我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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主人公はなんだかんだで初の他国との外交ですね! 果たしてどうなるやら……。

そんな22話です! どうぞ!


22話 海底の女王

~セレン視点~

 

「初めまして,砂漠の国サマディーの王子ハムザ殿。わたくしはこの国の女王であるセレンと申します」

 

そう言って私は目の前にいる人物を見る。

 

実はここしばらく時々彼の様子を"千里の真珠"を用いて見ていたのですが,実際に相対してみると予想通り……いえ,それ以上の力を秘めていることがわかります。

 

彼も時々,見られていることに気づいていた様子がありましたからね。

 

「お初にお目にかかります。今おっしゃられた通りですが,サマディー国の王子ハムザ・サマディーと申します。この度お会いする機会を頂けたことに深く感謝を」

 

その様子はこちらを立てつつも堂々としていて,既に王族としての貫禄が伺えた。

 

ただ,それにしても――

 

「ふふっ,そんなに怖い顔をしないでください。緊張しているのかもしれませんがもっと楽にしてもらって大丈夫ですよ」

 

「顔……ですか……わかりました。そのようなつもりはなかったのですが……」

 

彼はそう言って顔を触ると少し穏やかな表情になった。

 

「案内した子たちも怖がっていましたよ?」

 

「なるほど……彼女たちには申し訳ないことをしたようです……」

 

ふふふ,どうやら相応に人らしい一面もあるようですね。

 

「さて,話を戻しましょうか。手紙を読ませて頂きましたが,我が国との交流を深めたいというお話はこちらにとっても望ましいことです」

 

「ご理解頂きありがとうございます」

 

「良いのですよ。それにこちらこそあなたには感謝しなければなません。戦士団を助けて頂いたこと,海神のつかいを討伐して下さったこと,そしてロミアのことも……あなたがいなければ事態はより深刻になっていたでしょう」

 

本当にその通りです。この問題は我々ムウレアの者たちだけで解決しなければならないと思っていたところでの協力にはとても助けられました。

 

正直なところ,戦士団を送り出した際に彼らだけでは勝利が難しいことは分かっていたのです。

 

最初の魔物の襲撃は国を覆っている大結界があったからこそ無傷で撃退できましたが,実際に海の中における彼らの強さはかなりのものでした。

 

しかし国の外で襲われている力なき民たちを少しでも多く逃がすため,そしてムウレアとしてもあの魔物たちを野放しにさせないためにもそうするしかなかったのです。

 

女王として国を長い期間離れることなどできず,同胞たちが無残に殺されていく様を見ていることしかできなかったのは本当に辛かった……。

 

今も気丈に振る舞ってはいるものの,私の心は自身の不甲斐なさと散っていった者たちへの申し訳なさでいっぱいでした。

 

もう長い間女王としてこの国を治めながら様々な経験をしてきましたが,世界中の問題を嫌でも認識できてしまう中で,真の意味で誰かに頼ることのできない心細さに思った以上に疲弊していたのかもしれません…。

 

「その全てが私たちにとって無関係ではありませんでした……それゆえ動いたまでのことです」

 

彼の顔は本心からそう思っていることがわかる。しかし――

 

「それでも,ですよ。あなたに差し上げたその"海底の笛"だけでは釣りあいがとれません。なにか望みがありましたらわたくしに叶えられるものであれば配慮しましょう」

 

「望み……ですか……」

 

……これは賭けでもあります。国のトップが放つ言葉の重みはわかっているつもりですが,彼からこの国が受けた恩はそれほどのものです。

 

彼は少し考えた後,ゆっくりと話し始めた。

 

「でしたら失礼を承知で申し上げますが……今より少しばかりご自分を大切になさってくださいますようお願い申し上げます」

 

「……え?」

 

私は思わず呆けたような声を出してしまう。

 

「これは王子ではなく一人の騎士としての願いですが…初めてお会いした私ですら,女王様のご様子から調子が芳しくないことが伺えます」

 

!! 私はそれほどまでに弱っていたのでしょうか……。

 

