちるかもしれないが,それでもかなりの質量があるだろう。
ならば俺お得意の属性系の特技たちを使うなり躱すなりすればいいかと思うかもしれないが,船の上で使うには向かない技ばかりなのに加えて,躱しても船が危ない。
敵は船の破壊が楽ではないと思ったから俺たちのにとっても戦いやすい船上での戦闘に応じているのであって,奴らにとってはそれこそ水中戦でも構わないのだ。
一応はこの船が元から頑丈なことや補強の効果もあってある程度は耐えられるだろうが,あのクラスの攻撃やそれに対応するために同程度の威力の物理攻撃を放つための踏み込みをすれば比喩抜きで船が沈みかねない。
おそらく他の船の皆もそのあたりを理解して攻撃には注意しながら戦ってくれているはずだ……そうだよね?
つまり,船になるべくダメージを与えずに,尚且つ敵の攻撃も船に当てずに対処する必要がある。
俺は即座に対応策を決定した。
イオラを放つ態勢のままに呪文が暴発しない限界まで魔力を込めた後,そのまま更に込めていく。
このままでは暴発してしまいそうだが,この場でその一つ上の段階へと至れば問題はない!
……この場で"イオナズン"を完成させる!
魔力を込め続け,なんとか無理やり制御下においた呪文を上空の氷塊に向かって撃ちだす!
「おおおおお! "イオナズン"!!」
――ドオオオオオンッ!!!!!
上空でぶつかったイオナズンは凄まじい爆発を起こし,大きな衝撃を生み出した。
幸いなことに氷はかなり細かく砕けたようで,落下による周りへの被害は出ていないようだ。
呪文を成功させられた安堵や喜びは一端置いておき,戦いを再開せねばならない。
俺はすぐに敵に向き直ろうと視線を戻したのだが…そこに奴の姿は見当たらなかった。
すると次の瞬間,背後から声がした。
「どこを見ている! ここだあああ!」
俺はすぐさま後ろを振り返ると,敵はすぐ近くまで迫っていた。
不覚! 俺が後ろを取られるとは! まさか先ほどの攻撃を撃ちだした直後には既に動き始めていたのか!!
「貴様はこの私の最強の奥義を以て消し炭にしてやる!!」
敵が何か物騒なことを言っているが,俺は敵が不意打ちで声を上げてきたことを揶揄する言葉を発する余裕すらなく,敵の攻撃に対する迎撃に全ての集中力を注ぐ。
「さぁ人間よ!! 我がひっさつ剣をくらうがいい!!!」
「くそっ!!」
「"魔神の絶技"!!!!!」
その瞬間,勢いのままに向かってくる敵の剣を持つ腕が目にもとまらぬ速度で振り下ろされた!
「がっ……ぐあっ!!」
俺は体を切り刻まれて大きなダメージを負ってしまう。
奴の一瞬の攻撃の間に繰り出された斬撃回数はなんと7回……俺はなんとかそのうちの4発を剣で防ぐことに成功したが,残りの3発はそれぞれ俺の右脇腹と右肩を裂き――
――そして更には左腕を斬り飛ばした。
~海神のつかい視点~
「"魔神の絶技"!!!!!」
私は目の前の人間に向けて,現在放つことが出来る最強の技を繰り出した。連撃の内の何発かは防がれたが,当たった斬撃はかなりの重傷を与えたことをすれ違いざまに確認し,気を静めた。
我々魔物と違って貧弱な人間にとって,あの傷は十分致命傷たるものだろう。
今までの戦闘中も回復呪文を使うような気配は見られなかった。
たかが人間風情に不意を突いた上で更にこの技を使うことはこの上ない屈辱だったが,こいつはここで倒しておかねば私の……延いてはデスエーギル様の障害になるやもしれんと考えたのだ。
「我が最強の攻撃を受けて生き残っていることは褒めてやろう。だがそれだけだ,人間ごときが私に勝つことなどあり得ぬ話だ」
そして止めを刺すために振り返ろうとした瞬間――
「なるほど,やはりそれがお前の全力か……その程度であれば恐れるものでもないな」
!!
私は悪寒を感じて咄嗟にその場から飛び退くと,私が先ほどまでいた場所に鋭い斬撃が飛んでくる。
慌ててその相手を確かめようとその方向を見ると…そこにはあの人間が体中に青い光を纏った状態で五体満足でこちらに剣を突き付けていた。
ええい! 一体何が起こっているのだ!
「お前は――」
その非常識な光景を見て,私は叫ばずにはいられなかった。
「お前は一体何なのだ!!!」
「俺はハムザ。誇り高き騎士の国の王子だ!」
~主人公視点~
痛ったあああああ!!!
敵に剣を突き付けながらも,俺は体に残る痛みに心中で悲鳴を上げていた。
先ほどの敵の攻撃によって斬られた傷や斬り飛ばされた腕は回復済みだが,急いで治したからか痛みがまだ少し残っている。
え? そもそも何があったのかだって?それは――
・
・
〈攻撃を受けた直後…〉
痛ったああああああ!!!!!
俺は敵に腕を斬られたことによって,俺史上最大の痛みと戦っていた。
でもそんなことより早く治さねば! というか治るよね!?
