我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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21話です! どうぞ!


21話 さあ海の底へ

~~内海~~

 

皆さんどうも! 船内でトウジンとオセロを楽しむハムザ君です!

 

よーーし! また勝った! これで3連勝!!

 

「ぐぅぅ! 私の最強の作戦が!!」

 

「ふっ,まだまだ詰めが甘かったようだな」

 

実はこの世界にも元々オセロという物はあったのだが,チェスなどと比べてあまり人気ではなかった。ただ,例のごとく俺が城内で騎士たちと暇つぶしにやるようになってからサマディーで流行り始めているのだ。

 

それにしてもトウジンはオセロが弱い! 普通に接待プレイを疑うレベルだ。

 

彼は決して頭は悪くない。むしろ戦士を束ねる人物で,頭は回る方だというのはしばらく共に過ごしていたから分かる。

 

だが弱い! そのギャップが面白いのだ。しかも真剣にやっているだろうことがリアクションから伝わってくるので猶更面白い。

 

……それにしてもトウジンさんテンション高くね? 久しぶりに帰れるからかな?

 

「プッチ~……」

 

「さぁどうするオセノン」

 

ちなみに俺たちの横ではDさんとオセノンが対局しており,オセノンは窮地に立たされているようだ。

 

それはさておき,現在俺たちはソルッチャ運河を抜けて内海に入ったところだ。

 

あの運河は基本的に内から外に出るより外から内に入る方が面倒なのだが,そこは事前の準備で何とやらよ。

 

この船はサマディー王家の紋章の入った旗を掲げていたので,この場で特に何かアクションを起こす必要すらなく水門を開けてもらえた。

 

旗だけで通すのは不用心だと思うかもしれないが,国の旗を違法に掲げることはその国のメンツを潰すことになる。そんなことをすれば一生国から狙われることになるのでかなりの覚悟が必要だ。

 

それに長い間国同士の戦争も起こっておらず国家間の仲は良好なので,よほどのことがない限りどこかの国が庇うことも考えにくいからね。

 

あ!あとそういえばソルッチャ運河を管理しているソルティコの町は勇者パーティの一員である"シルビア"の故郷だったか。

 

彼は本名を"ゴリアテ"といい,その父親はこの時点でもソルティコの領主をやっているジエーゴ殿だから,生まれれば流石になにかしらの情報が入ってくるはずだ。ということはまだ生まれていないのだろう。

 

彼って年齢いくつなんだろう? 同じくいずれ勇者パーティの一員となる我らのポンコツ大英雄(原作開始時36歳)と近い歳だとは思うが……わからんな~。

 

……まぁ今はいいか!

 

そんなわけで内海にいるのだが,本来ならどこか内海の港で補給でもすべきなんだろうけれど,王族の俺がいるから面倒なことになる可能性を否定できない。

 

そこで,今回はそれを嫌って物資山積みで直行ルートだ!

 

このまま光の柱まですっすめー!!

 

「私の勝ちだなオセノン!!」

 

「プチー!!」

 

おや,あちらも決着が付いたようだ。

 

「王子! もう一度!!」

 

「……ではオセノンに勝てれば受けて立とう」

 

「なるほど! ではオセノン! 勝負ですぞ!!」

 

「プチ!?」

 

……すっすめー!!!

 

 

 

さて,そんなわけであれからもしばらくの航海を続けてようやく内海の光の柱までたどり着いた。

 

「ここが……」

 

横にいたDさんが思わずと言った様子で声を漏らす。

 

目の前の海面から立ち昇る青く淡い光は,近づくことが躊躇われるような独特の雰囲気を醸し出していた。

 

ここはデルカダール,ユグノア,バンデルフォン,そして我がサマディーなどの領域に囲まれた真ん中あたりの海に位置する。

 

これと似たような光の柱は世界でも数か所あると言われるが,内海にはこの一か所のみらしい。

 

そして,ここが海底王国ムウレアに安全に入るための唯一の入り口なのだ。

 

「さて,ここまで来たが……この後はどうすれば良いのだトウジン」

 

ここまでの道中で,トウジンからここから行けるという話を聞いたが,詳しい行き方については特に語られることはなかった。

 

騎士たちの多くは言うまでもない方法なのだろうと思っていたのだろうが,実際に来てみると何をすればよいかわからずに船が止まってしまった。

 

俺は勇者たちがやったように"マーメイドハープ"でも使って潜るのだろうと思っていたが,念のために聞いてみる。

 

「お任せください。実は光の柱はただの目印に過ぎません。ここである道具を使うことによってここからムウレアまで行くことが出来るのです。此度はこれを使います」

 

そう言って彼は懐から何かを取り出して見せてきた。

 

……それは手のひらサイズの法螺貝だった。

 

……え? ハープじゃなくて?

