我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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悩んだ6話です……



6話 衝撃の真相

~~サマディー地方・キャンプ場~~

 

――パチッ パチッ 

 

皆さんどうも……まどろみの中にいるハムザ君です……。

 

うーーん? なんか焚火の音がする。ASMRかな? いい音じゃないですかー。

 

……じゃねえわ。

 

現実逃避をやめて体を起こすと,そこはテントの中だった。

 

これは俺たちが持ってきたテント…てことは安全とみてよさそうだな。

 

まだ少し体がだるいが立ち上がりテントの外に出ると,今は夜だとわかった。あたりを見回すと,そこにいた騎士と目が合う。

 

「おお!お目覚めになられましたか!皆!王子が目覚められたぞ!」

 

その騎士の声を聞いた他の騎士たちが集まってきて,口々に俺に話しかけてくる。

 

その内容は称賛や安堵など様々だが,俺もみんなが元気そうで安心したでござるよ!

 

「そのくらいにしておけお前たち! 王子はまだ目覚められたばかりだ」

 

そう言いながらやってくるのは我らが先輩だ。

 

騎士たちはその声に従い,離れていく。

 

流石先輩……カリスマでは完全敗北なんだが。

 

「王子,お疲れのところ申し訳ありませんが,王子が気を失われてからのことをお話しさせてください」

 

そうそう。おれっちもそこらへんめちゃめちゃ気になっており申した!

 

「よろしく頼む」

 

 

 

 

~先輩視点~

 

我々はダーハラ湿原方面の街道付近に出没が確認されたワイバーンドッグの討伐のために,我が国の王子であるハムザ様が率いる隊の一員として同行している。

 

出発前までは,私はなんとしてでも王子をお守りせねばという気持ちでいっぱいだったが,行軍中の魔物との戦闘や指揮を見て考えを改めた。

 

王子はまだお若いながらも既に王の素質を秘めた方だったのだ。

 

もちろん命がけでお守りしようという気持ちに変わりはないが,王子の実力は魔物相手でも我々以上に発揮されており,守られるだけの存在ではないことは明らかだった。

 

また,理由は不明だが,王子に同行するというのにこの隊に集まった者たちの中には実力はあれど,過去に命令違反するなど問題のある者も何人か配属されており,彼らの統制に頭を悩ませることを覚悟していたが,それは杞憂に終わった。

 

王子は部下の者たちともよく話し,信頼関係を築くことに長けていた。さらに戦闘の際は周りをよく気にかけ,皆を鼓舞する場面もあった。

 

それを見た皆も徐々に王子の魅力に引き付けられ,気づけばこの隊の結束力はわずかな時間でかなりのものに仕上がっていた。

 

その中でも私はワイバーンドッグの討伐隊に何度か参加した経験があり,王子からの相談を受けることが多かったため,この隊の副長のようなポジションに収まった。

 

我々は順調に進み続け,いよいよ今回の討伐対象の出現が予想される地点にたどり着いたが,そこに出現したのは2体のワイバーンドッグ。

 

「二体だと! それに……」

 

しかも一方はは私ですら見たことのないほどの巨体をもっていた。

 

ここはいったん態勢を立て直すべく撤退を進言しようとしたが,その瞬間に大きくない方の敵が突撃してきた。

 

それを躱すために後方へ距離をとるが,いかん! 王子と分断されてしまった!

 

「王子!」

 

王子は私の声に反応することはなく,巨大な方のワイバーンドッグと睨みあっている。

 

「お前たちにはそいつを任せる! こいつは俺に任せろ!」

 

!! 私は二つの意味で驚いた。

 

一つはまさか一人であの敵と戦うのかという驚き。

 

もう一つは王子が「俺」と言ったことへの驚きだ。

 

王子はいつも自分のことを私と言うが,今は俺と言った。この強い口調は普段と違い明確なる我らへの命令!

 

しかしここで王子を死なせるわけにはいかないと食い下がる。

 

「無茶です! いくら王子といえどおひとりでは!」

 

「なら早くそいつを倒して俺に加勢してくれ!」

 

王子はそう言って敵に向かっていく。

 

くっ! ならばいち早く目の前の敵を倒し,王子のもとへ向かわなければ!

