我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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23話です! どうぞ!


23話 落ち着く場所とは

~~ムウレア城・庭~~

 

皆さんどうも! あれから数日ほど経ち,今は絶賛訓練中のハムザ君です!

 

「ふんっ! "水流斬り" "ザバラ"!」

 

大地を駆けながら水の魔力が纏わりついた斬撃を放ってすぐに,片手に集めていた水の魔力をすれ違いざまに撃ちだす。

 

その一連の攻撃によって,標的としていた岩は完全に砕け散った。

 

それを確認した俺は,側で見ていたトウジンに問いかける。

 

「……実戦で使えるくらいには仕上がっただろうか?」

 

「問題ないでしょう。それにしても王子の呑み込みの早さは素晴らしいですな!」

 

ふっふー! 学習能力が取り柄なもんでね!!

 

俺は現在,水の魔力を扱った攻撃や呪文をトウジンと共に練習中であった。

 

どうやら,船上でトウジンから渡された海底の笛による水の加護とやらは,持ち主の水の魔力への適性を高める効果を持つらしいのだ。

 

これは訓練するしかない!ということで,それを活かしてまずは自分に馴染みのある魔法剣と,記憶にあったドラクエの水の呪文である"ザバ系"の魔法を"ザバ"とその進化系である"ザバラ"まで習得することに成功した。

 

もはや『それ,ドラクエ11に登場します?』という問題は気にしてはいけないのだ。

 

早く海神のつかいがやっていたように"メイルストロム"等のかっこいい技も撃てるようになりたいでござる。

 

「それほどでもない,そなたの教え方が上手かったのだ。改めて協力感謝する」

 

まぁとにかく,今の自分の状況を簡単に説明しようと思う。

 

あの食事会の後に女王から「ゆっくりしていってね(意訳)」と言われたこともあって,もうしばらくこの国に滞在することが決まった。

 

俺もちょっとこの国を観光したいと思っていたので丁度良かったしね。

 

それからは今のような訓練に加えて,今回の一件による死者を弔う式典に参加したり,この国の者たちと交流したり,女王の愚痴を聞きながらオセロをしながら過ごした。

 

……その中で,もちろん初日に案内してくれた人魚たちに怖がらせてしまった詫びも入れたよ!

 

それと,ムウレア側との話し合いの中で,彼らとの国家規模の交流については焦らずにゆっくりと進めていくことになった。

 

少し面倒ではあるが,当面の間はナギムナー村を互いの交流の場所とすることにして,サマディー本国とムウレアは互いに使節を送りあいながら理解を深めていく方針に落ち着いた。

 

何事も急いでやれば良いというものではないのは俺もわかっていることなので,突然のことに対する混乱を避けるためにもこういう形をとった。

 

まぁ人口や規模も村一つ分とはわけが違うので,その統制にも気を使わなきゃならないってことよ。

 

そんなこんなで色々とあったわけだが,そろそろ帰国までのタイムリミットが迫っている。

 

そもそもここは海の中にある国なので,地上とのやり取りも簡単ではない。

 

一応は,女王に頼んで地上……といってもナギムナー村に誰かを送ることで連絡がとれるようになってはいる。

 

魚人や人魚たちは全力を出せば尋常じゃないスピードで泳ぐので思ったよりは早いのだが,それでも父上や先輩に情報が届くのはかなり遅くなるのだ。

 

それに,俺がいなくても何とかなっていそうなのは俺のアイデンティティ的に少し危機感を感じるが,やはり俺の口から報告をあげにいく必要があるだろう。

 

俺がそう内心で自分に言い聞かせていると,城の中からムウレアの人魚兵士がやってきた。

 

「ハムザ王子,女王様がお呼びですので今からお越し頂けますますでしょうか?」

 

「もちろんだ。……トウジン,すまんが今日はここまでのようだ」

 

「いえ,私も楽しき時間でしたぞ。ささ,早く女王様のもとへ」

 

それを聞いてから俺は体の汚れを軽く落とし,兵士に付いていった。

 

実はほぼ毎日,隙あらば女王からの呼び出しを食らっているので慣れたものだ。

 

それにしても,しばらくここにいると人魚たちの恰好に対する耐性が付いてきたようで,今ではもう見ただけで取り乱すことなく普通に接することが出来るようになったのだ!