 

「これは"海底の笛"と呼ばれるムウレアの宝でございます」

 

「……それを使わねばムウレアまでは行けんということか?」

 

気になった俺はそう尋ねる。

 

「いえ,"マーメイドハープ"と呼ばれる特殊な道具でも行くこと自体は可能です。……ただ,私はこれを王子にお渡しする役目を賜っております」

 

「私に?」

 

「我々を助けて下さったことに加えて,海神のつかいを討伐して頂いたことに対する女王からの感謝の礼でございます。また,これは身に着けると水の加護が得られる代物だとも聞いております」

 

へ~。気にしないで良いと言いたいが,国のトップとしてはあまり借りを作りたくないものな…。ではもらえる物はもらっておくとしようか!

 

そう思って受け取り,糸が通されていたのでそれを首にかけた。

 

「さぁ……どうぞ吹いてください」

 

トリトンはそう言ってこちらを見て促してくるので,周りの騎士たちもこちらを見てくる。

 

…………

 

……いや,どう吹けばいいのかわからんが。え? 適当でもいいのかな? 説明プリーズ?

 

そういう思いを込めてトウジンの顔を見るが,彼は頷くだけだった。

 

!?!?!? ……ええい! どうなっても知らんぞ!!

 

俺は内心でやけくそになりながらも法螺貝を顔の前に掲げて思いっきり吹いた。

 

 

――ブオボォーーーーー!!!     

 

――オォーー!!

 

――……!

 

 

笛の音が辺りに響き渡り,少しづつ空気に溶けていく。

 

すると,船が突然空気の膜に覆われ,海の中に沈み始めた。

 

それを見た横の2人と1匹が声を掛けてくる。

 

「流石王子! 良い音でしたな!!」

 

「ほっほっ! ですな!!」

 

「プチッ!」

 

君たちさぁ……まあいいか。このままムウレアまで行けるのだろうし,心の準備でもしておくか。

 

 

 

~~海底王国ムウレア~~

 

海に沈み続けてしばらくすると,明るい空間に出たところで船が止まった。

 

そこで俺は横にいたトウジンに尋ねる。

 

「……着いたのか?」

 

「ええ,ここが我らの国……海底王国ムウレアでございます!!」

 

「「「おお!!」」」

 

連れてきた騎士たちは皆揃って感動しているようだ。

 

まぁ無理もないか。不思議がいっぱいのドラクエ世界とはいえ,海の底に行ったことのある奴は多くないだろうしね。

 

その証拠にムウレアの存在はあまり有名ではなく,今の地上で国交のある国もおそらく皆無だ。

 

今回の訪問で,我らサマディーがその国になるきっかけとなれたら良いのだが……。

 

そう考えていると,奥から誰かが近づいてくるのがわかった。

 

「ハムザ王子様,並びにお連れの方々,はるばる海の底までよくいらっしゃいました」

 

そう言いながらやってきたのは人魚の兵士のようだ。

 

……ごふぁっ! 相変わらずの恰好で直視できん!! こうやって俺の判断力を鈍らせる作戦か!? もしくは俺の失言でも引き出そうというのか!? なんとも実に強かな者たちだ!!

 

そこで,俺は目を細める作戦を実行することにした!

 

ふっふっふ……こうやって視界を不明瞭にすることで乗り切らせてもらう!……べ,別に見えにくくて残念だなんて思ってないんだからね!!

 

人魚たちと話す時はこのモードにしておけば一先ず安心だろう。

 

「トウジン様もご無事で何よりです。女王様は心配しておられましたよ」

 

「うむ……だがそのことも含めて私の口から女王様にはお話ししよう」

 

何か話しているみたいだが,俺は細目戦法の調整と心を落ち着かせるのに夢中で聞いていなかった。

 

彼女は俺の方を向いて言う。

 

「っ! ……これから皆様を女王様のおられる城まで案内させていただきます。私に付いてきてください」

 

「……よろしくお願いする。」

 

相手にも謎の間があった気がするが気のせいだろう。俺はそう答えて,皆と共に彼女に続いて歩き出した。

 

その間に俺は少し考える。……断じて雑念を振り払うためではない!!

 

まず,やはりと言うか俺たちはここでも普通に呼吸が出来た。

 

原作でのとある魚人の言葉を思い出すと,たしかこれはこの国の女王の魔法の力によるものだったはずだ。

 

……考えるほどに凄まじい力だな。今はあれから少し進んでメインストリートらしき場所まで来たことでこの国の全体像がなんとなく伺えるが,海の中で唯一の国だけあって大きい。

 

以前サマディーで感じたように,原作の描写以上の大きさだ。

 

城内にいながら,少なくともこの国の端まで力を届かせられるのか…更に言えば,海神のつかいがここを襲撃した際にも女王の力で撃退したと聞く。

 

彼女の持つ力だけでここまで出来るとは……加えて,この国は"千里の真珠"というその気になれば世界中を監視できるチートアイテムも保有しているのだ。

 

原作では何度も勇者を助けるキーパーソンだが,意外と謎が多い人物でもある。

 

……いずれにせよ,人間よりも長寿で力強いと言われる人魚たちを束ねるに相応しい力を持っていることは明らかだろう。

 

俺も気を引き締め直さなければ……!

