~~サマディー王国・玉座の間~~
「ハムザよ! ダーハラ湿原までの街道に出没するワイバーンドッグを討伐してくるのだ!」
皆さんどうも! 突然とんでもないことを言われて困惑中のハムザ君です!
エ,ナンデ? 危ないからお外に魔物討伐は行っちゃいけませんっていう話は一体?
「驚いているようだな。しかしこれはそなたが魔物と戦う経験を積む良き機会でもあるのだぞ」
いや,まあそうなんですけどね。
それにしても最初は”ぬすっとウサギ”とか”キメラ”とかそこらへんが妥当だと思うんですがなにゆえそんな難易度高そうな魔物をご指名で?
「実は今進めておる港の建設計画だがな,近頃そのための物資の輸送ルート近くにたびたびワイバーンドッグが出没しておっての,そやつは日の出ている内でも活動する厄介なやつなのだ。ゆえにこの計画の発案者であり,戦力としても申し分ないそなたにこの任務を任せることとなったのだ」
あー。やっぱワイバーンドッグってそういう輸送に関する部分の悩みの種なんですねぇ。
それにしても前回の御前試合と違ってこれは真剣に考えて返答すべきだろう。なんせワイバーンドッグだ。
ゲームでは序盤のちょっと強いモンスターでしかないが,先生の話を聞く限りではこの世界では騎士を集めて討伐隊を編成するレベルの奴だ。
なんならあの後聞いた話だとそれでもけが人は出るらしいし,過去には若い騎士が殺された記録もある。
傷を負ってボロボロとかじゃない限り,いくら回復魔法があるドラクエ世界でも油断すれば死ねるモンスターである。
だが,あの父上がそのあたりがわかっていないはずがない。
てことはなにか裏があるんじゃねこれ?
すると父上の近くにいた大臣の一人が話し出す。
「もちろん王子ひとりで倒していただく必要はございません。騎士たちの中からワイバーンドッグの討伐経験のある者も含めて同行させる予定でございます」
うーん。つまりその人たちと一緒に倒せと。まぁそれならわからなくもないけどやっぱり初討伐がそれってのはなかなかに大胆な決断な気もする。
でも今まで頑なに反対していた父上からの提案だしせっかくのチャンスでもある。
よし! ここは乗っかかるとするか!
「わかりました。この私が父上の憂いを取り除きましょう!」
最近気づいたんだけど,こういうみんなが見てる時は格好つけれるだけつけとくと覚悟が決まるんだよね。
~~サマディー城・玉座の間~~
さて,遂に討伐に向かう日がやってきてしまった。
実は今日までのどこかで外に魔物を倒しに行く練習みたいなことが出来るのかと思っていたが,そんなことはなかった。
だが,今回共に向かう一人である討伐経験のある騎士との訓練では火竜の攻撃手段への対策なども練ることができた。
ちなみに経験者の彼のことは心の中で先輩と呼んでいる。別に深い意味はないんだけど,なんとなくね。
彼は優し気な顔をしたイケメンで,御前試合で戦った騎士ほどではないが若く,それでいて経験豊富な騎士らしい。
くっ……非の打ちどころがないじゃないか…なんだか負けた気分だぜちくせう……。
また道中は,出没が確認できた地点までの行程は途中で一泊する予定で,それまでに魔物と戦うことはできるだろう。
そこで感覚をすり合わせていくことにしよう。
「ハムザよ! 見事討伐を成功させて帰って来ることを期待しておるぞ! さぁ行くがよい!」
「はい!」
そう答えてから騎士たちを引き連れて城門に向かう。
そこでは,今回の討伐隊の件が広まっていたのか,城下の民たちが集まっており,いたるところから歓声が聞こえてくる。
「王子ー! お気をつけて―!」
「魔物をやっつけてきてくれよー!」
「こっちむいてー! ハムザ王子ー!」
「「「うおおおおおおおおお!!!!!」」」
よく考えたらこんな風に民たちの前にちゃんと顔を出したことってなかったかもしれない。
なんだかんだで城内で出会う人々はこちらに敬意を表しながらも比較的普通に接してくれていたような気がするから,ここまで熱狂的な反応を受けたのは初めてだ。
なんかテンション上がってきたーー! やべ,ちょっと恥ずかしくて口元がにやけてきた。耐えるんだ俺の表情筋!
