我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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お・ま・た・せ・し・ま・し・た!

これより更新を再開します!
というわけで始まりの25話です! どうぞ!


3章 ダーハラ編
25話 世界の動き


~~サマディー城~~

 

――ガツガツムシャムシャ! ガツガツムシャムシャ!

 

――ゴクンッ!!

 

ぷは~! 皆さんどうも! 訓練終わりに爆食いするハムザ君です!

 

あれからまた時が経ち,俺も14歳になりました! 実はもう父上より体格が立派になってしまったのだが,体だけでなく心も成長しているといいな~。

 

……ちなみに太ったって意味じゃないからね! 引き締まった筋肉を維持しているから!!

 

まぁそれはいいとして……それにしても最近は城のご飯が前よりも美味しい!

 

その理由としては,やはりこの国の発展が関係しているのだろう。

 

農業面では以前から行っていた品種改良やダーハラ湿原への入植による食糧増産のための政策の成果が出てきたことによって収穫量が増えており,漁業に関しても領内の港同士で交流が活発になったことで腕のいい漁師が育ってきたこともあって安定している。

 

更には交易も順調なため,このサマディーには今まで以上に多くの人や物が集まるようになったことで,この国にいながら世界中の様々なものが手に入るようになった。

 

それらによって,以前より安く大量に味の良い食材を仕入れることができるようになったのだと思う。

 

ついでに言うならば,俺も時々厨房で料理をしたり料理人たちと新メニューの開発なども行っているので,彼らの腕が上がったりメニューが豊富になったりしていることも関係しているかもしれないね!

 

「……ごちそうさまでした」

 

色々と考えているうちに俺はデザートのブラウニー(魔物じゃないよ!)まで食べ終えた。

 

ふ~,もうお腹いっぱいだ。

 

今日はもうこれ以上の仕事はないので,この後は久しぶりにこっそりと城下に繰り出そうかと思っている。

 

……そうでもしないと目立つから,城下の民にもみくちゃにされてしまう。

 

そこで物見游山するついでにここしばらくの出来事を話そうかな。

 

俺は静かに食堂を後にすると,人目に付かないよう気を付けながら一度物陰に隠れて呪文を唱えた。

 

「"ステルス"」

 

すると俺の体がだんだん透明になり,体から自然に発する類の音も消え,最後は完全に気配が消えた。

 

この"ステルス"という呪文は【DQMJシリーズ】で登場する気配を消す呪文であり,以前に盗賊団から手に入れた"気配を消す魔法の杖"(破損)を研究所で解析した際に得た情報から俺が会得した呪文の1つだ。

 

ちなみにその流れで会得したもう1つの"レムオル"という姿だけを消す呪文は黒騎士団にも使えるようになった者がいるが,完全に気配を消すこの"ステルス"は今のところ俺しか使えない。

 

この呪文はとんでもなく燃費が悪いため長時間は使えない点や効果が出るまでに時間がかかる問題点があり,使いどころが非常に限られるものでもあるからね。

 

俺も今はもっぱらこういう時にしか使っていないのが実状だ。

 

そのままなんなく城を抜け出し,階段の陰で呪文を解除した。

 

よし,このまま移動するか。ちなみにステルスの待ち時間中に着替えた今の恰好は少し上等だがサマディーでは一般的な服装で,深めの帽子をかぶっているので怪しまれる可能性は低い……はずだ。

 

……実は以前に一度だけ見つかったことがあるので油断はしないでおこう。

 

俺はさりげなく人ごみに紛れながら移動する。

 

さて,その間にこれまでの出来事について話そうか。

 

まずは原作に関係しそうな部分からいこう。

 

諸君は以前サーカスをやっていた"ローズ"という女性を覚えているだろうか?

