というわけで29話です! どうぞ!
~~ダーハルーネ建設予定地~~
「……最近この湿原で変わったことが起きてはいないか?」
皆さんどうも! ゼイウスの上官さんから話を聞くハムザ君です!
これは俺たちが先ほど遭遇したタイラントワームに関して,彼らが何かしらの情報を持っているんじゃないかと期待しての問いである。
「変わったこと……ですか。そうですな,強いて挙げさせて頂くならば騎士たちの間で妙な噂話が広まっていることくらいでしょうか……」
!! やはり何かあるのだろうか?
「……それは一体どんなものか教えてくれるか?」
「はい,実はそれはいくつかありまして――」
そこで彼から語られた話は大きく分けて3つだった。
大雑把に言うならば――
1つ目は,湿原内において,彼らが作った覚えのない道が時折出現しているのを目撃した者がいるというもの。
2つ目は,この周辺でフワフワとした何かが移動する様子を目撃した者が大勢いるというもの。
3つ目は,時々ここより更に奥地の方角の上空で謎の赤く光る輪っかのようなものが見える時があるというもの。
「……といったところです」
「……なるほどな」
お,思ったより多いし変なものばかりだ……。
もはや謎解きをしているのではないかと思えるほどに意味不明な内容だぞ……!
都市伝説か学校の7不思議じゃないんだから!
「更に強いて挙げるならば,最近は湿原の魔物の数が少なく感じることでしょうか……」
なるほど……それは俺も道中で少し思っていたところだ。
「ハムザ様,1つ目の話はもしや……」
「ああ,恐らくな……」
先輩が考えているように,1つ目のことは先ほど俺たちが遭遇したタイラントワームに関係した話だと考えて間違いないだろう。
というかホントに誰にも魔物だと気づかれていなかったのは驚きだ。
今日の俺たちの運が余程悪かった,もしくは良かったのだろうか……?
だが残り2つは曖昧過ぎて見当もつかん……原作知識を掘り起こしてみても今のところ該当はなしだ。
そこで俺は上官さんに俺たちが遭遇した魔物について話したところ,それを聞いた彼は大層驚いていた。
「なんとそのようなことが……! それに王子を危険にさらしてしまうとは……」
「ああ良いのだ。むしろ遭遇したのが私で良かった……他の者では対処できたかわからんからな」
これはホントにそうだ。あのレベルの化け物の対処は彼らには荷が重いなんてものじゃないだろう。
俺ですらあんなにすんなり収まったことにびっくりしているくらいの魔物だ。
「……それほどですか」
「ああ,だが残りの2つは見当もつかんな……そもそもフワフワとした何かとは具体的になんなのだ?」
フワフワしたものだけでは情報が少なすぎる…せめて生物なのか非生物なのかくらいはわかっても良いと思うのだ。
まさか全員が遠目で見ただけだからぼんやりとしか見えなかったわけでもあるまいし……。
「それが……フワフワとした何かを見たということだけは覚えているものの,どんな姿形をしていたかなどが思い出せないという者ばかりでして……。我らにとってもそれが原因で噂話の域を出ておりません」
え~なにそれ怪しすぎる……。それ絶対何か裏があるでしょ流石に!
そういう精神や記憶に影響を与える呪文の類を受けたのか,それとも幻覚を見せられたのか……何のために?
もしくは別の理由か……まぁそれについては一先ず置いておこう。
「そうか……それと謎の輪のようなものが見えたのはまだ開拓が進んでいない霊水の洞窟があるエリアの方角だろうか?」
「はい……実はこれに関しては私も目撃しております。少し不気味ではありましたがそれによって特に何かおかしなことが確認されたわけでもありませんので,今まであまり気にしておりませんでした……」
輪っか……ワッカ……これは違う。だめださっぱりわからん。
うーん,謎は深まるばかりなり。
今までは特に悪い影響が見られなかったから放置されていたようだが,1つ目の話の真相があの魔物だとすると,残りの2つについても何か危険性を秘めた案件かもしれない。
これはボチボチ調査するべきかもしれないね。
「もしかするとそれらはただの噂話で済まして良いものではないかもしれぬ。できればこの町が完成するまでには全てを解き明かしたいものだな……」
町ができて多くの人々が来るようになる前までには解決しておきたいところだがさて……。
そこでこの話題についての話は一旦終えて,そこからは現状における作業計画やそれにかかる費用などについての報告を受けたり,俺がこれからここで行うべき仕事の内容についても話を煮詰めていった……。
・
・
・
――ビュオ~~!