「この海に住まう全ての海の民の未来を背負うその重圧…この若輩者が理解できるほど生半可なものではないのでしょう。しかし,私も日々民の為に戦う身…何かお困りであれば微力ながらお力添えいたしましょう」

 

……その言葉に少しだけ心が動かされた気がした。ですが――

 

「……一国の王子がそのような滅多なことを言うべきではありませんよ?」

 

「ふふ,それはお互い様というものではないでしょうか。それに,私たちはこれより交流を深めていこうとする仲間なのですから,助け合うことは至極当然のことです」

 

!! ……はぁ,どうやら彼は人間ながらに力だけではなく心もお強いようです。

 

「なるほど,確かにあなたの言う通りかもしれません。では,何か困ったことがあれば頼らせてもらいましょうか」

 

「聞き入れて頂きありがとうございます」

 

もう,真面目なのですね。それなら――

 

「では早速ですが,休憩も兼ねてあなたの冒険譚でも聞かせてもらいましょうか!」

 

「え!? ……き,急にそう申されましても……」

 

ふふふ,そのような顔もできるのですね。

 

「あら,困った時には力添えを願えるのでしょう? わたくしは今,非常に困っているのですよ」

 

自分でも無理を言っている自覚はあるが,彼であれば受け入れてくれる気がした。

 

「むぅ……それでは冒険譚……とは言えないかもしれませんが,以前の話を少しだけさせて頂きます。あれは去年,父上の目を盗んで部下の一人と港町まで繰り出した時のことでした――」

 

 

「……まぁ,そんなことが!」

 

「ええ,ですが実はそれは――」

 

 

「……でもそれだと――」

 

「そう思われるかもしれませんが,なんと私はそこで更に――」

 

 

彼は意外にも語りが上手で身振り手振りも併せて臨場感のある話をしてくれ,その様子はどこか慣れているようでもありました。

 

ああ,こんなに楽しい気分になるのは久しぶりです。私はこの時間を少しでも長く楽しむために,話の最中だというのに何度も彼に話しかけるのでした。

 

 

 

~主人公視点~

 

皆さんどうも! ムウレアの女王セレン様とお話したハムザ君です!

 

……先に一つだけ言っておこう。

 

 

後半はいまいち話が頭に入ってこなかったと……!

 

 

いや少し待ってほしい,これにはちゃんと理由があるんだ。

 

今更細かくは言わないが,この状況で顔が怖いとか言われて無理やりに細目戦法を封じられた俺には仕方のないことなんだ!!

 

何より彼女は今までの人魚たちと比べても圧倒的な戦闘力()だ! 悔しいが今の俺では太刀打ちできん!!

 

むしろなんとか会話を成立させられたことを褒めて欲しいくらいだよ! ほぼ脊髄反射で会話していたからマズイことを口走っていないかだけが心配だ……。

 

ただ,ここまで会った人魚たちにキモイと思われていたわけじゃなさそうだとがわかったのは朗報だった……主に俺の精神的に。

 

……だが怖がらせていたようなので,後で謝りに行っておこう。

 

それと,父上以外で国のトップと話をするのは初めてだから距離感が微妙にわからん。

 

特に楽にしてくれっていう言葉の意味が難しすぎる!!

 

まぁ女王が我が国との交流に前向きそうだったのは幸いだ。細かい部分は後々詰めていくことになるだろうが,今回の主目的だったからね。

 

それにしても女王の顔色を見る限り,かなり調子が悪そうだった。

 

スルーする(渾身洒落)こともできたが,騎士道的に困っている人を助けるのは大事なので,内政干渉とか面倒なことにならない範囲であれば力になるで!的なことは伝えられたはずだ。

 

やっぱり王って大変なんだろうな……帰ったら久しぶりに父上に料理でも作ってあげよう。

 

話がひと段落ついたところで俺がそう決心していると,女王が待機していた兵士と話していた。

 

「あなたはトウジンをここへ!」

 

「はいっ!」

 

そう言って兵士は離れていく。あのー,俺はどうすれば……?