 

「皆! 事前の打ち合わせ通りの作戦で戦うぞ!」

 

「「おお!」」

 

そこから我々は徐々に敵を追い詰め,大きな怪我人も出さずに遂に相手を地に伏せることに成功した。

 

「よし! このまますぐに王子の加勢に向かう! 全員ついてこい!」

 

王子はかなり移動したようで先ほどの場所にはいなかったが,しばらくすると見つけることが出来た。

 

「王子! ご無事ですか! こ,これは……!」

 

なんと王子のすぐ近くにはあの巨大ワイバーンドッグの亡骸があった。

 

まさか本当におひとりで倒されるとは!我々はまだ王子を見くびっていたらしい。

 

「今までで一番の強敵だった。正直立っているのもつら……」

 

王子はそういってふらつき,倒れそうになるもののその寸前でお支えする。

 

よく見るとかなりの怪我を負われている。この怪我で戦っておられたなんて…

 

私は自分の弱さに歯噛みしたが,そこに他の騎士が言う。

 

「副長殿! 早く王子の治療をせねば!」

 

そうだった! 自分の不甲斐なさを悔いるのは後だ。今は王子の身が何よりも優先だ!

 

「回復魔法が使えるものはすぐに王子の治療を! ほかの者は移動の準備とそこに倒れているワイバーンドッグの移送の用意を!」

 

今回の王子の活躍は国中に知らしめなければならない。彼はきっとこの国の歴史でも類まれな傑物になるだろう。その偉業を広めることも私の役割だと感じた。

 

 

 

 

~主人公視点~

 

なるほど。彼に聞いたところ,あの後治療しても俺が目を覚まさないので,ひとまずは安全なところに移動しようとなってここまで戻ってきたという。

 

……なんかごめんね! 不甲斐ないとこ見せちゃったけど今回頑張ったし愛想をつかさないでね!

 

「そうか。苦労をかけたな。すまない」

 

「いえ! 王子はあの魔物をおひとりで倒されたのですから無理もありません! むしろ我々の不甲斐なさを恥じ入るばかりです」

 

うんうん,君たち優しいね。俺もそう思うんだけど,もう一体と戦ってピンピンしてる君たちに言われたら嫌味に聞こえちゃうよ! そんなこと言わないってわかってるけど!

 

「今日はここで一泊し,明日の昼にサマディー城下に到着する予定を立てておりますがいかがでしょうか?」

 

先輩が言うならもちろんYESよ。そうしよう。

 

「ああ,任せる。」

 

「は! では王子はもうお休みください。雑事は我々が」

 

正直まだ疲れが残ってるから助かる。でもね,この流れでそれ言われたら(以下略)

 

 

 

~~サマディー城下町~~

 

ようやっと戻ってきたぞわが家よ! 俺は,俺はやり遂げたぞー!

 

城下の門をくぐった俺たちを待っていたのは出発の時を超えるほどの民たちの歓声だった。

 

帰ってくる俺たち一行の情報がどこからか入っていたんだろう。

 

 

「うおおおお! 王子ーー!」

 

「でけぇ! あんなのを倒したのか!」

 

「流石王子!」

 

「こっち向いて―! ハムザ王子ー!」

 

 

ふっふっふっ。行きと違って今度は堂々とこの歓声に応えることが出来るぞ! 俺たちの成果がちゃんとあるしね!

 

俺の手柄も仲間の手柄もまわりまわって俺の手柄である! まる!

 

それにしても父上たちは出迎えに来てくれていないのか……なんか寂しいな……。

 

「王子,このまま王にご報告に参りましょう」

 

そだね。じゃあ魔物の亡骸は騎士たちに任せることにして,先輩と共に王城へと向かうとしよう。

 

 

 

~~サマディー城~~

 

――ザワザワ ザワザワ

 

ん? 城に来たはいいものの,なんだか只ならぬ様子だ。何かあったのかな?

 

先輩! どう思う?

 

「これは……王子,少し誰かに聞いてみましょう。おい! そこの者! 城内が慌ただしいようだがいったい何があった!」

 

「ん? お,王子! よくぞお戻りで! 今いろいろと大変なことになっておりまして……詳しい話は玉座の間の王からお聞きください! では!」

 

なんだかあの兵も忙しそうだ。事情を知るためにも早く父上のもとに向かうとしよう。

 

 

 

~~サマディー城・玉座の間~~

 

階段を登って玉座の間に到着すると,そこでは父上と母上が言い争っている様子だった。

 

「今回のことは王としても親としても考えられないことです! あなたは自分の不手際であの子を殺すおつもりですか! わが子が大切ではないのですか!」

 

「確かに奴の企みを見抜けなんだのはワシの落ち度だ! しかしワシの決断はすべてハムザの糧になると思ってのこと! 大切に思っていないわけがなかろう!」

 

「事実として今回の件が起こったのです! あなたの気のゆるみ具合のひどさときたら……」

 

んんん??? なんか不穏なことも聞こえたけど喧嘩は良くないっすよ!

