我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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20話です! どうぞ!


20話 幕間 釣り大会と出会い

~~ナギムナー村~~

 

――ぐで~

 

皆さんどうも! 詰所の部屋で休憩中のハムザ君です!

 

いや~ここナギムナー村はご飯も美味しいし,村人も俺に対してサマディーほどオーバーリアクションしてこない!

 

環境が違うから,訓練内容も色々と出来ることを考えるのが面白い!

 

それにここでの仕事内容も不慣れなものが多くて新鮮で楽しいしね!

 

これこそ俺に必要なものだったのさ~。

 

今日は訓練もないから久しぶりに完全に溶ける日にしよう……。

 

……ただ,最近なんだか時々視線を感じる気がするんだよなぁ。気のせいかもしれないが,どうにも寛ぎきれない。

 

――コンコン

 

「王子! 村長が王子にお話があると……今よろしいでしょうか?」

 

そんな風に溶けていると,部屋がノックされる。

 

その瞬間,俺は瞬時に王子モードに切り替える。

 

「ああ,連れてきてくれ」

 

「はっ!」

 

少しすると,部屋に村長が案内されてくる。

 

「どうした村長? なにかあったか」

 

「お時間を頂きありがとうございます。実は村が落ち着いてきたこともあり,明日に村で釣り大会を行おうかという話が持ち上がっておるのです。そこで,王子のお考えもお聞きしたいと思い参りました」

 

ほ~,釣りね。そういえばこの世界ではやったことがなかったな。

 

……というか明日!? もう準備万端じゃないですか! 俺がダメって言ってもする気だろ君たち!!

 

まぁ彼らの間で話が持ち上がっているなら運営もほとんど任せていいだろうし……いいんじゃない?

 

「良い考えだな。そうだ,それは私も参加して良いものなのか?」

 

「もちろんでございます! 王子が参加されるとおっしゃるならば皆も喜びましょう!!」

 

お,おお。テンション高いね……俺が参加しても皆が喜ぶのかは疑問だが。しかし参加するからにはテッペン目指すしかない! いくぞー!!

 

 

 

 

そして当日――

 

 

「ではこれより! ナギムナー村釣り大会を開催する!!」

 

 

「「「おおおおおおおおおお!!!」」」

 

 

村長の一言に,そこにいる人々は大声で応える。

 

皆も楽しみにしていたらしいからやる気満々だね!

 

この日は早朝から村の海辺に村中から人々が集まり,各々が自前の釣り具を持参して待機している。

 

俺も今回は騎士たちとも別行動にして一人で挑むことにした。

 

最初はゴネられたがなんとか跳ね除けて認めさせたのだ!

 

「船の使用は禁止で,範囲は村周辺の海辺のみ! 期間はこの後から昼まで! 終了間際には崖から空砲を撃つので,それを合図に再び集まってきて欲しい! その時間内で最も大きな獲物を釣った者が優勝だ!」

 

時間が長いのか短いのか判断がつかないが,このあたりはどれほど釣れるのだろうか?

 

……せめて1匹は釣りたいなぁ。

 

周りにいる慣れていそうな漁師たちを見るとテッペン獲れる気がしなくなってきた……。

 

竿も仕掛けも針も大物向けに絞った奴にしたのは攻め過ぎだったか?

 

「それでは……開始ぃぃぃ!!!!!」

 

その合図と共に,村人たちは一斉に飛び出していった。

 

……しまった! 弱気になっていたら出遅れた!!

 

俺は急いで追いかけるが,既に彼らはそれぞれが目を付けた釣り場に陣取って釣りを始めている。

 

……ぐぬぬ,もう全然スペースがないじゃないか! というか早すぎないか皆!

 

このあたりは既にどこも人がいっぱいで俺が使えそうな場所がない。このままではただでさえ既に長めに調節してある糸を更に伸ばしてから,膂力に任せた狂気の大投げ釣りに挑戦しなければならなくなってしまうぞ。

 

さてどうしたものか……あ! そうだ!!

 

 

 

~~ナギムナー村はずれ・しじまヶ浜~~

 

というわけでやって参りましたのはしじまヶ浜!!

 

ここは墓場が近いことやキナイのあれこれもあって村人もあまり近づかないだろうと思っていたが,思った通りだった。

 

さてと,俺はこのフロンティアで大物を釣り上げてやるのだ!

