我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

27 / 37
軽めの戦闘有りの27話です!どうぞ!


27話 湿原への侵入

~~ダーハラ湿原~~

 

「ここが……」

 

皆さんどうも! 湿原の入り口を越えたハムザ君です!

 

俺たちはあれからハムザリアで一泊した後に町を発ち,北西に少し馬を走らせてここまでやってきた。

 

原作では湿原の入り口辺りに大きな段差があったことで馬で侵入することができなかったが,そんな不便なものを残しておくわけがないので馬でも来ることができた。

 

……だが湿原内の道がある程度は整備されているとはいえ,馬でダッシュしたりは流石にしない。

 

今回は商人などが連れる馬も安全に通れるのか確認するために連れていくだけだ。

 

よって半数が馬に乗って残りは馬を曳いて徒歩である。

 

「ここから先がダーハラ湿原ですか……。入り口を見張っていた騎士も言っておりましたが,用心しながら進みましょう」

 

俺のすぐ後ろにいた先輩がそう言う。

 

当然だが湿原の内部にも魔物がおり,俺たちを襲ってくるだろう。

 

中を巡回している騎士もどこかにはいるとは思うが,当然いついかなる時も守ってくれるわけではない。

 

特に現在はダーハルーネ建設に人員を割いているので,湿原内部の警備は厚くないだろう。

 

物資輸送の際はそれ用の護衛を付けるだろうし,巡回の兵は多くないだろうね。

 

そのため,現在はここを通る際に入り口を見張っている騎士から警告を受ける場合がある。

 

ただ,広大な湿原の入り口を見張ると言われても,その一か所で意味があるのかと不思議に思うかもしれない。

 

だが,実はダーハラ湿原は道を進んでいれば突然目の前に現れるような地形にはなっていないのだ。

 

これがどういうことかというと,1つ目のハムザリアがあるエリアと2つ目の湿原のエリアの間にも巨大な岩の壁が存在しており,そこを行き来するためには岩の間にある出入口を通らなければならないのだ。

 

もっと言えば,ダーハラ湿原は周りのほとんどをこの岩壁に囲まれているため,俺がよく使うエリアで分けるということが可能になっている。

 

つまり侵入並びに通行できる場所が限定できる。

 

別に出入りの制限をしているわけではないが,彼らは問題が起きれば町に報告する役目も担っているので,念のため警告するのだ。

 

まぁ俺たちは騎士なのでお約束の注意みたいなことしか言われなかったが……。

 

「よし,そろそろ進むとしよう」

 

俺は皆に声を掛けて先頭を進んでいく。

 

足元にはいきなり橋が架けられているが,この人数が一度に乗ってもビクともしないので見た目以上に頑丈なようだ。

 

その橋を渡り終え,所々に設置された看板を頼りに進んでいく。

 

進む途中で辺りを見渡すと,The・自然といった景色が広がっていた。

 

道の横には見たことのない草花が生い茂り,周囲にはこれもまた見たことのないくらい背の高い木々が聳え立っている。

 

更にはコケやキノコもたくさん生えているのが見える。

 

そして湿原と言われるように,俺たちが進む道以外の地面はぬかるんでいる所も多く,水辺も非常に目立っている。

 

「プッチ!」

 

これにはオセノンも思わずテンションが上がっているようだが,それ淡水だから君が思っているのとは違うと思うよ……。

 

これらを見ると,ここを整備してくれた騎士たちは本当に凄いと改めて思えるな……。

 

ナギムナー村の周辺でもこれと少しだけ似た景色を見たことがあるが,ここは薄暗さや植生の多様さも相まって少し不気味な感じだ。

 

…………

 

……とまぁここまで散々不安を煽るようなことを言ってきた上で言うのもなんだが,おそらく皆が思っているほどダーハルーネまでの道は危険じゃない。

 

そもそも我が国が何年もかけて整備してきたのだ。そんなに簡単に危険に遭遇するようでは困る。

 

俺たちはもちろん最悪を想定して色々と備えているが,正直よほどのことが起こらない限り今の俺が危険に陥るような事態にはならないだろうと思っている。

 

先輩の声掛けも副長として念のためにしたものだろう。

 

特にこのエリアはまだ比較的安全で,この湿原に来る人々のほとんどはこのエリアを目的としているのだ。

 

なぜなら最も早く開発が進められた場所であることから鉱石の採掘場や農園などもある資源の宝物庫なので,人の出入りが多いからだね。

 

そんなわけで俺たちは着実に進んでいき,その日のうちにエリアの境目にある洞窟までやってくることができた。

 

