~~サマディー城・訓練場~~
皆さんどうも! なんか御前試合に出ることになったハムザ君です!
唐突だが,ドラクエ世界において,剣術と聞くと片手剣を使用するイメージが強いのではないだろうか。
実際に多くのドラクエ作品において,勇者の専用武器として片手剣の伝説の武器が用意されている。
登場するキャラクター達も,城の兵士たちは片手剣を使って訓練している様子をうかがうことが出来る場面がある。
しかし! あえて言おう! このドラクエ11というゲームにおいて,片手剣は正直に言うとあまり強い武器種ではない!
理由は単純なことで,片手剣は火力面において非常に使い勝手が悪い武器だからだ。
ここで「おいおい待てよと。片手剣両手持ち剣の舞の火力をご存じない!?」などと言うものが諸君らの中にいるかもしれないが,そんなことが実用性の面で選択肢に入ってくるのは終盤だし,その為ににわざわざ片手剣に持ち変えるのは面倒なのだ!
そう! 私たちはこの世界には両手剣という素晴らしい武器が存在しているということを知っておかなければならない。
主人公を片手剣装備でプレイする場合,序盤は相棒のカミュとともに物理火力要員としての仕事と回復役の仕事をこなせるが,ストーリーが進むにつれて火力不足が浮き彫りになり2軍落ちも珍しくない。
それが主人公が片手剣から両手剣に持ち変えるだけであら不思議! 序盤から終盤までを通して安定した物理火力アタッカーとしてパーティー内で存在感を表すことが出来る。
更には両手を使う関係上盾を購入する必要がなくなり,お財布にも優しい武器なのだ。
しかも極めつけは,みんな大好き世界のポンコツ大英雄グレイグ様も初期装備は両手剣を装備しておられるのだ。
これは仁王立ち不可避! この世界で剣と言えば両手剣以外ありえない!
……そう思っていた時期が僕にもありました。
いやね,ここまでつらつらと両手剣の良さを語ってきておいて言わせていただくのは本当に心苦しいんだけどね,この武器には無視できない難点が存在するんですよ。
重い。とにかく重い。
ゲーム内ではさ,主人公たちは装備した直後からさも使い慣れた武器かのように両手剣を振り回してるけどさ,あれってすごいんだなって。
本当に想像の倍ぐらい重たい。自分の奴は子供用にサイズを縮小してある特注品なんだけど普通に重い。
最初に色々武器を使ってみて,どれをメインウェポンにしたいか的な話を先生としたんだけどさ,初めてだからどれも難しく感じるのは当然だしドラクエ11だしって理由で両手剣を選んだわけよ。
でもね,少しなら大丈夫なんだけどしばらく剣を振ってるともうほんとに腕を上げられなくなる。
これはしばらく練習してもそうだった。片手剣がメジャーな理由がわかったね。携帯しやすさや継戦能力的に優れてるわあれ。
実際何度も武器変えよっかなーって思ったんだけど,俺の中に巣くう騎士道精神が邪魔してくるわけ! ここで逃げたら逆境に正々堂々立ち向かってなくない?ってね!
そこからも意地で両手剣振り回し続けた結果,ようやくコツが掴めてきてまともに振れるようになってきた。
そこからしばらく訓練を続けてきてーの今回の御前試合だ。
やるからには善戦なんかじゃなくしっかり勝利を収めたい。
騎士たちの訓練の様子を見たことがあるが,下級騎士たちであれば現時点でも勝利の目は十二分にあると思うが,御前試合に出るであろう腕のいい騎士たち相手となると今のままでは不安が残る。
更に,今回の試合は剣一本で戦わなければならないわけではない。
スキルや呪文の使用は可能だし,片手剣や両手剣,槍など色々な武器を使う者たちがいるだろう。
今の俺が覚えているであろう特技や呪文といえば,ブレードガード(武器ガード率が大幅に上がる剣のかまえ)とホイミ(HPを少し回復)……以上。
この世界はゲームじゃないから「スキルパネルにスキルポイントを振り分けて~」などといったことはしないので,実は両手剣装備時の攻撃力や会心率が上がっている可能性は無きにしも非ずだが,シンプルに技として会得しているのはこれだけである。
……も,餅つけ。いや落ち着け。俺は別に遊んでいたわけじゃないんだ。前にも話したように訓練も真面目にやっているし,もちろん魔法の勉強もやっている。
だけどね。いくら転生者といえどこちとら前世ではリアルファンタジーには縁のない人生だったんだから,呪文とか言われてもいきなりポンポン出来ませんってば。
むしろ二つ使えることを褒めてほしいくらいである!