 

そう意気込みながら歩いていると,人影を発見した。

 

ま,まさか先客だと!?

 

「あ,王子様!」

 

そう思って近づいてみると……そこにいたのはキナイ娘だった。ちなみに名前はナトラというらしい……うーん面影。

 

「おや,そなたもここで釣りか?」

 

「うん。それに,ここは静かで落ち着くんだ」

 

キナイと彼女は以前までこの辺りに住んでいたのだが,あれから村の中に住居を移したのだ。

 

ただまぁ……生まれた時から住んでいたこの辺りは彼女にとっては半分家みたいな感じだろうからなぁ……っと,それはともかく!

 

「私もここで釣っていいだろうか?」

 

「うん! もちろん!」

 

よし! 正直ここを使う気まずさがなかったといえば噓になるから,元住人のお墨付きが出たなら精神的には無敵だ!!

 

俺はその場で腰を降ろし,早速竿に餌を付けてから海に向かって振りぬいた。

 

――ブゥンッ!! ポチャ……

 

……少しばかり音が大きかった気もするが遠くまで飛んだので気にしないことにしよう。

 

ふぅ~,後は待つだけだ。この竿に糸を巻くリールはないが,我が力を以てすれば多少深くても余裕で引き上げることが出来るのだ!!

 

……

 

―チラッ

 

………………

 

―チラチラッ

 

な,なんか気まずい……。

 

なぜかわからんがさっきからキナイ娘がチラチラとこっちを見てくる!!

 

はっ!? まさか俺のクールな化けの皮を剥ごうと機会を狙っているというのか!?

 

たまーにいるのだ,昔の先輩もそうだった! こういう何気ない時にこちらを観察してくるのだ。

 

おそらく隙あらばこちらの弱みを握ろうとしているのだろう。だがそうはさせん! このハムザ,伊達に12年生きてきておらん! その勝負,受けて立とう!!

 

「あのね,王子様」

 

あ,はい。

 

俺は横に顔を向けた。

 

まさか声をかけてくるとは予想外だったので一瞬で決意が霧散してしまった。

 

「お父さんを助けてくれてありがとう」

 

……え?

 

「……私が何かしただろうか?」

 

俺っていきなりキナイを呼び出したり魔物討伐に連れていったりしたからむしろこき使ってる記憶しかないが?

 

……もしやこの年で嫌味なのか!? ナトラ……恐ろしい子!!

 

「お父さん,前までよく悲しそうな顔をしてたの。それに夜になったらいつも怖い顔してお外で絵を描いてた。私はそんなお父さんが怖くて……ずっと心配だったの」

 

外で絵か……あ~,多分ロミアの絵を描いていたんだろうな。後に孫に見られる羞恥プレイを受けることにもなるアレだ。……面白そうだから娘にバレてることはキナイには敢えて教えないでおこう。

 

「でもね,最近のお父さんはなんだか楽しそうなんだ!それに前よりもたくさんお話してくれるの! 王子様の話もたくさんしてたよ!」

 

一体何を話したのかは気になるが……怖いから聞かないでおこう。

 

「これって王子様のお陰だよね! だからお礼を言いたかったんだけど,いつも忙しそうだったから……。」

 

そこまで言うなら俺のお陰なんでしょう!(便乗) あと忙しいのは許してね!!

 

「そうか……ならどういたしまして,だな」

 

そう言って頭を撫でてやる。俺が捻くれていただけで,やっぱりこの娘はいい子だったんだよ!

 

「エヘヘ!」

 

よしよし,どうやら俺の化けの皮を剥ごうとしていたわけではないことは分かった! そう考えると気持ちが楽になったぞ!

 

「村での暮らしはどうだ?」

 

「えっとね,隣に住んでるおばさんはとっても料理が上手で時々教えてもらってるんだ! あとはー,近くに住んでる子供たちは皆元気な子ばかりだよ! それにちょっとだけ意地悪する男の子もいてね……でもおばさんに怒られたら謝ってくれるの。それとね――」

 

俺はそんな彼女の話にも耳を傾けながら,釣りにも集中するのだった。

 

 

 

 

ま,まずい……非常に困ったでござる。なぜならあれからしばらく経ったが,未だに俺の釣果が0なのだ。

 

ナトラはそこそこのサイズをいくらか釣っているので本人はある程度満足しているようだが,それを見ていた自分としては内心の焦りを隠すので精一杯だった。

 

彼女が釣れているのに俺だけ釣れないのはなぜか……やっぱり仕掛けの調整をしくじったとしか思えない~……。

 

も,餅つけ。まだ試合は終わっていないのだ,俺は騎士の国の王子…『どんな逆境にあっても正々堂々と立ち向かう』のだ!!(内なる騎士道精神)

 

俺が自分にそう言い聞かせていると,ナトラが声を掛けてくる。

 

「大きいの釣れないね~」

 

――グサッ!