うーん,高い場所だからか少しだけ風が強いな~。
そう感じつつも俺は下に向かって声を張り上げる。
「場所はここで間違いないだろうかー!!」
「そこよりもう少し右になりますー!!」
「よし……ならこの辺りで良いかー!!」
「はいー!! そこなら完璧ですー!!」
ここに到着したあの日からしばらくの時が経ち,俺が指揮を執ることになったダーハルーネの町の建設も順調に進んでいる。
そんな中で現在俺が何をしているのかというと,他の者では危険な高所での繊細な作業があるという話を聞いて,嬉々として駆け付けて参加しているという状況である。
これは今の俺であればこの高さから落下してもゾーンモードになってさえいれば最悪の場合でも死ぬことはないだろうという判断からの行動だ。
……本音を言えば気分転換に加えて,合法的にこんな場所に登ることのできる機会なんてこの先巡ってこないだろうと思ったから,部下たちの反対を押し切って強行したのである!
どうだ! ここから見えるのはこの瞬間の俺だけが拝める唯一無二の光景だ!!
ふははは! 権力とはこういう時のために使うのだよ!!
……とまぁそんな話はさておき,この作業時間を利用して俺がここに来てからやっている仕事について少し話をしようか。
まず前提として言っておくが,指揮を執るなどと大層なことを謳ってやってきてはいるものの,俺が現場で作業をしている騎士たちに対してああしろこうしろと逐一指示を出したりしているわけではない。
……いやまぁそれもしようと思えば出来るんだけどね?
俺が出しゃばるよりも以前からここで頑張ってくれている皆に現場のことは任せた方が上手くいきそうな気がするじゃん。
……だから決して面倒だと思っているわけではない。
ここでの俺の最大の仕事は,ここにいる騎士たちが憂いなく作業が出来るようにその行動の責任を取ることだ。
今俺がやっている作業のことは一旦忘れて聞いて欲しいのだが,基本的に俺は部屋に籠って彼らが提出してくる計画書や報告書を読み漁っている。
それらを読んだ上で問題ないと判断すればそのことに対して許可を出したり,逆に少し問題があると判断すれば考え直すように伝えるわけだよ。
そこで初めて何かしらのアドバイスをしたりもする。
もちろん町の建設初心者の俺がなんでもかんでもすぐに理解して解答できるわけではないので,元々ここでそれらを担っていた騎士や我らが先輩たちに色々と相談しながら吟味するんだけどね。
そこで許可を出した内容をその通りにやって何か発生するようなことがあれば,『俺が許可を出したんだから仕方ないよね! 皆は気にしないで良いよ!! 切り替えていこう!!!』……と言えるわけだ。
普通は王族だったりするならば責任などのリスクを負うことを嫌って誰かに責任を擦り付けられるような言い訳を考えておくものなのかもしれないが,俺はそんなことはあまりしていない。
既に騎士団のトップとして数々の責任をこの背に背負っている俺にとっては今更いくらか背負うものが増えたところで,どうということはないのだ! 残念だったな!!
……え? それは重すぎて感覚が麻痺しているだけだって?
……はっはっは! そういう考え方もあるよね!!
まぁそれはとにかく,つまりは多くの場合は上の人間に任された誰かが指揮役をやるのが普通だが,今回は俺という王族兼騎士団のトップがすぐそこにいるという安心感を提供しているという話です。
……ついでにちょっぴりの緊張感もね!
そう考えると俺はここに来ているだけで半分仕事をこなしているようなものなんですよ!