しかも二つともめっちゃ使えるんだよこれが!
ブレードガードは相手の攻撃を見切りやすくなって防御が格段にやりやすくなるし,ホイミは軽い怪我ならその場ですぐに治せるから,初めて使えたときは感動したものだ。
とは言えこのままでは攻撃を耐えて回復して耐えてとかいう両手剣使いには辛いゾンビ的持久戦を敢行しなければならなくなる。
どうにかして火力を叩き出せるパウアーをもつ特技か呪文を会得したいところである。
とはいえ,序盤の両手剣の代名詞ともいえる渾身斬りをやろうとしても普通の振り下ろしになっちゃうし,おそらくシンプルにパワーが足りてないからできないような気がするんだよね。
呪文はそもそも自分に攻撃呪文の才能があるのかという部分を疑い始めている。
しかし先生に言わせると,魔力は一級品だから素質はあるが,それを引き出せていないという。
……素質あるのに苦手とか本格的に自分自身の問題じゃねえかちくせう。
ホイミは結構スムーズに会得できたのにメラやヒャドなんかの攻撃呪文はいまだに使い物にならないレベルの出来だ。
そこら辺の練習は地道に続けていくとしても,今すぐにどうこうなりそうなものではない。
いやまあドラクエ世界って割と突然の覚醒とか起こるけどさ…あれは選ばれし者たちの特権なんだよ皆の衆。
よって,俺は別のアプローチが必要だという結論に至った。
そこで参考にしたのが,ドラクエの外伝作品として存在する【ドラゴンクエストヒーローズ2】というゲームに登場するツェザールというキャラだ。
彼は両手剣を使うキャラで,両手剣の熟練度が十分になると剣に様々な属性のエネルギーをまとわせることで敵の弱点を的確につくことが出来る。
ちなみに彼は砂漠の国の王子という設定なので,そのあたりも親近感が湧いていたりする。
彼は魔法剣(そう呼んどく)を巧みに扱い,例えば剣に氷の力をまとわせることが出来るが,ヒャド系の呪文を使用することはできない。
そこで考えたのが,それらの技を特技と考えるならば,呪文と特技はどちらもMPを使用するものの,違う理によって発動しているのではないかということだ。
つまり! 攻撃呪文が苦手な俺でも使える可能性がある…ハズだ!
同じドラクエ作品だし何とかならないこともないだろう!
そうと決まれば練習あるのみだ!
~~サマディー城~~
さあさあやってまいりました御前試合! 俺の特訓の成果を見せてやろうじゃないか!
今の自分は父上と共に王宮から会場を眺めているところだ。
試合会場の観客席には,サマディーに仕える貴族や騎士たちによって埋まっており,市民たちの姿はない。
この御前試合は騎士たちの日ごろの鍛錬の成果を国王に見せる場として用意されたものなので,原作のファーリス杯のように国中を挙げての祭りだったりするわけではないのだ。
しかし国内の有力者が集まる場であるのは間違いないので,王子の自分が不甲斐ない戦いをすることは許されないだろう。
今更ながら父上はよくここで戦うことを提案してきたな……。
今回の試合の舞台はウマレース場近くにつくられている闘技場だ。
闘技場と言ってもあまり大きいものではないが,普段の訓練場と違うのは,見られることを前提としたつくりになっているところだろう。
実はこの場所のように,ゲーム本編には描写されていなかった場所は数多くある。
そして都市や建築物の大きさなんかもゲームよりはるかに大きく,ゲームは簡易的になっていたんだとつくづく思う。
そう考えるとやっぱりデルカダールってとんでもない大国なんじゃね?改めてあの国の国力ってやばいな。
こりゃ何としてでも試合で力を見せて計画を検討してもらえるようにしなきゃ!