 

ぐふっ!やめるんだナトラ……!それ以上は(俺の心が)死んでしまう!!

 

なんとか致命傷で済ませたが,このままでは色々と危うい。頼む…なんでもいいからかかってくれ!!

 

――ピクッ

 

!!

 

――ピーン!

 

きたあああああ!!!!!

 

俺は立ち上がって力いっぱい竿を引っ張り上げた。

 

さぁ来い! 俺の大物よーー!!!

 

そうして釣り上げた竿の先にかかっていたのは――

 

 

「カチカチカチ!!!」

 

 

それはカニのような姿をした……通常の何倍もあるでっかい"ガニラス"だった。

 

 

ギャアアアアア!!!!! なにこれえええ!!!

 

「きゃあああああ!!!」

 

一瞬の内にその場にいる全員(俺は内心)が大きな音を出す阿鼻叫喚の空間になったわけだが,魔物はそのまま襲い掛かってきた。

 

それを見てようやく俺のフリーズも解けた。今の俺は帯剣していないが,このぐらいの魔物であれば武器などいらん!!

 

「ふんっ!!」

 

俺は自分の脚に力を集めて魔物を蹴り飛ばした。

 

「ギャッ!!」

 

魔物は上に大きく吹き飛び,そのまま真下に落ちた。

 

はぁ,はぁ,いきなりすぎて寿命が縮むかと思った……。

 

「大丈夫か?」

 

「は,はい……」

 

俺は腰を抜かしたナトラを立たせてやる。

 

ただ,俺の戦闘によって瞬時に研ぎ澄まされた感覚は,もう一匹の魔物の気配を捉えていた。

 

「出てこい。岩の裏にいるのはわかっている」

 

そう言って睨みつけると,岩の裏から小さい何かが慌てて飛び出してきた。

 

「プッチ~! プチ!!」

 

こいつはプチアーノンか? この辺りにいるのは珍しいな……。しかも近づいてくるのに敵意を感じないだと?

 

俺は内心で警戒していると,俺の目の前まで来たそいつが何かを訴えてきた。

 

「プチ! プチチ! プッチィ!!」

 

……だめだ,さっぱりわからん。

 

だがコミュニケーションを取ろうとする意志があるのは感じられた。トウジンにでも聞けばわかるだろうか?

 

「プチ!!」

 

するとそいつは更に前足で"白い貝がら"を渡してきた。

 

あらどうも。ほう,この貝からは少し魔法的なサムシングを感じるな。まぁくれるのならもらっておくとしようか。

 

俺がそう思っていると,浜への入り口の方から人がやってくる気配がした。

 

「どうした!? 大丈夫か!!」

 

どうやら村人のようだ。さっきのナトラの悲鳴を聞いて駆け付けたのだろう。

 

他の人間が来たことを理解したプチアーノンはそそくさと先ほどの岩陰に再び隠れた。

 

「王子!? 悲鳴が聞こえたのですが何があったんですか!!」

 

「ああ,既に解決した。釣りをしていたらこいつが釣れてな……」

 

そう言って,ひっくり返った魔物を見る。

 

「こ,こいつはでけぇ! 今のところ一番の大きさですよ!!」

 

え!? こいつって1匹扱いなの!?

 

「他の奴らにも知らせてやらねぇと!! それでは失礼します!!」

 

そう言って彼は戻っていった。

 

……俺はもう一度ガニラスの死体を見る。

 

……思いがけずといった感じだったが,優勝の目が出てきたな!

 

「プッチ!」

 

鳴き声を聞いて足元を見ると,先ほどのプチアーノンがいつの間にか俺の足にしがみついていた。しかも心なしか目が輝いているように見える。

 

うーん,ひょっとして懐かれてしまったのか?だが父上に飼うことを許して頂けるだろうか……。

 

 

――ドーンッ!!