ここは採掘場につながっているため簡易の宿のようなものがあり,俺たちもここで夜を明かすつもりだ。

 

中に入ってみると,恐らくここまでの間で最も手のかかった場所であろうことが伺えた。

 

なぜそう思ったのかというと,入り口の近くを始めとしたいくつかの場所には壁から水が流れ出して床に空いた穴に吸い込まれている場所があるため,この地面の下に水が流れていることが分かったからだ。

 

ちなみにこの水は"きよめの水"であるらしく,少しであれば無料で飲んでもいいらしい。

 

どうやら湿気などの問題もある程度解決されているようで,ここを作った奴の本気が滲み出ている。

 

まぁ利用者である俺たちにとってはありがたいので文句はない。

 

「良い時間でもあるし食事にしようか」

 

「そうですな,それではついでに荷物を整理しましょう」

 

先輩と意見も一致したところで食事の用意をする。

 

今日は町で買ったばかりの食材が多いので,まだ新鮮で美味しそうだ。

 

それらに軽く手を加えてから広間にあった机に並べ,それぞれ食べ始める。

 

 

「この辺りはサマディーとはまた違った暑さがありますな……」

 

「モグモグ……ああ,蒸し暑いというのだろうな。東のホムラの方でもそんな暑さがするらしい。オセノンは大丈夫か?」

 

「プッチ~~」

 

「ギリギリみたいですね~オセノン,この大陸は暑い場所ばかりです~」

 

「それにしても今日はあまり魔物に襲われませんでしたね……」

 

「ああ,急に出てきた"マドハンド"には少し驚かされたがな。この辺りは特に頻繁に騎士がくるだろうから魔物はあまり近寄らぬのやもしれん」

 

「モシャモシャ……そもそも見かけた魔物の数自体が異様に少なすぎた気がするが…」

 

「副長殿,ここから目的地までは今日の道のりより長いのでしょうか?」

 

「そう考えて良いと思うがな……」

 

「ゴクンッ……だが私が町の中で聞いたところだと,最近になって新しく道ができたらしいぞ?」

 

「本当ですか! 知りませなんだ…。」

 

「ふむ……あまり使われていないのだろうか……?」

 

 

俺たちは机を囲んで共に食事をしながら,今日の感想や明日のことについて話し合うのだった。

 

 

 

 

ふぁぁ~。

 

それじゃあもう今日はそろそろ寝ようかな……あ! そうだ!

 

あることを思い出した俺は寝る前に洞窟の出口まで歩き,そこにいた牛に尋ねた。

 

「"てんきよほウシ"よ,明日の天気を教えてくれんか?」

 

これを聞いて『ああ,遂におかしくなってしまったんだね……』と思った人はもう少しだけ待ってほしい。

 

「ンモーーーゥ。この辺りは明日いっぱいずっと晴れが続くモゥ! 明後日になれば天気が変わるかモゥ?」

 

こいつは"てんきよほウシ"と呼ばれており,天気予報をしてくれる凄いウシさんなのだ。

 

驚くべきことに,このウシは善意で天気予報を行ってくれている。

 

そしてどうやら明日は晴れるようなので一安心だ。

 

……当初は大量に増やせないか考えていたが,かなり賢そうだったので断念したという裏話は秘密だ。

 

「助かった,ありがとう」

 

そう言った俺は明日に備えるべく,その日は少し早めに就寝するのだった。

 

 

 

 

 

あれから一晩寝たことですっきりした気分で朝を迎えた。洞窟に泊まるのもたまにならいいかもしれない。

 

俺たちは各自で支度を整えた後に集合し,出発する。

 

さて,今日は3つ目のエリアを往きましょうかね!

 

俺たちがしばらく進んでいくと地面がほぼ全て水辺になっている場所に出てきたのだが,そこには驚くべきものがあった。

 

「プッチ~!」

 

「これは……! 凄いな」

 

「ええ,それにもしやこれらは……」

 

そんな声を上げる俺たちの目線の先にあるのは,3次元的に張り巡らされた道の数々だ。

 

フワッとしたイメージは伝えてあったが,予想以上のクオリティ……!

 

このエリア全体に張り巡らされているようなそれは,もはや1つの芸術作品と言っても過言ではないだろう。

 

それに加えて――

 

「中央の巨木に沿うように作られているのか……!」

 

そう,先輩が言うようにこの水辺の中央にはこれまの道中で見てきた大木を遥かに凌ぐ巨木があり,ここにある道はその枝をうまく利用して作られているのだ。

 

これで物資の輸送隊などが事故もなく通れたのはもはや一周回って怖いぐらいだ…。

 

俺もゲームプレイ中は気にも留めなかったが,今見てみると圧巻の光景だな。

 

これのイメージを実際の形に落とし込んだ奴は凄まじいセンスと技術を持っているに違いないと素直に思えるほどに…。

 

更によく見れば手すりなども付いており,原作よりも安全性に配慮されている!?