 

これも修行の成果だね!(?)

 

彼女に付いて城の中を移動するが,移動中に出会う城の者たちからも俺の存在が当然であるかのような反応を受ける。

 

……ここは俺の自宅だった?

 

はっ! ……危ない危ない。この世界の俺の自宅はサマディー城のみだ! それにしても城の者たちのよる謎の親しげな視線がこんな危険性を秘めているとは……俺も弛んでいるのかもしれないな。

 

「では,上までお連れ致します」

 

おっと,いつの間にやら目的地の真下まで来ていたようだ。

 

「よろしく頼む」

 

そう言って上まで連れて行ってもらう。

 

うーん……いつか人間のままでここを自力で登れるようになりたいものだ。

 

ちなみに俺が『人間のままで』と言ったのは,人間形態以外で登った経験があるからだ。

 

以前ここに呼び出された時に女王から,観光するなら移動しやすいように魚の姿になってみないかと提案されたことがあったのだ。

 

俺は原作で勇者も魚にしてもらっていたことを思い出して,興味本位でそれを承諾した。

 

その結果,俺は立派なサメさんに変身したことで,速く泳いでみたり魚と会話をする経験を得られたのだが,体が大きくて不便なことも多かったのであれ以来なっていない。

 

女王に聞いたところ,どんな魚になるかは人によるので変えることはできないらしいのでこればっかりは仕方がない。

 

「それでは私はここで失礼します」

 

そんなことを思い出している内に着いたようだ。更に,彼女はそう言い終えると一瞬で行ってしまった。お礼を言う時間すらなかったでござる…。

 

俺は気持ちを切り替えて目の前の人物に向き直る。

 

「お呼びと聞いて参りました,"セレン様"」

 

「よくきてくれましたハムザ王子。早速ですが昨日の話の続きを…と言いたいところですが,今日は大切な話があります」

 

大切な話とな? ……それにしても"今日は"って……嘘でもいいからいつも大切な話をしていると言ってくださいよ!

 

あ,ちなみにセレン様って名前で呼んだのは仕様です。

 

……という冗談は置いておき,これは女王からそうしろと言われたからだ。

 

更に最初は敬称もいらないと言われたんだが!? 仲良くするってそういうことじゃないと思うんだけどなぁ。親しき仲にも礼儀ありと言いますか!

 

俺はやめときましょうって言ったんだけど,そこですごく悲しそうな顔されちゃったら罪悪感湧いちゃうわけですよ!!

 

そこで俺の方が折れて2人の時限定という条件のもとで了承したのだ。もちろん敬称は略さない。

 

俺がそんなことを考えている間にも女王の話は進む。

 

「あなたたちもそろそろ国に帰らなければならない頃でしょう。私も寂しく思いますが,止めることはできません。そこでこれを……」

 

女王はそう言って綺麗な巻貝の貝殻を渡してきた。

 

「これは一体……?」

 

「それは離れていても互いに声を届けることが出来る道具です。さあ,受け取ってください。」

 

俺はそれを受け取るが,なんだか見覚えがあるんだよな~……あ! 確かこれは原作で勇者たちがデスエーギル退治後に女王からもらっていた奴だ!

 

これの名前は忘れたが,これを使えば助けを求めている人の場所もといまだ回収していないイベントの内容を女王が教えてくれる神アイテムだった記憶がある。

 

ただ俺の感覚から言うと……電話ですね。もっと正確にいうなら女王との直通電話かな?

 

『これはあなたに渡すのですよ。いつも身に着けておいてくださいね』

 

「!!」

 

受け取ったそれからいきなり声が聞こえてきたのでびっくりした。

 

「ふふふ。ほら,ちゃんと使えるでしょう?」

 

先ほども言ったように,現状はここから地上に情報を伝えるには非常に時間がかかる。ましてや地上からここまでは更に面倒になる。それが解消できるなら素晴らしいね。

 

また,緊急事態に備えるという意味でも女王との直接の連絡手段が手に入ったことは喜ばしいことだ!