 

 

そんなことを考えている間に,大会終了を知らせる大砲の合図が聞こえた。

 

……まぁまずは戻るか。

 

「よし,では戻ろうか」

 

「はーい!」

 

「プーッチ!」

 

はい良い返事!!

 

 

 

 

結局その大会は俺の優勝で幕を閉じた。夜は俺の釣った魔物も含めて皆が釣ったものを使った宴が開かれ,俺も見た目に合わないガニラスの上品な味に舌鼓を打った。

 

付いてきたプチアーノンに関してはトウジン感覚でも多分大丈夫とのことなので,しばらくは様子を見ることにして,オセノンという名前を授けた。

 

オセノンも喜んでいたので良かった良かった!

 

釣りの内容的に少し不完全燃焼な気もするが,いつかリベンジすること誓いながら俺は目の前の料理に齧り付いたのだった。

 

 

 

~とあるプチアーノン視点~

 

ここはどこなんだろう……?

 

僕はプチアーノン。実は迷子になっているんだ。

 

いつもみたいに皆と砂浜でお絵描きをしていたら,遠くに大きな船が見えてね,僕はそのカッコイイ船にくっついて一緒に海を泳ぐことにしたんだ!

 

でも気づいた時には知らない場所にいて,仲間もどこにもいなかった。

 

あの船もいつの間にかどこかにいっちゃってどうしようかと思っていたんだけれど,僕がしばらく海を泳いでいたら,運よく砂浜を見つけることが出来たんだ!

 

でもそこは僕の住んでいたところよりも小さくて,近くには怖い魔物がたくさん住んでいる場所だったみたい……。

 

でもね! そこで僕と同じように群れからはぐれてしまった"だいおうキッズ"っていう僕と似ている魔物の友達ができたんだよ!

 

彼は僕よりも前からここにいたから,たくさんのことを教えてもらえた! けれど――

 

ある日,彼は襲われた僕を庇ってここにいた怖い魔物に食べられてしまったんだ…。

 

その魔物は"ガニラス"って呼ばれているらしくて,この近くにいる魔物の中でもとっても強いらしい。

 

僕が前に住んでいたところにも"ぐんたいガニ"っていうとっても怖い魔物がいたんだけど,あの魔物はそれよりももっと強い気がする。

 

僕はとっても悲しかったけれど,怖い魔物に見つからないように浅いところで小さい魚を捕まえて暮らすことにした。

 

でもある時,魚を追いかけて少し深いところまで行ってしまったんだ。

 

しかもそこでガニラスに見つかってしまった!

 

僕は必死に逃げたけれど,すぐに追いつかれてしまった……僕が弱かったせいで僕も食べられてしまうのかな……せっかく助けてくれたのに……ゴメンね……。

 

僕はそのまま食べられると思ったんだけど,ガニラスは動きを止めて,違う方向に走り出した。

 

僕はそのうちに砂浜に逃げることができて助かったんだけど,今日はそこに人間がいたんだ。

 

前に住んでいたところでは,人間は魔物をたくさん倒していたから怖いなぁ。

 

僕が岩に隠れていると,人間がなんとさっきのガニラスを釣り上げたんだ!

 

あのガニラスはとっても強い! 食べられちゃう!と思っていたんだけど,人間はガニラスを一撃で倒してしまった!

 

僕は驚いていたけれど,すぐに僕も見つかってしまった……けど僕はなぜかあの人が怖くなかった。むしろさっきの強さに憧れてしまっていたみたい!

 

僕は宝物の'白い貝がら'を渡して,弟子にしてほしいと頼んだんだ!

 

あの人は少し悩んでいたけれど,付いてきていいって言ってくれた!

 

しかもその後に僕に"オセノン"っていうカッコイイ名前までくれたんだ!

 

僕は僕の……そして僕を守ってくれただいおうキッズ君のためにも強くなる!!

 

僕はオセノン! 最強の師匠の弟子なんだ!!

 

「いくぞオセノン」

 

あっ! 待ってよ師匠~~!!

 

僕は急いでその背中を追いかけた。




これは何の回なんだろう? ……まぁいいや!

オセノン視点は史上最高に書きにくかったです。マスコットぽさが出てれば良いのですが……。

それではまた!('ω')ノシ
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