 

そして俺の中に1つの疑惑が生じた。

 

 

『整備にここまで時間がかかったのはそいつのせいではないか……!?』と。

 

 

それに恐らく昨日泊まった宿もそいつが設計したに違いない。

 

……だがこれを見ると別によいかと思わせてくるほどの出来ではある。

 

サマディーも意外とやるじゃん!!

 

と……それは一先ず置いておこう。

 

「さて,どちらのルートを採るか……」

 

現在俺たちの目の前には2つの道があり,片方は上へと続くルートでもう片方は水辺にある道?橋?があるルートだ。

 

距離の短さで考えるなら後者が圧勝だろう。……それに平面は馬での移動にも向いている。

 

だが前者は滅茶苦茶楽しそうだ。あそこから見える景色は非常に気になる…あとは魔物が少ない可能性が高いので安全性の面で勝るだろう。

 

行きと帰りがあるのだからどっちも通れば良いというのはわかっているんだが,問題は今どっちを選択するかってことなんだよ!

 

……よし,ここは民主的にいこう。恨みっこなしの多数決だ!

 

「では皆の意見を聞こう……どちらがいいか選んでくれ」

 

結果は如何に!?

 

 

 

 

………

 

えーと,後者に決まりましたハイ……。

 

いや別に俺もそっちの方が良いとは思うよ? ただ,全員が「そりゃ一択でしょ?」みたいな反応だったのはショックだ……。

 

もうちょっと盛り上がろうよ……。

 

まぁここは切り替えていこうか! こっちの道も楽しそうだしね!

 

……言い訳というわけじゃないが,後者の道はなんだか色がおかしい気がするんだよな~。それに先ほどから近くの魔物の気配も変だし……。

 

そう考えつつも,俺たちはその道をズンズンと進んでいく。

 

俺はこのまま何事もなく目的地までつけそうだと思っていたのだが,そろそろ橋を渡り終えようかという時に異変は起こった。

 

 

――ゴゴゴゴゴ!!!!!

 

 

「「「!!!」」」

 

突如として橋が大きく揺れ始めたため,俺たちは急遽急いで橋を渡ることになった。

 

そうかようやくわかったぞ! 俺はこの辺りの魔物の気配が妙だと思っていたがそれは――

 

 

「ゴアアアアアウ!!!!!」

 

 

こいつがデカすぎて感覚がバグっていたのだ!!

 

対岸までたどり着いた俺たちが振り返った先で姿を現したのは見上げる程の黒く巨大なミミズだった。

 

…………

 

お前ーーー!!!出てくる作品間違ってるぞーー!!

 

こいつは【DQMシリーズ】などに登場する魔物,"タイラントワーム"だ!!

 

道と間違える程のサイズってとんでもないな! というか今まで本当に誰も気づかなかったのか!?

 

「グアアアウ!!」

 

「避けろ!!」

 

俺が言葉を発するのとほぼ同時に全員がその場から飛び退いた直後――

 

 

――ドガーーンッ!!

 

 

おわあああああ!? 衝撃がががが!!

 

俺たちが先ほどいた場所が抉れるほどの圧倒的な質量による攻撃が地面に炸裂した。

 

なんなんだこの怪獣映画みたいな規模は!?

 

顔を上げてあいつを見る限りは考えている時間をくれそうな様子には見えない。

 

それになぜか奴からは殺意を感じないんだよな……だがこのままではこの辺りが更地にされかねないぞ!!

 

だがよく見ると何かに苦しんでいるようにも見える。

 

……ええい!! 魔物とはいえ困っている奴はほっとけないだルォ!!(内騎士)

 

いずれにせよ,今は最速で奴を黙らせるしかない!!

 

俺はその場で瞬時にスーパーゾーンモードに移行した。そして相棒に乗ったまま水辺にある小島を足場にして最速で近づきながら自身にバフをかけ,声を張り上げる。

 

「お前たちは奴に弱体化の呪文を掛けろ!!!」

 

「「はっ!!」」

 

そこから部下たちも"ルカニ"や"ボミエ"をかけ始める。

 

いいね! 実に良い反応速度だ!!

 

「グアアアウ……!」

 

奴も調子が狂って苦しそうにしているが我慢してほしい。

 

姿勢の制御に集中して,暴れる魔物の体をなんとか躱して近づいていく。

 

そして俺と相棒が奴の顔の真下まで来たのを確認すると,相棒の背中から全力で跳び上がった。

 

そのまま上昇していき,奴を見下ろす高さまで到達した瞬間に愛刀を振りかざす!