俺は斬られてしまった直後,すぐさま斬られた左腕をもう片方の右腕で掴んだ。そして斬られた断面を合わせて――
「ふんっ! "ベホイム"!」
呪文を唱えるとあっという間に腕はくっつき,ぎこちないものの腕も動くようになった。それにそこ以外の傷も治っていく。
よっしゃあ治った!
おそらく治療は成功した……はずだ。それにしても,敵はさっきの攻撃を最強の奥義って言っていたな。
ということはあの攻撃を防げた以上,奴の切り札すら耐えきったということで合ってる?
……ならばもういいだろう。ゾーンを温存する理由もない!一気にカタを付けてやる!
そうして俺は意識を深く集中させた。
・
・
こんな感じですハイ。
いや~ホント腕がくっついてくれて良かった。回復呪文鍛えておいて良かった!
それにしても奴はどうしたんだろうか?「お前は何なのだ!!!」なんて……。
確かに自己紹介はしていなかったが,今求めるかな普通?
……まぁいいだろう。
それはともかく俺は最初に決めたのだ,奴の自信を粉々にしたうえで倒してやると。
ゾーンは消耗が激しいゆえに敵の分析がある程度済むまで温存していたが,もう十分だ。
さて,ここからは本気でいかせてもらうとしよう。
「どうした自称海神のつかい,来ないのか?」
「くっ……舐めるなあああ!!」
敵は全身を怒らせてこちらに突っ込んでくる。
「もう一度食らわせてやる! "魔神の絶技"!!」
子供の学習能力を甘く見てもらっては困る。その技はもう見切った。そして新たな技も覚えたところだ!!
「無駄だ! "天下無双"!!!」
これは攻撃回数などで言えば"魔神の絶技"に劣る6連撃の技だが問題はない。今の俺ならこの技で敵の2連撃あたり1撃で相殺することも可能なはずだ!!
スーパーゾーン状態になった俺は,その考えを実行して敵の"魔神の絶技"を撃ち破った。
「なんだとっ!?」
俺は敵の驚愕をよそに残った2撃でその胴体を斜めから十字に大きく切り裂いた。
「ぐわあああ!!」
そしてそのまま跳び上がり,剣に雷を纏わせて振り下ろす。
「これで終わりだ! 雷光!渾身斬り!!」
「ぐおおおお!!!」
――ガッ……ドサッ
その攻撃で敵はその場で膝をついてそのまま前のめりに倒れた。
こんなものか……なんだかあっけないな。
ただかなり疲れた。特にマヒャドのセルフれんけいはゾーン関係なくイオナズンを成功させなければヤバかっただろうから肝を冷やしたでござる。今は早く休みたい気分だよ……。
さて,他の者たちは皆無事だろうか?そう思って周りを見ると,この船を襲っていた魔物たちも全て討伐されており,彼らも遠目からこの戦いを見ていたようだ。
俺は彼らに声でもかけようと近づく。
お~い!皆無事k「王子! 後ろです!!」 !!!
その声が聞こえた直後,後ろから剣による"刺突"が迫っていた。
「油断したな!!」
こいつ! まだ生きていたのか!? 確かに油断していた! だが――
「ふんっ!!」
俺はそれを簡単に弾いて敵を吹き飛ばす。念のためにゾーンを維持しておいて良かった。
「グッ! ……しかし狙い通りよ!!」
何? ……!! まさか!
「この先は海だ!! 貴様も簡単に追ってはこれまい!!」
「逃げるのか!!」
「いいや違うな! もはや貴様とのタイマンに付き合ってやる必要はない!! このあたり一帯の海を荒れさせ周りの船ごと沈めてやるのよ!」
まずい……海は奴らのテリトリーだ,確実に止めを刺そうにも海では当てられるかわからん!
そう考えているうちに敵は海上に降り立ち,魔力を溜め始めた。
このままでは間に合わん!!
俺がそう考えたその時――
――ドーーーン!!!
ドーーーン!!!
「ぐあっ!! なんだこれは!?」
――ドーーーン!!!
ドーーーン!!!
ドーーーン!!!
「ぐわあああああ!!」
少し離れた場所にいたはずの2隻の船が近くまでやっていており,敵に向けて一斉に砲撃を浴びせている。それに対して海神のつかいは手負いなこともあって苦しんでいるようだ。
「「王子! 今のうちに!!」」
それぞれの船からDさんとトウジンの声が聞こえる。
……お前たち,感謝する!!
俺は甲板の上を最速で駆け,そこから船の外の海へ飛び出す。
そこから手に持つ大剣を上に構え,空砲の雨の中にいる敵に向かって落下していく。
「この私が……負けて……なる……ものか」
敵は俺の様子を見てなんとか剣を使って防ごうとする構えを見せてくる。
先ほどの雷光渾身斬りでは奴を倒すには威力が足りなかった。ならばもうこれしかない! というかやるしかない!!
「お前に弄ばれた者たちの痛みを知れ!!!」
「この……私が……
人間ごときにィィ!!!!!!!!!!」
「うおおおぉ!! 雷光っ!!!全身全霊斬り!!!!!」
そうして振り下ろされた俺の一撃は敵の剣ごと叩き折り,そのまま敵を真っ二つに切り裂いた。
いや~強敵でした! それにしても主人公の成長速度がむしろ加速している気ががが。
ちなみに,敵が使っていた"ブリザーラッシュ"や"らいじん斬り"などは【ドラクエモンスターズ】シリーズなどで登場する属性を持つ斬撃です。
それではまた!('ω')ノシ