我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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ゾルデ&オセノン視点の31話です! どうぞ!


31話 サマディーの騎士

~ゾルデ視点~ 

 

 

――ガリガリガリガリ!!!!

 

 

やはり剣を壁に突き刺すことで落下のスピードを調節できそうだな。この"はがねのつるぎ"でも強度は十分か……。

 

現在我は洞窟の西に存在した外に繋がる場所から出て洞窟の外壁……いや,崖と言ったほうがよいかもしれん……を降りているところだ。

 

ここからであれば洞窟の地下に繋がる場所を見つけられるかもしれんと思ってやってきたのだが……。

 

そう考えながら目を凝らして辺りの壁の表面を観察するが,どうやら横穴などは存在していないようだ。

 

となると壁が薄くなっている箇所を探すために叩いて回るのがよいだろうか。

 

我は一刻も早く馳せ参じなければならないのだ! あの方こそ我が人生の全てなのだ……!

 

そして我が君のご活躍をこの目で拝見しなくてはならぬのだ!!

 

そういった崇高な考えもそこそこに一旦止まろうとした瞬間,我はここに近づいてくる何かの気配を感じ取った。

 

!!!

 

我は両手に持った剣を壁に深く突き刺すと,剣を強く握ったままそれを支点にして壁を蹴って逆立ちの姿勢をとった。

 

その直後――

 

 

――ドガーーン!!

 

 

突如として崖の一部を突き抜けて,先ほど我の体があった場所にまで達するほどの大穴を空けながら1匹の魔物が飛び出してきたのだ。

 

「ギャアアアアアオ!!」

 

魔物はそのまま我の横を通り抜けて,崖に沿うように上へと移動していく。

 

それは非常に細長く巨大な体を持った龍の魔物,"スカイドラゴン"であった。

 

その魔物の体の表面は全身を硬そうな鱗が覆っており,体色は黄色い。

 

そして何よりも目を引くのが――

 

「両目が……赤い……!」

 

我の記憶では,スカイドラゴンははるか北にある"ゼーランダ山"に生息する魔物であり,その目は我ら人間と同じように白かったはず……。

 

その時,我の脳内には以前に我が君から伝えられた言葉が思い出されていた。

 

 

『……変わった目をした魔物の目撃情報が入ることがあれば教えてくれ。そいつは非常に危険な魔物やもしれぬのだ』

 

 

あの時にその命令を受けてより,情報を集めるべく動いていたものの終ぞ見つけることが出来なかったのだが……。

 

「まさかこの魔物が……!」

 

我が君が懸念するほどの危険な魔物だというのか……!

 

「ギャアアアアアオ!!!」

 

魔物はこちらの存在にようやく気が付いたらしく,猛スピードで急降下して襲い掛かってきた。

 

それにしてもこの魔物……あまりにも濃い邪悪なる魔力の気配……!

 

「……我が君,少しばかりお迎えに上がるのが遅れることをお許し下さい」

 

そこでこちらも気持ちを昂らせ,戦闘態勢に入る。

 

「ンフフフフフフ。さぁ,穢れた闇を癒しましょうぞ」

 

 

【スカイドラゴン・強が あらわれた!】

 

 

「"バイキルト"!」

 

我は魔物が接近してくるまでのわずかな時間で自身に強化呪文を唱えた。

 

「ギャアアオウ!」

 

しかし相手は関係ないとばかりにそのまま突っ込んでくる。

 

「"レムオル"……」

 

しかし我は接敵する直前姿を消し,それに驚いた魔物が一瞬だけ硬直したのを見計らってすれ違いざまに壁と直角に立つ姿勢をとって刀を振り上げる。

 

そして相手の目から体にかけて這うように両手の刀を用いて"振り下ろし"を放った。

 

「フゥンッ!」

 

刀そのものによる攻撃に加えて,衝撃によって間合いの奥にもダメージを届ける技だ。

 

「グギャアアオ!!??」

 

むっ……今の一撃でもう少し大きなダメージを与える予定だったのだが,思った以上に鱗が硬かったようで左目と首周りをいくらか削っただけに留まった。

 

我はすぐさまレムオルを解除して壁に剣を刺しなおして姿勢を安定させる。

 

この特殊な戦場を考えれば,長期戦は少し不利だといえるだろう。そして先ほどのレムオルを用いた戦法はもう使えないと思った方が良い。

 

あれは初見殺しの奇襲のようなものだ。

 

魔物の多くは人間より遥かに感覚が鋭いので,集中されるとレムオルを使っていようが発見されてしまう。

 

これらを欺くには,我が君が扱える"ステルス"を使うしかないが,我の力不足によってまだ習得には至っていない。

 

それもあって今の攻撃で大勢を決したかったのだが……。

 

「ギャオオ!!!」

 

流石にこのまま魔物が怒りに任せてもう一度がむしゃらに噛みついてはこなさそうだ。

 

そう考えていると,突然敵が壁から距離をとって上空で回転し始めた。

 

一体何を……?