やべ,ちょっと緊張してきたな。
そんなことを考えていると,父上から話しかけられた。
「調子はどうだハムザよ。緊張しているのではないか? わっはっは!」
実は父上は臣下たちの前以外では結構フランクに話しかけてくる。
「実は少し。ですがご安心を,その緊張の何倍も闘志を燃やしております」
認めつつもちょっとだけ見栄を張ってみる。
「ふふふ,まぁそういうことにしておこう。……実はな,ワシはそなたの実力は既に認めておるのだ。この国でも優れた騎士であるとな。だが「周りを納得させる必要があるわけですな」…!! そうだ。そなたの評判は良いが,そなたの実力を真に知るものは多くない。ゆえにこの場で実力を見せることでただの贔屓ではないと示さねばならん」
まぁそりゃそうだ。この提案を受けた時からそうだろうなと思ってた。「こんなガキが一緒に訓練するとか遊びじゃないんだぞ」と思うものも出てくるかもしれない。自分でも思う。
やっぱり元凶は騎士に交じれとか言った先生だね。評価してくれるのはうれしいんだけどね。
「そなたの実力を見定めたこの目は節穴ではないと思っている。この程度の壁なら容易く乗り越えてくれると信じておるぞ。さぁ行くがよい。ワシはここで見ておるからな。」
軽い感じで話しているが,めっちゃいいこと言うじゃん父上。
それじゃ,期待に応えるためにも頑張りますかね!
「はっ! 行ってまいります!」
そう言って歩き出す時には,もう緊張は消えていた。
~~闘技場入場口~~
今から試合が始まるわけだが,わたくしハムザ,トリでございます!
なーにが緊張は消えていた( ー`дー´)キリ だ! くっそ緊張しますが!?
今回の試合は優勝を決めたりするトーナメントや総当たりとかじゃなく,ホントに一回戦って勝ち負けがあるだけ。
つまり一回の戦いで互いにすべてをぶつけ合うわけだ。
当然相手も本気で来るから気の抜けない戦いになるだろう。
だがここまで来たら覚悟を決めて臨むのみ! すっすめー!
場内に入ると反対側からも騎士が入ってくる。客席からの声を聴く限り,相手は大臣の息子で若くして頭角を現した有望株のようだ。
「王子とはいえ手加減はできませぬ。本気で参りますのでお許しを。」
「当然だ。早く始めよう。」
ちょっとカッコつけた返事をした後,所定の位置に立つ。
「それでは! 試合開始!」
【サマディー兵が あらわれた!】
進行役の言葉と同時に相手の騎士が突っ込んでくる。
舐められているのか? だが好都合だと俺はブレードガードを積んだ。
目前にたどり着いた相手から振り下ろされる剣を冷静に受け流して,お返しに蹴りをお見舞いしてやる。
すると相手は明らかに目つきを変え,一度距離をとった。
さあどう来る……
こちらが様子をうかがっていると,相手は呪文を唱えた。
「”バイキルト”!」
それからもう一度突っ込んでくるので警戒しつつももう一度受け流そうとする。しかし……
「グッ!?」
想像をはるかに超える威力に吹き飛ばされてしまう。
呪文一つでここまで違うのか……ブレードガードを積んでなかったらまともに食らっていたかもしれない。いい呪文をお持ちで……。
「”メラミ”!」
しかも奴さん攻撃呪文で追撃してきやがった!くっそー俺はメラすらまともに使えないのに……
かろうじてそれを躱して,今度はこちらから接近していく。訓練の成果見せたらぁ!