 

……実は俺は危うく忘れそうになっていたのだが,彼女はあれから自分のサーカス団を結成し、世界中で魔物に襲われる人々を助けながら知名度を上げ、このサマディーで芸を披露できる規模にまで成長させたようだ。

 

数年の期間でその成果だ。どうやら彼女は天才の類だったらしい……。

 

サマディーでのショーの際に久しぶりに出会ったのだが,なんと彼女のサーカス団にシルビアという芸名の女性がいたのだ。

 

俺は気になってローズに彼女のことを聞いてみたのだが,彼女はバンデルフォン王国出身の"ガーベラ"という名前の芸人で,どうやらソルティコの領主であるジエーゴ殿から求婚されており,その公演を最後に退団して嫁ぐことにしたらしいと知った。

 

そして実際にその後結婚したようで,今はお腹に子供を宿しているという噂もある。

 

おそらくその子供が後の勇者パーティの一員である旅芸人シルビアだろう。

 

するとひょっとすれば我らが愛すべきポンコツ大英雄は既に生まれている可能性もあるのか?

 

……そうなるとそろそろ本格的に世界情勢が動き始める可能性がある。

 

原作開始時点でのシルビアの正確な年齢は明らかにされてはいないが,原作通りならば最大限甘めに見積もって少なくとも6年の間にはバンデルフォン王国を魔物が襲撃すると思って良いはずだ。

 

……正直な話をすると,あの国の滅亡を防ぐことは非常に難しいと言わざるを得ない。

 

そもそも正確な時期がわからないことに加えて,他国の王子だからこそできることは意外と少ない。

 

それに,現状でもあの国は総合的に見ればサマディーより強い可能性が高いのだ。

 

俺に出来ることは,実際に襲撃が起きた際にいち早く援軍として向かい,少しでも多くの国民を救うことくらいだろう。

 

いずれにせよ覚悟はしておこう。……おお,美味しそうな果物が!

 

「店主,そのサンドフルーツを一つもらおうか(低音)」

 

「はい旦那! まいどあり!」

 

声でバレる可能性も考慮しないとね! モグモグ……うむ,旨いな。

 

では次に俺の周りのことを話そう。

 

あれから現在までの間で一番大きな出来事は,やはり海底王国ムウレアとの間で正式に国交が開かれたことだろう。

 

現在では友好のための交流だけでなく,正式に貿易や技術交流のための人材交換も実施されている。

 

あちらからは珍しい宝石や鉱石や海底でしか採れない植物,彼らの作る道具や工芸品などを輸入し,こちらからは逆に地上でしか採れない食べ物や素材,我らの作る装備などを輸出しており,人材は建築技術や芸術関係を中心に交流が深まっている。

 

……そして今でもセレン様からはちょくちょく貝で連絡がくるが,俺の心臓に悪いのでほどほどにしてほしい。

 

ただ,偶に真面目な話をしてくるのでこれからも無視することは出来なさそうだ……。

 

その他に大きな出来事といえば,ダーハラ湿原への入植が大きく進んだことだろう。

 

以前にも話したが,あの湿原は4つのエリアに別れている。そして現在は3つ目のエリアまで整備を完了させることが出来た。

 

2つ目と3つ目のエリアの整備に思ったよりも時間がかかったことによるこの進捗具合だが,これで一応はその区間に関しては人が通れる道が出来上がったことになる。

 

そう……つまり原作でのダーハルーネの町付近まで来れたのだ!恐らく近いうちにダーハルーネの町の建設や4つ目のエリアへの進出が始まるだろう。もしかすると俺も現地に赴くことになる可能性もある。

 

実はなんだかんだで1つ目のエリアより向こう側には行ったことがないので楽しみにしていたりするんだよね。

 

あ,後はナギムナー村のことだが,キナイはあれから無事に騎士になることが出来てロミアや娘ともなんだかんだうまくいっているらしい。

 

らしいというのは俺はあれからナギムナー村に行っていないからだ。

 

……やっぱり遠いんだよね!!