 

ただいま! 息子が帰りましたよー!

 

「父上! 母上! ハムザ・サマディーただいま帰還いたしました。」

 

すると二人は振り向き,こちらに駆け寄ってくる。

 

「おお! 息子よ! 無事でよかった!」

 

「ああハムザ! あなたになにかあったらどうしようかと!」

 

ぐおっ!! ぐ,ぐるじい……嬉しいけど離れて欲しいでござる……。

 

「ふ,二人とも……離して下され」

 

「……おおすまんかったな。そなたが無事とは聞いていたが詳しい様子はわからなかったのでな。そなたの無事を確認できたことが嬉しくてつい!」

 

「な,なるほど。しかし先ほどの会話を聞いておりましたがやはりなにか私の知らぬところで起こっている様子……いったい何が?」

 

「うむ。しかしワシはそなたには先に謝っておかねばならぬ。すまんハムザ!」

 

「お,おやめください父上! それよりも何があったのかを!」

 

親に頭を下げさせるとか一番つらいよこっちは! ほんとに何があったの!

 

「そうか。では順を追って説明するとしよう。まずはな……」

 

 

 

 

~サマディー王視点~

 

ワシは大国サマディーを治める王だ。ワシには自慢の息子がおる。あの子は強く賢いため,若いながらも早くもこのサマディーで頭角を現しつつあるようだ。

 

御前試合で見せた戦いも多くの者が見ており,息子ハムザの追い風となるだろう。

 

最近は外で魔物との戦闘経験を積みたいと言っておるらしいが,それも時期を見て許可するつもりだ。

 

今はあの子の提案から進んでいる港の建設と西への入植に関する話し合いをしておるところだ。

 

「それでは今回の会議はここまでとします。よろしいでしょうか王よ」

 

「うむ。では次回は更に進んだ部分まで話をするとしよう」

 

ワシは進行役の男にそう答え,この会議を締める。そのまま昼食を取りに行こうとすると声をかけられる。

 

「王よ。少し大切な話があるのですがお時間いただけませんか?」

 

ふむ。こやつはワシが信用する大臣の一人で,情報をはじめとしたさまざまな分野を管轄しておる。このものが言うのであれば大切な話なのだろう。

 

うーむ。久しぶりに家族で昼食をとれると思ったのだが仕方がない。

 

「わかった。場所を変えるとしよう」

 

そうしてその者から聞いた話は,サマディーからダーハルーネ方面に向かう街道に昼行性のワイバーンドッグが出没しており,討伐すべきだという話だった。

 

「なるほど。しかしなぜ先ほどの会議で報告せなんだのだ」

 

「はい。実は王にのみお話しするのですが,そのワイバーンドッグは手負いなようで,ここは王子に討伐隊を率いていただき,箔付けにするのは如何かと愚考しまして」

 

なるほど。手負いなどの情報は王子の箔付けと考えるとマイナスになりかねん。

 

ワイバーンドッグほどのモンスターであれば騎士を多くつけても問題ないし,手負いであれば危険も少ないであろう。こやつの報告であれば間違いないだろうしな。

 

王子の初任務には丁度いいかもしれん。

 

「わかった。明日の会議でさっそく諮るとしよう」

 

「承知しました。では私はこれで……」

 

その時の私は離れていくその男の笑みに気づくことはなかった。

 

翌日,朝の会議でその件を正式に決定し,昼にはハムザに伝えた。

 

最初は驚いていたようだが,最後には頼もしい様子で了承していた。流石はわが子だ。この任務の裏については知る由もなかろうに一切物怖じしておらん。

 

その後は同行する騎士の選別などを事情を知る例の大臣に任せ,遂に討伐隊の出発の日になった。

 

「ハムザよ! 見事討伐を成功させて帰って来ることを期待しておるぞ! さぁ行くがよい!」

 

「はい!」

 

そういって騎士を引き連れるハムザはもう立派な将に見える。

 

民たちに見送られる際も堂々とした様子で応えており,その様子に皆安心しておる様子だ。

 

ワシもそなたの帰還を心待ちにしておるぞ!