 

そういう思いを込めて女王を見ると,彼女は笑いかけてくる。

 

「ではもう少しお力添え願えますか?」

 

あ……はい。

 

 

トウジンはそれからすぐにやってきた。

 

「……女王様,このトウジンただいま帰還いたしました」

 

「よくぞ無事に帰ってきたくれました。難しい任務でしたがよく務めてくれましたね」

 

実際トウジンは今回のMVPクラスの働きだと思う。そもそも彼がいなければ情報不足で俺たちは死んでいた可能性すらあるだろう。

 

だがトウジンは沈んだ顔をして答えた。

 

「いえ……私は仲間たちを何人も失い,更に任務にしてもハムザ王子たちの力あってのもの……私は何もしておりません……どうか罰をお与えください!!」

 

えー! トウジンさんそんなにネガティブ思考だったの!? なんだかここに来るときにどんどんテンション上がってたから故郷に帰れるのが嬉しいのかと思ってたけど,もしかして空元気的なアレだったんかい!!

 

俺は女王の方を見るが,彼女は一瞬だけこっちを見た後,トウジンに向き直って言った。

 

「……わかりました。では……この場において,あなたに課していた私の親衛隊長としての任を解きます」

 

わお! 今回の件で戦士の人手不足が予想される中で即座にその判断,これが王か……でもトウジンはそうでもしないと納得しなさそうだしね。

 

いつかのDさんの時みたいに適当なこと言って勢いでごまかせそうな雰囲気ではない。

 

「……承知致しました」

 

「そこでですが――」

 

「?」

 

ですが……?

 

「あなたには文官になることを命じます」

 

「なんと!!」

 

うーん! これにはトウジンもびっくり!!

 

「これからは地上の国であるサマディーとの交流も増えていくことでしょう。そこで彼らとも関わりのあるあなたにはそのための仕事も担ってもらいます。これはあなたにしかできないことです」

 

そこで女王はもう一度こちらを見た。何だろう?

 

「ハムザ王子……サマディーとしての考えはどうですか?」

 

ああ,なるほどね。

 

「彼であれば我々としても非常に安心できますな」

 

「……ということです……もちろん引き受けてくれますね?」

 

そこで俺ももう一度トウジンを見る。彼は俯いており,どんな表情をしているのかは伺い知れない。

 

「女王様……王子……。ぐっ……このトウジン! 誠心誠意務めさせて頂きます……!」

 

そう言って彼は決意を秘めた表情で顔を上げた。

 

「それは良かった」

 

女王も満足そうにしている。

 

うんうん! これで今回も一件落着かな!!

 

「そうだわ,ところでハムザ王子」

 

……ん? まだ何かおありで?

 

「……どうされましたか?」

 

「お昼がまだでしたらこれからお連れの方たちも一緒に今からこの城で食べませんか?」

 

おお! そういえば昼食はまだだった気がする。ナギムナー村でも思ったのだが,遠出の醍醐味はやはり食事にあると思うのだ!!

 

これは是非ともお願いするしかない!

 

「勿論にございます!」

 

これには思わず俺の声のテンションも上がるというもの!

 

「それは良かった! 城の料理人に用意をさせているのでお連れの方たちを迎えに行きましょうか。」

 

料理の用意っていつの間に!?

 

という冗談はさておき,おそらくこれも女王の魔法的なサムシングによるものなのだろう。

 

……でもそれができると考えると,トウジンを呼ぶ時にもわざわざ兵士を呼び寄せてから連れてくる必要はなかったと思うのだが…まぁ憶測で色々考えても仕方あるまいて。

 

よし! じゃあここから降りるとしましょうかね!

 

「それでは私は先に……とうっ!!」

 

「「!?」」

 

俺はここの床の端まで移動し,そこから飛び降りた。

 

うおおおおお! 高いでござるううう!!