 

「なるほど……これで両国の連絡もより円滑に行えるでしょうな」

 

「……まぁいいでしょう。ああそういえば,それは一つしかないものですから決して失くさないで下さいね?」

 

え!! てことは主人公がこれをもらえなくなったってことじゃないですか!

 

……でも今更返すとかそんな意味不明ムーブをする勇気はない。すまん勇者よ,助けを求めている人は俺も協力して探すから許してくれ。

 

それにさっきのいつも身に着けておけっていう言葉は,緊急事態に備えるという意味以外にもオンリーワンのアイテムだからって理由があったのか!

 

「……わかりました。私が大切に持っておきましょう」

 

「それでよいのですよ。ではこの話はこれで終わりにしましょうか」

 

ふぅ~。まぁ確かに大切なお話だったね!

 

……さて,この後はDさんと一緒にムウレアの下層の探検にでもいこうか。少し前から始まった『魚は背中からかじるべきか腹からかじるべきか』という白熱の議論を巻き起こした裁判の決着が,なんと遂につきそうなのだ!

 

「ところで次のお話ですが……今日あなたに本当にお話ししたかったのは,ここでは自分のことを「私」ではなく「俺」と言ってもいいのですよ?というお話です!」

 

くぁwせdrftgyふじこlp!?!?!?

 

 

 

 

それからも少し経ち,今日は遂にサマディーに向けて帰国する日になった。

 

俺たちは船の近くまで見送りに来てくれたムウレアの皆と別れの言葉を交わしていた。

 

 

「また会える時を楽しみにしておりますぞ」

 

「私もですトウジン殿!」

 

 

「良ければお土産にこのムウレア名物"涙のワイン"をどうぞ!」

 

「おお,これはかたじけない」

 

 

「はぁ……酒場で有り金を使い切ってしまった……。妻にはなんて申し開きすれば……」

 

「そんな時は正直に言うのが1番ですよ」

 

 

「今度は負けんぞ我がライバルよ……!」

 

「プッチ!」

 

 

……おい今さらっととんでもないこと言った奴が混じってなかったか!? ……まぁ気のせいということにしておいてやろう。俺では責任を負えん。

 

「ハムザ王子」

 

そう言って俺の元にも女王がやってきた。俺も居住まいを正して別れの挨拶をする。

 

「……この期間で女王様からは多くのことを教えていただきました。国元に帰還しても更に精進を続けましょう。また,両国の友好の為に力を尽くすことをお約束します」

 

「今後とも良き関係を築きましょう。それに,こちらこそ多くを学ばせてもらいました。わたくしはいつでもあなたを歓迎しますよ」

 

そうして互いに握手を交わすと,俺は皆を引き連れて船に乗り込む。

 

なんだかんだで居心地の良いところだった。また来たいものだ。

 

「皆の者! さあ! 出航だぁぁぁ!!!」

 

「「「はっ!/プチッ!」」」

 

 

「では海上までお送りしますね~」

 

……お願いしま~す。

 

 

 

~~サマディー地方~~

 

ぜぇ,はぁ……到着の日付が後ろにずれた上に空は少しオレンジ色になってしまっているが,ようやくサマディー城付近まで帰ってこれた。それにしても,ここまでの帰り道も行きに劣らない濃密なものだった。

 

ある時は内海で"ドン・カンノーリ盗賊団"とかいう奴らの船に襲われて,そこでとんでもないものを手に入れたり……。

 

またある時は外海で嵐に襲われて南西の孤島にたどり着き,ついでとばかりにそこを新たに開発する計画を思いついたり……。

 

さらにまたある時は――

 

……まぁとにかく,旅というものは俺が思っていた何倍も恐ろしい行為だったのかもしれないと感じたよ……。

 

……その苦労に見合った成果もあったんだけどね。

 

「王子……」

 

すると横で疲れを隠せない様子のDさんが話しかけてきた。

 