しかもどんなリアクションをとればいいのかわからないので,なにかを言うことはせずに手を振るのみに留めておく。
ビビりだと笑いたければ笑うがいい! 初めてだから仕方ないよね! そうだよね!
「王子,用意が整いました。いつでも出発できます!」
お,先輩が出発の用意が整ったことを教えてくれる。
「よし! では行くぞ!」
俺たちは背中に民たちの歓声を受けながらサマディーの城下町を後にした。
~~サマディー地方~~
俺たち一行はサマディー城を出ると,そのまま東に向かって進路をとった。
俺にとっては初めての城外だ。
いやーそれにしてももっと何もない感じを想像していたけれど,意外と様々な地形に富んでいて見ていて飽きないな。
それにこちらを襲ってくるわけではないが,スカルライダーやキメラなどの魔物の姿も見える。
おお! 初魔物だ初魔物! いちいち構っていたら遅くなってしまうからここはスルーする(渾身の洒落)が,この先戦うこともあるだろう。
あとは進行方向の遠くの方には特徴的な岩のアーチがあったり,左の奥の方には砂が滝のように流れているところもある……いや危ないなあそこ。意味があるかはわからないが柵か何かを設置するべきかもしれない。
しばらく歩いたところで,道の脇からこちらに向かって何かが飛び出してきた。
「みんな避けろ!」
そう叫ぶと同時に俺もその場から飛び退き,警戒態勢をとる。
何かが地面に衝突したことで舞った砂煙が収まると,対象の姿が露わになる。
これはサボテンボー……いや,なんかまぶしいっすねえ。これサボテンゴールドだ!
「ギャギャ!」
どうやら明確にこちらを襲うつもりのようなので,遠慮なく今日の晩飯にしてやろうじゃないか!
【サボテンゴールドが あらわれた!】
俺はブレードガードを積むと,敵が転がりながら向かってくる。
「ふんっ!」
サボテンゴールドの突進を跳ね返し,一度距離をとると,騎士たちが集結する。
「こいつはサボテンゴールド!? 珍しいがなんとタイミングの悪い」
先輩の言う通りこれから任務が控えてるのに戦いたいモンスターではないかもしれない。
でもどうせ本番は明日だし何とかなるって!
「攻撃呪文を撃てる者たちはいっせいに放て! その後に私が突撃する!」
「「はっ!」」
俺基本的に近接要員だしね! 良いとこ取りじゃないよ! シンプルイズベスト!
「「”バギマ”」」
見事にバギマが命中し,敵の動きを封じる。この隙に近づかせてもらうとしよう。
地面を蹴って接近し,敵が身動きが取れなくなっているうちに技を放つ。
「”氷河斬”! ドルァ!」
冷気をまとった剣を肩に担いで一気に振り下ろすと敵は吹き飛んでいき,それを他の騎士たちが追撃していく。
ちなみにこの技はこの一月の間に新しく覚えたものだ。エンチャント系は練習が楽しいんだよなあ。
もう一つ,習得した技があるが,威力が高くてあまり練習できていないので使わない。
それにしても仲間と一緒の戦闘たのしー!っといけない。油断ほど愚かなことはない。
あいつって確か”しのおどり”とかいう即死技が使えたはずなので,なにもさせずに倒すのが吉だ。
先ほどの一撃と騎士たちの追撃で動きが鈍くなっている敵に今度は接近せず,騎士たちに向かって叫ぶ。
「巻き込まれないようにさがれ!」
騎士たちが敵から離れた瞬間,いまだ冷気をまとう剣を振りぬき,その氷河の力を解放する。
「氷よ!」
剣から放たれたいくつもの氷の斬撃が敵に飛んでいき,はじめの一撃で敵を氷漬けにしてから続く斬撃がその体を砕いた!
よし! 完全勝利!
「怪我人はいないか?」
「はっ! みな無事です!」
よーしよしよし。幸先いいね!