 

すると魔物は口から炎を吐き出しながらそれを体に纏い,赤く光る炎の輪を作り出した。

 

赤く光る……輪?

 

そしてそのままこちらに向かって再び噛みついてきたのだ。

 

むっ,今はこの戦闘以外のことを考えている暇はないか……!

 

我の感覚ではあの炎は恐らくただの炎ではない。

 

あれを食らうことで受けるダメージは計り知れないだろう。運が悪ければそのまま地面に落下して死ぬことすらあり得るやもしれん。

 

「"ソードガード"」

 

我は攻撃を受け流そうと,片方の剣は壁に差したまま,その上に立って魔物に見せつけるように顔の前で剣を掲げて待ち受ける。

 

「ギャアアオ!!」

 

そして魔物が大口を開けた瞬間――

 

「"ドルモーア"!!」

 

魔物の口の中目掛けて闇の呪文を解き放った。

 

「グギャワアアアオウ!!??」

 

ンフフフ! 実に素晴らしき正直さよ!

 

体の中は炎で守られていないという読みは正解だったようだ。

 

今の攻撃には少し驚いたが,先ほどから観察していてわかった限りではこの魔物は他の魔物と比べても本能で動いている面が非常に強い。

 

ゆえにこちらのフェイントに面白いように引っかかるのだろう。

 

相手の反応から,今の攻撃は見た目以上に大きなダメージを与えたのがわかる。

 

そこで敵は早くもこちらに恐怖を覚えたのか,その場所から急降下してまたもや壁に沿うようにして我より下に逃げていく。

 

ほう,下に逃げるのは悪くない判断だ。

 

上に逃げれば壁を登って追われる可能性があり,崖から離れるように逃げれば壁を蹴って追われる可能性がある。

 

だが――

 

「ンフフフ。どうやら人間をまだ舐めているようだ……!」

 

我は足場にしていた剣を握ると,更に深々と突き刺す。そして柄の下を向いた側に足の裏を合わせて思いっきり蹴った。

 

――ドンッ!

 

そのまま我の体は魔物より速いスピードで急降下していき,どんどんと魔物に近づいていく。

 

魔物側もそれに気が付いたようで,途中で反転して襲い掛かってきた。

 

あちらも少しは学習したのか,口を閉じて目を細めてこちらに向かってくる。

 

……ンフフフ!!

 

「それで良い! 正々堂々は騎士道の本懐だ……! 最後くらいは清々しい戦いをしましょうぞ!!」

 

我は懐に残った片方の剣をしまい,空いた両手に新たな剣を顕現させる。

 

この二振りの名剣は我が君から副団長の任を授かった際に直々に頂戴した特注の剣である。

 

これでそなたを葬ってやろうではないか!!

 

「ギャアアアアアアアオオオオ!!!!!」

 

魔物は炎を纏った体当たりを仕掛けてくる。

 

「受けてみよ……我が絶技!!」

 

体の前で二振りの剣をクロスさせた状態で構えをとり,技の名前を唱える。

 

 

「"ダークスパイク"」

 

 

そして互いの攻撃が交差した直後――

 

 

「ギャ……ガ……」

 

「ンフフフ…!」

 

――ズルッ

 

スカイドラゴンの頭部が胴体から切り離され,そのまま地面に落下していく。

 

そして我はその顔についているヒゲを素早くつかんだ。

 

……それはなぜか?

 

……このまま落ちれば死ぬからだ。

 

 

――ドガーーン!!!

 

 

我は地面に衝突する寸前にスカイドラゴンの巨大な頭部をクッション代わりにして衝撃を吸収し,なんとか生還することが出来た。

 

そしてその直後に魔物の体は空気中の魔力に交じって消えた。

 

よし……これで我が君の憂いを1つ取り除くことが出来たであろう。

 

…………

 

待て……確かにあの魔物は熟練の騎士であっても相手をするのは難しいと思えるほどの力を持ってはいたが,我が君が危険視するほどの魔物だろうか……。

 

……よし,報告は当然するがこれ以降も情報収集は継続するとしよう。

 

さて,では魔物が出てきた横穴に――

 

そこまで考えたところで,我は1つの可能性に思い至った。

 

おもむろに壁の側まで歩いた後,そこから上を見上げる。

 

…………

 

……横穴があるのは……はるか上ではないか!!