「それにしてもオセノンのことは……残念でしたな」

 

「……そうだな」

 

……実は,ここまでの旅でようやく我らのマスコットとして板についてきたオセノンだが――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……砂漠の暑さにまだ耐えられそうになかったので,しばらく青騎士団で教育を任せることになったのだ。

 

つまり――

 

オセノンはオレがおいてきた。修行はしたがハッキリいってこの暑さにはまだついていけない……。

 

……ということだ。

 

ナギムナー村では平気そうだったから問題ないと思っていたのだが,俺たちは自分たちの故郷の暑さを舐めていたらしい。

 

まぁオセノンならすぐにでも克服してくれることだろう。気にし過ぎるのも良くない!

 

そんなこんなでサマディーの城門を潜ったのだが,そこではこの時間帯にも関わらずやはりというべきか国民が集まって歓声をあげていた。

 

 

「うおおおお! 王子万歳!!」

 

「おかえりなさい王子ー!!」

 

「王子ならどんな魔物も余裕だぜー!!」

 

「やっぱりサマディーには王子がいないと!」

 

「またおはなしきかせてねー!」

 

「こっち向いてー! ハムザ王子ー!」

 

 

あ~帰ってきた実感が凄い。これを聞かないと大きな任務は終われないよ~。

 

……これってやばい病気の兆候だったりしないよね?

 

その歓声を浴びて進みながら城に入り,そのまま玉座の間まで向かう。

 

するとそこでは父上と母上が座って待っていた。

 

「父上,母上,直接の報告が遅くなってしまい申し訳ありません。このハムザ,承った任務を果たして参りました」

 

「うむ,今回の概要は聞いておる。予想外のことも重なった危険な任務であったがよくぞ無事に帰ってきてくれた。そなたも疲れているであろうから詳しい報告は明日で良いぞ。それにしても流石は我が息子だ! やはりそなたに任せて正解だったようだな! はっはっは!!」

 

「私もあなたが無事に帰ってきてくれただけで十分ですよ。さぁ,早く着替えてきなさい。そうね,あなたが帰ってきた記念に今日は私がご飯を作ろうかしら」

 

!! それを聞いて俺も父上も戦慄する。は,母上に包丁は持たせちゃいけない! 死人が出るぞ!?

 

「じ,実は今回の任務で王という立場について考える機会がありまして……改めて父上に感謝を伝えるべく新しい料理の内容を考えていたのです! ここは是非私にお任せください!!」

 

「お,おお! それは嬉しいのう! ハムザがここまで言うのだ,その思いを尊重してやろうではないか!!」

 

援護はありがたいが,疲れているだろうと言った直後なのに容赦ないですね父上!?

 

「あら,本当にいいの?なら私も楽しみにさせてもらおうかしら!」

 

「はい!!」

 

そう答えて玉座の間を後にする。

 

ふい~,なんだかここに来て一気に疲れが噴き出してきたな。だが料理を作るのは最優先事項だ…誰かに手伝ってもらえないものか……。

 

「王子……この短い間で以前よりも随分とたくましくなられましたな」

 

!!! そ,その声は!!

 

「必要であればその料理,私にもお手伝いさせていただけませんか」

 

せんぱあああああい!!! 久しぶりいいい!!!

 

「……良いのか? お前も忙しいのではないか?」

 

「ふふ,王子のお陰で仕事はできる人間であると自負しております。問題ありません」

 

お,おう。それはなんだか俺にも思うところがある話だが,まぁ今は置いておこう。

 

「ふっ,それならば安心だな。では付いてきてくれ」

 

「はっ!」

 

そうして俺は帰ってきたことを改めて実感しつつ,先輩と話しながら共に城の廊下を歩き始めたのだった。

 

 

……ちなみに料理は大好評でした!まる!!




これにて第2章……完!
ヤチホコ先生の次回作にご期待ください!……とはなりませんが(笑)

実はまた活動報告を書きまして,そちらで3章のお知らせもしていますので良ければどうぞ!

それではまた!('ω')ノシ

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