「よし,ならこのまま進むとしよう。まだ先は長いぞ!」
~~サマディー地方・キャンプ地~~
その後も進み続け,今日の目的地であるキャンプ地になんとか到着した。
……ここも近くに崖があるけど柵すらないよー。落ちたら自己責任ってこと? 子供に優しくなくない?
あの後も何度か魔物との戦闘があったが,正直サボテンゴールドと比べれば大した相手じゃなかった。
「王子の戦いは予想以上のものでした。初めての魔物との戦いとは思えませんでしたよ」
焚火の前で道中のことを振り返っていると,先輩がそう言ってくれる。
「ああ,自分でも手ごたえがあったと感じている。しかしこれも皆の働きあってのことだ。明日もよろしく頼むぞ」
「もちろんです。必ず任務を成功させましょう!」
やっぱり先輩は頼もしいな。
明日も行軍は続くんだ……。今日はもう寝るとするか。
じゃあみんな,おやすミミック……ZZZ
・
・
・
それからも俺たちは数日間かけて移動し,仲間同士で親交を深めたりしながら,大きな問題もなく進んでこれた。
そして現在,そろそろワイバーンドッグが出没したとされている地点に到達する頃合いだ。
「王子,このあたりからは少し警戒を強めながら進んでいくべきかもしれません」
「そうだな。皆! ここから先はいつ対象が出現しても不思議ではない! いつでも戦闘に移れるようにしておくのだ!」
「「は!」」
恐らく先輩は実質的なまとめ役のような役割を期待されての同行なのだろうが,一応この隊の代表は俺なのでこういった号令なんかは俺に任せてくれるし,俺もこの数日間で何度もやって慣れてきた。
今回のメンバーは下級騎士から上級騎士までいろんな人間がいるが,良いやつばっかりでホントに良かったよ。癖の強いやつとか扱いきれる気がしないんだが……
そんなこんなでそこからしばらく進んでいると,その時は突然やってきた。
「グオオオオーン!!!」
!! この時間帯にこの鳴き声,まさか――
鳴き声が聞こえた方向に顔を向けると,そこにある岩壁を超えて飛翔してくる影が姿を現した。
……二体も。
…………んんんんん!? 二体!? つがいか? え,そんな情報あった? おいサマディーの情報管轄! ちゃんと仕事しろ!
「2体だと! それに――」
先輩も驚いているがこいつらの片割れの方……でかい。
道中で遠目に見かけた奴のだいたい1.5倍くらいある。
やつらは動揺する俺たちの前に降り立ち,こちらを威嚇してくる。
どうする……ここは撤退も視野に入れるべきかもしれない。流石に想定外が過ぎる。
しかし敵はこちらに考える時間をくれるつもりはないようで,小さいほう(もう一体と比べればだが)がこちらに突っ込んでくる。
俺はとっさにそれを躱すが,そのせいで仲間たちと分断されてしまった。
そして目の前にはでかい方のワイバーンドッグ。
「王子!」
先輩の声が聞こえるが,俺は目の前の奴から目を離すことができない。
相対したからこそわかるが,こいつから逃げ切るのは現実的じゃないだろう。
なら,ここで何としても倒すしかない! それにこいつは危険だ。戦力がそろっている今倒さねばならない!
「お前たちにはそいつを任せる! こいつは俺に任せろ!」
「無茶です! いくら王子といえどおひとりでは!」
「なら早くそいつを倒して俺に加勢してくれ!」
……やべ,一人称を素で俺って言っちゃった。まぁみんな聞き流してるでしょどうせ。
さあ! やろうか!
【ワイバーンドッグ・大が あらわれた!】
本当だったらみんなと一緒に作戦通りに戦う予定だったのに準備が全部水の泡じゃねえか!