 

くっ! 我としたことが戦いにのめり込み過ぎたか!!

 

「我が君……! 今に御身の元へ……!!」

 

我はすぐさま懐から新しい剣を二振り取り出して手持ちの剣と交換し,それを使って壁を登るのだった。

 

 

 

~オセノン視点~

 

やぁ皆! 僕オセノン!

 

「オセノン,何か感じるか?」

 

僕は首を振って,僕を肩に乗せている副長さんに人間の気配は感じないことを伝えた。

 

実は今僕たちは師匠から行方不明になっている人を探すんだっていう任務を受けているんだ!

 

僕も師匠みたいに強くなるためにいつも騎士の人たちと特訓しているから前よりずっと強くなったんだよ!

 

特に僕ら魔物は感覚が敏感だから捜索には持ってこいだからね!

 

だから今回も連れてきたもらえたの!

 

それにこの副長さんは師匠の周りの騎士の中でもすごく強くて僕も憧れているんだ。

 

だからもっとこの人からいろんなことを学ばなきゃ!

 

……あ! 今ビビッと来たよ!!

 

「ん? どうしたオセノン,まさか何か感じたのか?」

 

僕は頷いてから気配を感じる方向に腕を突き出した。

 

「よし,そこへ向かおう!」

 

うん!!

 

 

 

 

僕たちが少し進むと,綺麗な泉の近くで座り込んでいる1人のおじさんを見つけたんだ!

 

「おお! もしやそなたは…!」

 

「プッチ!」

 

やったぁ! これで任務完了だね!!

 

「……なっ! どなたか存じ上げませんが早くお逃げ下さい!!」

 

「なに……?」

 

え? ……あ! 何かが近づいてくるよ!!

 

 

――ドシーン! ドシーン!

 

 

わわっ! この魔物たちは”シーゴーレム”だ! それに4匹もいるよ!!

 

「!! こいつらは一体!? オセノン! とにかく戦闘準備だ!!」

 

「プチーー!!」

 

「くっ……! 間に合わなんだか……!」

 

魔物たちは僕たちを敵だと思ったようで襲い掛かってきちゃった!

 

よ,よーし! 僕も特訓の成果を見せるぞー!!

 

 

【シーゴーレムのむれが あらわれた】

 

 

「ふんっ! "バギマ"!!」

 

「オオォォ!!」

 

副長さんが素早く両手を突き出して呪文を唱えると,普通のバギマよりたくさんの竜巻が現れて一番近くにいた敵を吹き飛ばしている。

 

やっぱり凄いや! だけど僕も負けないぞ~!!

 

えーい!"ヒャダルコ"!!

 

「プッチー!!」

 

僕の周りに出来た大きな氷の塊が同じ敵に向かって飛んでいく。

 

だけど――

 

「オオォ……?」

 

ええ!? そんなぁ! あんまり効いてないみたいだ!!

 

僕が驚いていると副長さんが声を上げる。

 

「相性の問題だオセノン! 恐らくこの敵は氷属性の攻撃に耐性がある!!」

 

そうか……相手をよく見なきゃいけないんだ! よし,これならどうだ!!

 

えーい! "水しぶき"!!

 

「プチー!!」

 

僕は魔力を操作して敵の足元に水の塊をぶつける。

 

「オオォ!!」

 

やった! 今度はダメージを与えられたみたいで,敵のバランスを崩すことが出来たぞ!!

 

僕がそのまま追撃に移ろうとしていると,突然副長さんが声を荒げる。

 

「オセノン! 後ろに気を付けろ!!」

 

そこで僕が慌てて振り向くと,そこには僕が攻撃していたのとは別の個体が今にも拳を振り下ろそうとしている姿があった。

 

しまった! ちょっと浮かれていたせいで気が付かなかった!!

 

「オオォ!!」

 

わわ! どうしよう! もう今からじゃ避けれないよ!!

 

僕が体を丸めて耐える姿勢になろうとしていると――

 

「危ないぞい!!」

 

――ドーーンッ!!

 

敵の攻撃が当たる寸前に,僕らがさっき見つけたおじさんが間一髪のところで僕を抱えて避けてくれたことでなんとか無事だった。

 

まさか僕を助けてくれたの!?