 

残りはまぁ細々としたことを色々したぐらいだ。

 

城下で暴れていたガキ大将を〆て改心させたりするなどして騎士見習いの人材を自ら確保したり,騎士団の訓練を見直したり,サマディー領内の町や村のインフラ整備をしたり……。

 

あとは少し前に,オセノン経由でとある"リリパット"という種族の魔物から人間の赤子を拾ったから代わりに育てて欲しいと頼まれて孤児院に預けたりもしたな。

 

……人間の言葉を話すことが出来る魔物に会ったのは初めてで驚いたよ。

 

ま,まぁそんな感じで語るまでもないことばかりだろう。

 

そう考えつつも俺は,先ほどから後を付け始めている気配を察知して路地裏に入った。

 

「早くもバレたか……何か用か?」

 

俺はそこで振り返り,何もない空間に向けてそう声を掛けた。

 

「ンフフフフ。流石は我が君……やはり我のレムオルごとき容易く看破されますか」

 

そう言って突然姿を姿を現したのは,長身で長髪の若い騎士だった。しかしただの騎士ではない,その身に纏う黒い意匠が施された装束は黒騎士団の証だ……それも素材からして最上級の。

 

目の前のこの男の名前は"ゾルデ"といい,この歳でなんと黒騎士団副団長を務めている。

 

かつて倒れているのを発見した後に面倒を見たところ,「世界は暗い…」などとよくわからない供述をしており……とにかく病んでいる様子だったので,メンタルケアも兼ねてじっくり話をしたところ,なんだかんだで俺を慕ってくるようになったのだ。

 

彼が『真の光が……!』とか突然怖いことを言い始めた時は俺が何かやらかしてしまったのかと思ったが,普通に生活できているようなので大丈夫だと信じたい。

 

それからはサマディーの騎士団に所属し,持ち前の才能を遺憾なく発揮して最年少で副騎士団長の座を勝ち取った。

 

そして現在4人いる副団長で唯一の貴族以外の出身者でもあるが,孤立したりしているわけではないようだ。

 

……ちなみに俺は密かにこいつに黒騎士団長の職を押し付けてやろうと画策していたりする。彼は忠誠心,能力,部下からの信頼度などもそれぞれ問題ないと俺は判断しているからだ。

 

俺は諦めていなかったのだよ! ふふふ,いずれは俺の枷を1つ受け取ってもらおうかぁ。(ニチャァ)

 

「我が君の御父上……いえ,失礼致しました。陛下が捜しておいででしたぞ。どうやら西と北からの便りを吟味され,我が君の御力を求めておられるご様子だと見受けられました」

 

西はわかるが……北?

 

彼は非常に真面目で優秀なのだが,病んだ後遺症によるものか年齢によるものなのか手が疼くタイプの例の病を患っている疑惑が俺の中にあり,偶に言い回しが中々にかぐわしい時がある…ただイケメンなので意外と様になっているのがな……。

 

……ちくせう! どうせ結局顔なんでしょ! ハムザ知ってる!!

 

「……わかった。ではすぐに向かうとしよう」

 

「それでは我は失礼いたします。ンフフフ……」

 

彼はそう言って大げさなお辞儀をしながら再び消えていった。悔しいがやっぱり似合ってるな~。

 

……それにしても彼の笑い方はやはりどこか記憶に引っかかるな。うーん…まぁ思い出せないなら大したことではないだろう。

 

若いから記憶力が高いとはいえ,転生してから14年も経つと原作知識でさえ忘れそうになっていることがある。これからは定期的に思い出すようにする必要があるだろうな。

 

そう考えた俺は,城に向かって歩みを進めた。

 

 

 

~~サマディー城・玉座の間~~

 

ということでやって参りましたのは玉座の間! そしてそこにはもちろん父上が待ち構えていた。

 

「お呼びと伺い参上致しました」

 

俺がそう告げると,父上が頷く。

 

「うむ。早速だがハムザよ,ダーハラ湿原の開発の進捗状況は耳にしているであろう」

 

「勿論でございます」

 

やはりゾルデの言ったように,西側への進出関連の話のようだ。

 

「ワシはようやくあの先に港町を建設する時期が来たと考えておる。そこでな,今回はそなたに現場での指揮を任せるべきであると思っておるのだ」

 

そろそろだとは思っていたが,予想以上に早かったな。それに俺も望むところではあるが,正直サマディー内でも人材が育ってきている状況で俺に"任せるべき"とは……何か状況の変化でも起きたのか?