 

この場所に来てからずっとこうしてみたいと思っていたのだ。多くは語らないが,色々な意味でフラストレーションが溜まっていたのかもしれない。

 

水のお陰で地上で落下する際と比べるとだいぶゆっくりな速度なので,それがまた気持ちがいい。

 

……っととと,そのスリルを味わっていると一階に着いたようだ。

 

さーて……我が部下たちはいい子にしているでしょうか! ただいま皆のハムザ君が帰ってきたよ!!

 

そう思いながら,彼らがいるだろう部屋の扉を開けた。するとそこでは――

 

 

「それでは海底腕相撲大会の第5回戦! 現在2連勝中のムウレア代表であるマナ選手に挑戦するのは~~! サマディーの新米イカ! オセノンだぁぁ!!」

 

「プッチー!!」

 

「いけー! オセノン!!」

 

「修行の成果を見せる時だ!」

 

「マナー! 負けないでよね!」

 

「このまま全勝だ!!」

 

 

……What's!? なにこの状況! というか俺を差し置いてえらく楽しそうにしているねキミタチ…。

 

俺がその場で数秒間思考停止させていると,背後から声がかけられた。

 

「はぁ……あなたは本当に不思議な人ですね」

 

「ほっほっ! それも王子の魅力ですぞ!」

 

どうやら女王とトウジンも追いついてきたようだ。

 

………………ん?

 

……へあっ!? もしかして俺さっきかなり非常識なことしなかったか!? というかしたな!

 

なーにが『それでは私は先に…とうっ!!』だ!! あの状況であそこから一人で飛び降りて先行するなんてあたおかじゃないのか俺は!? 失礼どころの話じゃない!!

 

あばばばば違うんですこれは! これは! そろそろ限界だったんです! 礼儀と男のサガの板挟みの間でひっそりと苦しんでいたんですうう!! それで冷静な判断がががが。

 

……と思いつつもそれを言えるわけがねぇぇ!!

 

ふっ,詰み……か。俺の人生も悪くなかったな……。

 

俺が一瞬の内に心の中でそんな一人漫才を繰り広げていると,室内で歓声が上がった。

 

 

「なんとなんと! 誰もが予想だにしなかった華麗なる逆転劇! その柔軟な腕による繊細な技術を駆使し! サマディーの新米イカのオセノンが勝利を掴みとりましたぁぁ!!」

 

「プッチィ!」

 

「くっ……! この私が!」

 

 

あああ! ちょっとこれ以上情報を増やさないでくれ! 供給過多で脳の処理が追い付かなくて頭の中がぐちゃぐちゃだぁ!

 

俺は未だに動けないまま限界化(ガチ)していたが,急に体が暖かい光に包まれると,少しずつ気分が落ち着いていった。

 

「こ,これは……?」

 

「ちょっとしたわたくしの魔法ですよ。リラックスできましたか?」

 

俺が視線を上げると,女王がこちらをのぞき込みながらいたずらが成功した子供のような表情でこちらを見ていた。

 

それによって再びショートしそうになる自分を不屈の精神力で抑え込み,口を開く。

 

「……お見苦しいところをお見せしました。それにとんだ無礼を……」

 

「ふふふ,良いのですよ。あなたを見ていると本当に退屈しませんね」

 

うーん。これは褒められているのだろうか?

 

「さて,あそこにいる皆の仲も深まったようですし……そろそろ声をかけましょうか」

 

お,仰せのままに!(震え声)

 

そうして俺たちはその後の食事でも皆で仲良くムウレアの珍しい料理に驚き,お互いの仲を更に深めることが出来たのだった。まる。




主人公くんにとってはこれが試練……だと!? なんだか主人公を酷使しすぎている気がする……少し休ませてあげるべきですかね?()

おそらく2章は今週で終われ……るかな?


今回アンケートなるものを初めてやってみました! 1週間ほど実施します! 結果は投稿の参考にさせていただきますので!

―追記―
アンケートの質問は「投稿日はいつがいいですか?」という趣旨のものです!作者が言葉足らずで申し訳ありません!

それではまた!('ω')ノシ

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