 

「プチ~」

 

僕は手を合わせてお礼を言った。

 

「はは……無事でよかったわい」

 

そう言ったおじさんは,よく見ると酷い怪我をしているみたいで,そのまま動いて良いようには見えなかった。

 

「オオオォォ!!!」

 

こうしている間にも今攻撃してきた魔物がこちらに迫って来ており,少し離れたとこにいる副長さんは敵のほとんどを1人で相手していてすぐに来れそうには見えない……。

 

このままじゃ動けないおじさんがやられちゃうかもしれない……。

 

 

……いや,ここには僕がいるじゃないか! 今度は僕がおじさんを助けるんだ!!

 

 

僕はおじさんの手から抜け出して敵の目の前に立った。

 

「プッチィィ!!」

 

さぁ来い! 僕が相手だ!

 

「オオオォ!!」

 

すると次の瞬間,敵は力を溜める動作をした後,こちらに手を向けて"みずばしら"による攻撃を放とうとしてきた。

 

それを瞬時に察知した僕は,さっきと同じ……いや,さっきより強い魔力を込めて撃ちだした!

 

えーーい!! "てっぽう水"!!!

 

「プチィィ!!」

 

――ドンッ!!

 

お互いの水による攻撃がぶつかり合った。そして――

 

 

……最後に勝ったのは僕の方だった。

 

 

このまま……いっけえええ!!!

 

「プチィィィ!!!」

 

「オオオオォォォ!?」

 

 

――バゴンッ!!

 

 

僕の攻撃はそのまま敵に命中し,勢いのままに敵の体を打ち砕いて見事に撃破することに成功した。

 

やったよ! 僕でも出来たんだ!!

 

今度は周囲の警戒も怠ってはいない。どうやら副長さんの方も全部の魔物を倒したみたいだ。

 

「オセノン! 無事か!?」

 

「プッチ!」

 

僕はおじさんの方に手を伸ばして,それより早くこの人を治療して欲しいとお願いした。

 

「むっ……そなた怪我をしているではないか! 少し待ってくれ……よし,"ベホイム"!!」

 

それからしばらくするとおじさんも回復して,動けるようになった。

 

「ふぅ……助けて頂きありがとうございます。お二方のおかげで魔物にやられずに済みました」

 

「我らはそなたを救助するために参ったのだ。そなたが無事で本当によかった」

 

「プッチ!」

 

 

 

「そなたには色々と話を聞きたいところであるが,それは後にしよう。今はハムザ様たちとの合流を急がねばならん。だがそれにしてもどこへ向かえば良いのやら……」

 

そう言って副長さんは悩んでいる。

 

僕も何かないかと思って辺りを見渡してみる……あ! 泉の近くに何かあるよ!!

 

「プチ!!」

 

「おお! 何か見つけたのかオセノン!!」

 

僕は泉の近くまで行って,とある部分を腕で指す。

 

そこには少し壁の色が不自然で,周りと違う部分があったのだ。

 

すると副長さんはそこに恐る恐る近づいていき,その部分を軽く数回叩いた。

 

――コンコン

 

「これは…奥が空洞になっているようだ,もしや隠し通路か? ただかなり頑丈そうだ……どうすれば開けられるのだろうか……」

 

副長さんが困っていると,それを眺めていたおじさんが横から壁を睨みながら言う。

 

「少し失礼します……もしお許しいただけるならば私にお任せ下さいませんか? 実はこれと似たような仕掛けに見覚えがあるのでなんとか出来るかもしれません」

 

そういえば行方不明になっているのは冒険家だって師匠が言っていたような……それなら僕たちより詳しいかもしれない。

 

そしてどうやら副長さんも同じことを思ったみたいだ。

 

「……よし,ならばそなたに任せることにしよう」

 

「はい! ではなるべく急ぎますので早速……」

 

そうして隠し通路の仕掛けはおじさんに任せることになり,僕と副長さんはそれを少し待つことになった。

 

「それにしてもオセノン……あの魔物を1人で倒すとは中々やるな」

 

「プッチ♪」

 

褒めてもらえて嬉しいな~!

 

……でもさっきは危なかったな。おじさんが助けてくれなかったら負けていたかもしれない……やっぱりもっと強くならなくちゃ!

 

そうして僕は決意を新たにして,それを体で表したのだった。




※ゾルデの手の中に剣がいきなり現れたのは,普通にレムオルで見えなくしていただけです。え? なぜそんな面倒なことをしたかって? ……本人がカッコイイと思ってるからですよ。

それではまた!('ω')ノシ

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