しかしながら俺の仕事はこれだけにとどまらない。
それに加えて,以前ここの騎士から聞いた噂話の真相解明のために騎士たちを動かしたりもしている。
町の建設が最重要目標ではあるのであまり大々的に出来るわけではないのだが,こういう時にもゾルデたち黒騎士団が役に立つのだ。
今回ゾルデはここに腕利きの数名の部下を連れてきていたようで,彼らと共に動いてくれている。
そのため彼らには湿原の方にも度々赴いてもらっており,そのついでに街道の巡回やそこに現れる魔物の退治なども行ってくれているので非常に助かっている。
彼らからもたらされる報告などを確認しながら噂話に関する真相についても色々と考えたりしているが,今のところめぼしい情報も得られておらず納得のできる結論も出せていない。
成果と言えそうなものとしては,ゾルデたちが調査の合間に作成してくれている最奥のエリアの地図やそこの情報くらいだろうか…。
これらは恐らく更なる奥地への進出の際に役に立ってくれることだろう。
他にも今俺がやっているように,実際に作業に少しだけ参加してみたりもする。
これは別に俺の我儘や気分転換のためだけにやっているわけではなく,実際に俺の身体能力などを考えると圧倒的に早く済ませることができる作業などがあるから参加しているのだ。
……決して自分の行動に対する言い訳じゃないからね!
実際にこれまでにもいくつか非常に集中力が必要な作業をゾーンモードでこなしたことがある。
あのランタナという建築家は時折なかなかに厄介な作業が必要な計画を提案してくるので,面白くはあるが騎士たちは大変だっただろうなと感じる。
だが自分の手で町の何かを作ったりする作業に参加してみると,より一層この町に対する思い入れが深まった気がするのでやはり楽しい。
後は……騎士たちの作業現場に時々顔を出して冷やかしにいったり,空いた時間で訓練に励んだり,ここにいる騎士たちと親交を深めたりしたぐらいだろうか……。
……といった感じで俺の仕事内容について少し話してきたが,せっかくなので今度はそれに続いて現在どのくらいまで作業が進んでいるのかについての話もしておこう。
俺たちがここについたばかりの頃は,町の入り口に大きな灯台を作ったりこの辺りに流れている川の流れなどを調整する作業を行っていた。
そして現在ではそれに加えて町の中の部分に手を加える段階まできている。
これは元から作業が思ったより進んでいたことや,ここで作業をしているサマディーの騎士が非常に真面目な者が多いことに加えて,ドラクエ世界特有の呪文などを用いた工法が採られているということも理由の一部ではある。
だがもっと根本的な理由としてはこの町には元々港としての基礎的な部分が存在しており,なんとか船を付けることが出来るくらいの場所なら既にあったことが大きい。
俺たちはその場所を拡張,整備することで町にしようとしているわけだ。
そして町全体の中でも最優先なのはもちろん港周りの整備である。
その理由としては,海から大規模に船で大量に物を運べるようになれば物の輸送にかけるコストが軽減されるからである。
というわけで俺たちは町の中でも港の方から順番に手を付けているという状況だ。
「よし……これで良いだろう」
説明を終えたところで丁度良く作業も終えたので降りるとしよう。
俺は途中にある出っ張りを足場にして少しずつ降りていきながら呟く。
「それにしても町っぽくなってきたな……」
……だが町が完成に近づくほどに例の噂話に関して何もわからない現状に焦りが出てくる。
ゾルデたちには慎重に調査するように命令しているので仕方ない部分はあるが……もどかしい。
少なくとも俺が来てからはそういった現象が起きていないので判断材料が少ないというのもある。
これは偶然だろうか……? それとも何か状況が変わった?
……やはりわからん,もしかするとここは多少のリスクを負うべき場面なのだろうか。
4つ目のエリアの地図も少しは出来ているのだから,ここはいっそのこと俺一人で霊水の洞窟にでも乗り込んでみるのはどうだろう……?
半分本気でそんなことを考えながら地面に着地したところで,近くの誰もいない空間から俺に話しかける声が聞こえた。
「我が君……少しお耳を」
「ゾルデか,何かあったか」
ゾルデがレムオルで姿を消した状態で話しかけてきた。
それにしてもこいつはこの呪文が余程気に入っているのか知らないが,隙あらば使っているような気がするな……。
「行方不明者が出ました……」
……マジかよ。
次回は遂に冒険できそうです笑
それではまた!('ω')ノシ
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