 

「すこーし良い子にしていろぉ!!!」

 

俺は振り下ろす直前に持ち手の角度を45度変え,技を繰り出した。

 

奴クラスの大きさだと手加減は出来ん!!

 

 

「"灼熱全身全霊斬り"!!!」

 

 

俺は炎の力を纏わせた剣の腹を下に向けて,タイラントワームを全力でぶっ叩いた!

 

 

――ドガーーーンッ!!!

 

 

その一撃によって魔物は勢いよく地面と衝突し,凄まじい音を立てた。

 

「グ……アアアウ……グ,グ,グボェッ!!」

 

俺は落下しながらも,地面に叩きつけられて苦しんでいたタイラントワームがその場で何かを吐き出したのが見えた。

 

「ゲコッ! ……ゲコゲコッ!」

 

あれは……"ポイズントード"……?

 

この辺りにも出現する珍しくもない魔物であるが,毒を持つ危険な奴でもあるので念のために倒すべきか……。

 

……そう考えていると,そいつがこちらを向いた。

 

!!!!!

 

「ふんっ!!」

 

「ギャッ……!」

 

そして着地寸前に放った俺の一撃によってその魔物は一瞬で空気中の魔力に還元された。

 

…………

 

「ハムザ様! ご無事ですか! ……どうされました?」

 

はっ! いつの間にか先輩が近くまで来ていたようだ。

 

「……ああ,問題ないさ。それよりも……」

 

俺はゾーンを解除してから倒れたタイラントワームの方を見ると,そこではオセノンが奴に何かを必死に伝えようとしていた。

 

 

「プッチ!」

 

「グアウウウ……?」

 

「プーーッチ!!」

 

「グア……!」

 

「プチ~♪」

 

 

……正直なところ意☆味☆不☆明だが,2匹の間で何かが決着したようだ。

 

すると,オセノンが足元までやってきて,唐突に絵を描き始めた。

 

――カキコカキコ

 

ふーむ,これは…俺が奴を撫でる絵か?

 

「……これと同じことをすれば良いのかオセノン?」

 

……こいつに? 本気で言ってる?

 

「プッチ!」

 

そう言ってオセノンは力強く頷くので,俺も覚悟を決めて恐る恐る奴に近づく。

 

先ほどオセノンと会話していたのだから,もう暴れだしたりはしないと思うが……。

 

改めて見ると滅茶滅茶怖い……! 今の俺ですら夜中に見たら叫ぶ自信がある。

 

そう思いながらもタイラントワームの体表を撫で,言葉をかけてやる。

 

「もう大丈夫だ。心配することはない……」

 

「グアウウ……」

 

その瞬間に少しだけ不思議な感覚に襲われた気がしたが,特に何かが起こるわけでもなかった。

 

「プチー♪」

 

だがオセノンを見ると非常に嬉しそうにしていたので,これで良かったのだろう。

 

俺は奴に向き直って言う。

 

「すまないがお前は大きすぎるのだ。この場所にいてはお互いの為にならぬ……他の場所へ移ってはくれぬか?」

 

通じてくれないかな~と淡い期待を込めて半分ダメ元で言ったつもりだったが,奴は頷くとすぐに地面に潜っていった……。

 

――ドドドドド!!

 

…………

 

……か,かしこひ!! やはり強い魔物ほど賢い傾向があるんだろうか……?

 

それにしてもここの地下にあんな魔物がいるなんて…これはもう少し調査が必要かもしれんな。

 

「流石ですなハムザ様!」

 

先輩がそう言ってくるが,今のってさすハム案件か?

 

ま,まぁいいや!

 

よくわからないが,今は早く先を目指そうと思ったところ――

 

 

「流石は我が君……! 先ほどの一幕も書に記され歴史に残るに違いない!! この瞬間に立ち会えて我の心は狂喜乱舞しておりますぞ!!」

 

 

近くの木の陰から滂沱の涙を流すゾルデが現れたのだ。

 

またいいタイミングで……。奥の方から少しづつ近づいてきてたのはわかっていたがスルーしようと思っていたのに……。

 

なんにせよとりあえずこの状況で俺が言いたいことを1つだけ言わせてもらうと――

 

 

 

 

 

……まずは顔を拭こうよ。




……ダーハラ湿原ってDQMJ2の密林と少しだけ似てますよね(ボソッ)

それではまた!('ω')ノシ

今の文字数ってどうですか?

  • 少ない
  • いいかんじ
  • 多い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。