俺は素早くブレードガードを積む。俺の中ではもはや初手の基本と化している。
そして俺は珍しく先手必勝とばかりに相手に接近し,使い慣れた技を放つ。
「”溶岩斬”!」
御前試合の時とは違い,全力でお見舞いし,そのまま解放した溶岩の力をぶつける。
前方を炎が覆いつくすが,なんと敵はそれを耐えきり,お返しとばかりに飛び上がってから燃え盛る火球を吐き出してくる。
「はあっ! くっ……」
なんとかそれを弾くことには成功するが,熱波によるダメージを食らってしまう。
くっそ,結構痛いからホイミで回復したいが今は少しでもMPを無駄にはしたくない。
しかし正直なところさっきの攻撃が俺が撃てる最大火力だ。今までは攻撃をまともにぶつければ倒せる相手ばかりだったが,ダメージは確実にあったはずだがこいつは今のを何発かませば倒せるか見当もつかない。
やはり今までの相手とは違うことを改めて実感する。
「アオオオオーン!」
!! ぐあっ,体に力が入らん。これが特技としての”おたけび”か! なるほどただの鳴き声じゃない。
動揺する俺に敵は急降下して鋭い爪による攻撃を繰り出してくる。
まずいっ! にゅわーーー!?
ギリギリで当たる寸前に剣を滑り込ませたが,その場で踏みとどまることもできずに吹き飛ばされてしまう。
なんか俺戦いで吹き飛ばされてばかりだな…毎度毎度食らってる攻撃が重すぎる。
そのまま地面の上を転がるが,そこで体が元に戻る。
ハァ…‥ハァ……流石にまずい。俺が今まで強敵と戦えていたのは大きなダメージを受ける前に攻めまくって火力で押し切っていたのが大きい。
昨日初めて魔物を倒した程度のガキじゃ,タイマンでタフな魔物と戦うには耐久力のレベルが圧倒的に足りていない。
俺がここから勝利するにはやはりいつもの火力戦法しかないだろうが,溶岩斬では足りなかった。
現在まだ魔物相手に使っていない”あの技”は溶岩斬よりも強力だが,それでもまだ足りない気がする。
どうする……今の俺の手札で更なる火力を叩き出すにはどうすれば「グアアアアオ!」……チッ! とにかく試せるものを試すしかない!
「”氷河斬”!」
体中が痛むが気にしていられない。
これもダメージが入っているようだがまだ足りない。……!! 敵がもう一度おたけびの態勢に入ったので距離をとり,氷河の力を解放する。
氷の刃が飛び,ワイバーンドッグの体を凍らせていくが奴は足元に火球を吐いて氷を溶かし始める。
なかなか賢いじゃないか……褒めて遣わそう……。
疲れのせいで考えることがおかしくなってきたが止まるわけにはいかない。このままあの技も試す!
氷が溶け切ってしまう前に叩き込んでやる!
「ふんっ! ”雷光斬”!」
雷をまとった剣を手に一回転しながら勢いをつけ,横一文字に切りつける。
「ギャアアアアオ!!!!!!」
!! 今までにない程の不自然なまでの手ごたえ! 奴の体中に電気がほとばしり,明らかに無事ではない。
何故だ……そうか! 氷河斬が溶けた水が雷の威力を高めたか!
あの水は純粋な水と違い魔力がふんだんに溶け込んだもの,それが作用した故のこの威力!
ここで決めるしかない!
「雷よ!」
剣にまとった力を解放し,天から雷を落とす。
「グギャアアアオ!」
まだ耐えるか,だが問題ない! この雷は二連続で来るぞ!!
「はああああああ!!!!!」
今度は一度目よりはるかに大きな雷が降り注ぎ,ワイバーンドッグに命中する。
これでだめならホントにまずい! 頼む!
「グ……グォォ」
――ズシーン
よし,よおおおおおし! ざまあみろこの野郎! 俺はここで「やったか!?」とか言ってやらないからな!!
念のため警戒しながら確認するも,しっかりと息の根が止まっている。
はぁ〜〜何とかなったぁぁ。
いや,そうだ! 先輩たちは!?
俺があたりを見回すと,ちょうど先輩を含めた騎士が駆け寄ってくるところだった。
あちらも何とかなったようだ。いやあ,ホントによかったよ……ホントに。
「王子! ご無事ですか! こ,これは……!」
彼らはワイバーンドッグの死体を見て驚いている。
「今までで一番の強敵だった。正直立っているのもつら……」
……なんだ? 体が倒れていく……なんだか眠……い……。
そう考えたところで俺の意識は途絶えた。
魔物との戦闘シーン……これもこれで難しい……。
それではまた!('ω')ノシ