 

そう決意を新たにしつつ辺りを見渡す。

 

そういえば,完全なるサマディーの領域外の場所に来るのは初めてだな。

 

しかもそれがまさか人間にとっても馴染みのないムウレアになるとは思ってもいなかった。

 

 

「あの先頭にいる人が噂の王子様だろうか?」

 

「強そうな恰好してるからそうじゃないかな?」

 

「魔物も連れているようだぞ」

 

「でも可愛いわよ?」

 

「こっち向いてくれないかな?」

 

 

この国の住人も俺たちのことが気になるのか,通りを歩く俺たちに対して好奇の視線を向けてくる者が多い。

 

何を言っているのかは聞こえないが,色々話もしているようだ。

 

俺が彼らに向かって手を振ると,少し驚いたようだが静かに振り返してくれた。

 

国民からの印象っていうものは馬鹿にできないからね。人間は彼らの多くにとって珍しい存在かもしれないが,少しでも興味を持ってくれればお互いにとっても良いことだろう。

 

それに,今までは初めて来た場所であれば現地の者から盛大な歓迎を受けるのが当たり前のようになっていたから,この反応は新鮮でとても面白い。

 

やっぱり行ったことのない場所に行くのは面白いな~。どこかのタイミングで世界を周る旅でもしてみたいものだ。

 

もしするとなれば王子の間にやらなければ……王になれば流石に無理だろう。

 

俺は一人っ子なので王子の間でも厳しいだろうことは予想がつくが,今までも不可能をいくつか可能にしてきているのだから夢物語でもないはずだ。

 

ただその場合もしっかりと計画を練った上でやらないといけないだろうけどね!

 

「着きました……ここが我らの女王様が住まうお城です」

 

おっと,考え事をしている間に目的地に着いたようだ。

 

「城内では別の者が案内することになりますので,私はこれで……」

 

「……感謝する」

 

そう言ってここまで案内してくれた人魚と別れる。ありがとうね!!

 

そのまま城の門の前まで移動すると,そこを警護していただろう先ほどとは別の人魚の兵士が話しかけてくる。

 

「っ! 女王様より話は聞いております。どうぞお入り下さい……」

 

……さっきもそうだったけれどなんで君たち僕の顔を見ると謎の間が空くんだよ! 町の住民たちは別にそんなことなかったのに!!

 

も,もしや……彼女たちを見る時に邪な感情が混じっているのがバレたのか!?

 

だってそんなのしょうがないでしょうが(渾身ギャグ)!!

 

そんな恰好しておいてその言い分(言ってない)は無理があるよ! 聖人でも相手にしているつもりか!!

 

……ちくせう,謎の間は「えっ,キモ!!」みたいなことだったのか……もう帰ってもいいですかね?

 

そんな風に自分でメンタルを削りながらも表面上には出さずに彼女の言葉に従って城内に入った。

 

おお,外の建物とはまた違った趣があるな。どうやって作ったのか分からないが,形も壁の模様も独創的で美しい。

 

それにやはり原作の描写より広い。原作では玉座の間とその後ろの部屋以外は部屋らしきものが一切なく,我がサマディーを遥かに超えるシンプルさを誇っていたこの城だが,周りを見る限り,1階にも部屋なんかがあるっぽいね。

 

「女王様はこの上におられますが,ここから先はハムザ王子のみでお願いします」

 

まぁ無理言って女王に合わせてもらうんだから妥当かな?それに俺たち人間が上に行くには彼女たちに連れて行ってもらわなければならなかった気がするしね。

 

「……承知した。聞こえたな?お前たちはここで待っていてくれ」

 

「「「はっ!/プッチ!」」」

 

はい良い返事!!

 

「その間のまとめ役は任せる」

 

Dさんにはそう言っておく。

 

「はっ! お任せください!」

 

すると彼らは他の人魚の兵士の案内で,入り口近くの一室に連れていかれた。

 

よし,では行こうか!

 

「待たせてしまい申し訳ない」

 

「……いえ,では参りましょう。少し目を瞑っていて下さい」

 

俺は言われたとおりに目を瞑ると,直後に体に少し水の圧を受けたような感覚を覚えた。

 

「着きました。目を開けて下さい」

 

そう言われたので目を開けると,目の前には今まで見た人魚たちの中でも一際美しい女性が玉座に座って待っていた。

 

そしてその彼女が俺に向かって話しかけてきた。

 

「初めまして,砂漠の国サマディーの王子ハムザ殿。わたくしはこの国の女王である"セレン"と申します」

 

……兎にも角にもこれだけは言わせてほしい。

 

 

俺の目のやり場を返してくれえええええ!!!!!

 

 

 




やめて! 主人公のメンタルはもうボロボロよ! ……なおこの後更にボロボロになる模様……。

Q.海底の笛ってなんぞ?

A.マーメイドハープと同じで海に潜れれるようになる上に,ムウレアに伝わるなんかすごいアイテムなんですよきっと! 水の加護が云々の話はまたそのうちに……。

それではまた!('ω')ノシ
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