相手は受けて立つつもりのようでこちらを待ち構えているが,俺は自分の剣の間合いに相手をいれる直前,それを横向きに振りぬいて炎をまとわせると,地面に突きたてた。
「”溶岩斬”!」
地面から噴き出した炎が相手に襲い掛かる。相手を心配したくなる威力だが,一応直撃しないようにはしてある。
しかしそれが良くなかったのか,相手はダメージを受けつつも後ろに跳んで距離をとってしまった。
しかしそれはおれにとって想定内だ!俺は容赦なく追撃をかける。
「炎よ!」
足に力を集めてその場で跳び上がった俺は,炎まとったままの剣を相手に向かって突き出して叫ぶと,剣にまとった炎の力が解放され,剣から噴き出た炎が相手を吹き飛ばした。
~~サマディー城・玉座の間~~
「実に見事な戦いであったぞハムザよ! ワシの期待以上のものであった!」
「は! ありがとうございます!」
玉座に座り心底嬉しそうに話す父上に返事をする。
試合は結局,相手が吹き飛ばされた際に気を失ってしまったことで俺の勝利で幕を閉じた。
きっかけは想定外の出場であったが,何とか勝利できて安堵するとともに,上級騎士を相手にあの大舞台で勝利できたという事実に嬉しさと興奮があふれてくる。
やばい超うれしい。すごくない? 俺すごくない ?やっぱ天才だったか! ふはは!
あ,忘れるところだった! 今期待以上って言ったよね? じゃあお願い聞いてよ!
「父上,ならば以前私が考えていると申し上げた計画についてお聞きいただけませんか。」
「うむ,無論そのことは覚えておるぞ。では聞かせてもらうとしようか。」
「は! それではまずは…」
俺は以前考えた計画を,知っていることが不自然な情報をカモフラージュしながら話した。
・
・
・
「ふむ,なるほどのう。」
俺が話し終えると,父上は顎に手を当てて考え始めた。
「まず,仮にその案を全面的に採用したとてそれらをいっぺんに進める程の余力は残念ながら今のサマディーにはない。」
これは想定内だ。そもそも,そこまでの余力があれば原作のサマディーはもっと強力な国だっただろう。
実際に国を運営している王の視点から見てどのあたりが可能なのかという思考になってくれただけでも提言の価値はある。
「それに東のホムスビ山地方面は現在安定しており,あまり介入するとちと面倒なことになりかねん。しかし,港やダーハラ湿原の開発であれば,将来性を鑑みても今からやってみる価値は十分にあるだろう。」
おお! そのあたりは結果もわりとわかりやすく出るだろうとおもっていたけど父上の視点でも一考の余地のある話だったか!
「ワシとしても現在のサマディーの食料事情には不安を抱えておった。今までは今一歩具体的かつ根本的な対策に踏み出せずにいたが,この機に本腰を入れて取り組むべきかもしれんな。それになにより,そなたたっての願いであることだしな! はっはっは!」
父上も現在のサマディーを変えたいという思いはあったのだろう。
考えればそれもそうだ。王とは常にあらゆる事態を想定して国の運営を行う役割を持っている。
しかしその判断の重大さから慎重になるのもまた当然で,今回の話は父上のそういった心理的な壁を乗り越える機会となったのかもしれない。
「うむ,ではさっそく大臣たちと話を煮詰めていかねばならんゆえ話はここまでとしておこう。そなたもこれからの訓練が一層厳しくなろうが励むのだぞ!」イソイソイソイソ
そう言って目の前から去っていく父上の背を見送る。
こうして俺の転生後初の大イベントは無事に終わったのだった。
自分でも思いましたが,戦闘シーン短っ!!
色々と難しいですね……。
それではまた!('ω')ノシ