 

「……私としてもその必要性は感じておりました。しかし父上におかれましてはいつになく急いでおられるご様子……何かご懸念がおありでしょうか?」

 

「うむ……実はな,つい先ほど分かったのだが,内海を隔てた他の大国の中でも最も我らとの距離が近い北の"デルカダール"が海洋貿易を重視する方針を打ち出したようなのだ」

 

北,そしてデルカダール!! ……いや,この時点ではあの国はただの(?)強国だ。変な先入観を持つのは良くない。

 

……それにしても,ゾルデはこのことを知っていやがったな?彼は俺のことを何でも知っている超人か何かと考えていそうな雰囲気があるので,報連相を今一度教えておかなければ……。

 

……でも噂では部下に何か教える時は丁寧らしいからホントにタチが悪い!!

 

「恐らく他の大国……内海ではバンデルフォンが,外海では我々が大きく幅を利かせ始めた状況を受けて動いたのであろうな……現状でも十分に豊かであろうに熱心なことだ。それに最近デルカダール王は体調が優れぬゆえ,王子のモーゼフ殿が政を行っていると聞く……となると彼の考えであろう」

 

五大国は基本的に自国だけで国を成り立たせられる国力があるが,どの国も国土の一部が海に面しているため,それぞれが海洋貿易を行っている……まぁサマディーは最近までかなり小規模だったが。

 

その中でも内海ではバンデルフォンは頭一つ抜けており,海軍も盛況で有名だ。外海でも,今までクレイモランの力が強かったが,現在は我々が勢いをつけつつあり,更には内海でも力を持ちだそうとしている。

 

5大国の中でもクレイモランやサマディーはその立地から海を利用せざるを得ない部分があるが,他のデルカダール,ユグノア,バンデルフォンの3国は陸上でも比較的に移動しやすい。

 

そのため,獅子王を擁するバンデルフォンという例外を除けば今まではあまり積極的に海に出てくることはなかったのだが,デルカダールがこのタイミングで動き出したということだ。

 

……それにモーゼフ王子といえば原作のデルカダール王だ。彼は後に稀代の帝王とも称される名君になる素質を秘めており,王として有能であることは疑うべくもない。

 

「ユグノアの先王も若くして亡くなっておるし,クレイモランも少し前に代替わりがあったばかり……我が国だけでなく他の大国も新たな動きを見せ始める可能性が高い時期で目が離せんな……」

 

うーん,俺の気持ちとしては父上には後数十年は現役で頑張って頂きたいところだ。

 

「ワシはこの状況は互いに良い影響をもたらすだろうと思っておるが,それは我々がそこに参加することを前提として初めて言えることだ。切磋琢磨するにしても,協調して歩んでいくにしても,ここはサマディーも内海への進出に対して本気であることを示しておかねばならん」

 

「……なるほど,その為に私自ら向かうことに意味があると……」

 

「その通りだ。国同士の面倒な外交は本来であれば王であるワシの仕事ではあるが……今回はこの国を越えて世界中に知れ渡っておるそなたの名声の力も貸してほしい。……それに今回のような重大な役目であってもそなたに任せておれば安心できるという気持ちもあるがな! わっはっは!!」

 

父上はそう言って笑うが,俺は心中の喜びを隠すのに必死だった。やはり親からの信頼というものはいつになっても嬉しいものだ。

 

……というか世界中に俺の名が?

 

基本的に国内に引きこもってるんだけどなぁ。

 

「……父上の深謀遠慮,私も理解致しました。かくなる上は私も全身全霊を以てその任を務めさせて頂きます!!」

 

「うむ! 頼んだぞ! はっはっはっ!!」

 

俺はその後に父上に別れを告げてから,今回の任務の詳細について詰めるために団長室へ向かうのだった。




まだ流れが決まっていない部分もありますが,この章の構想を練りながら思ってたんですよ……あ,これカオスだぞと。
恐らく既出も新出も含めてたくさんのキャラが出てきますのでお楽しみに!

それではまた!('ω')ノシ

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