 

 

 

 

しかしその夜,一人の騎士がワシの元を訪ねてきた。

 

「うっ……王よ。大臣にお気を付けくだされ。奴は此度の魔物の情報を改竄しております。私は今まで牢に……まだ仲間が……ぐっ……」

 

その騎士はひどく衰弱した様子で,ワシにそう伝えると気を失った。

 

なんだ。この者の様子は尋常ではない。

 

ワシは大臣にばれんように側近の騎士に牢を調べさせると,なんと件のワイバーンドッグに襲われた騎士たちが大臣によって牢に捕らえられていたとわかった。

 

彼らによると,出没したワイバーンドッグは2体おり,そのうち1体は通常サイズをはるかに超える個体だったという。

 

なんだと……大臣は何のためにそんなことを……そういえば王子に同行した騎士たちには少し素行に問題がある者らもおったな。大臣が実力優先というので納得したが連携に問題は出ていないだろうか。

 

なんということだ……ワシはとんでもない過ちを犯してしまったのかもしれん。

 

次の日の朝のうちに大臣は捕らえられ,尋問したものの否定したため,ひとまずはそのまま監禁し,様子を確認にいかせた騎士の報告を待つことになった。

 

しかしその騎士はすぐに戻ってきて,城下の民の間で王子一行が巨大なワイバーンドッグを曳いて帰還している様子を見たという噂が流れていると報告してくる。

 

なんと! 襲われた騎士たちによるとそのワイバーンドッグは只ならぬ相手のはず! それを倒して見せたというのか!

 

ワシは安堵と驚きで固まってしまったが,そうとなると大臣の尋問も進むだろうと騎士に尋問を再開させると,自分の破滅を悟ったのか今回のことにとどまらず過去の汚職や自分と繋がる者の情報も吐きおったので,それでもまた大混乱することになった。

 

 

 

 

~主人公視点~

 

「では,その大臣が今回のことを仕組んだと」

 

「うむ。しかしそれを見抜けなんだのもそなたの討伐任務を決定したのもワシだ。これはワシの責任でもあるのだ」

 

その大臣って任務受けた時に「もちろん王子一人で~」とか言ってたやつか。しかしなんでまた…。

 

「しかしなぜそんなことを企んだのでしょうか?」

 

そう聞くと父上はため息をついてから言った。

 

「実はそなたが御前試合で戦った騎士が奴の子でな。奴は息子にそなたを倒させて息子の箔をつけるつもりが失敗した故,逆恨みでやったとのことだ」

 

えー。あの騎士はいい人なのになあ。俺が活躍した方があの騎士の株も上がると思うんだけどそうは思わなかったのか。

 

結局は息子も自分の出世の道具ぐらいにしか考えてなかったんだろうか?わからん。

 

そんな男が大臣やってるってこの国もしかしてヤバイ?

 

「奴の権力はなかなか大きなものでな。しかも奴の告白で多くの者の過去の罪状が明らかになってきておることからその裁きや空いた役職の編成などに忙しく出迎えにも行けなんだ。これからはより厳格な組織編制を作り上げようと思っておる。ハムザよ……本当にすまんかった」

 

oh……まあ俺的にはホントにあまり気にしてないし,正直そんな強い力もってた奴がやったんならしょうがないと思ってる。

 

何より俺にどうしろっていうんだよこの状況を! 俺に何が出来るんだよ! そこが一番困ってるよ! だけどまずは……。

 

「父上,まず私からは感謝をお伝えしたい。今回のこともすべて私を思ってのことだと十分に理解いたしました。それに失敗を素直に受け止め次を見据えるその姿勢,我らが備えるべき騎士道の一端を垣間見た気分でございます。私も此度の経験で更なる成長を遂げることが出来たと自負しております。ですからもうこれ以上自らを責めないでください」

 

何言ってるか自分でもよくわからないけどとにかく俺のためってのはわかったからありがとうございますってことを伝えたい! あともうそろそろこの話終わりにしましょう!

 

「ふぅ。まったくそなたのような息子を持ててワシは幸せ者だ。わかった。この件で自分を責めるのもほどほどにしておこう。そなたを困らせてしまうだけのようだからな」

 

「はい! 母上もこの件は私に免じて水に流していただけませんか?」

 

「あなたが良いのなら私はもうなにも言いませんよ」

 

うんうん。仲直りも成功!

 

トラブルもあったけど,結果的に王家の影響力を強めることが出来たと考えたらプラスでしょ!

 

これにて一件落着!!!




2人称視点を入れるとなるとこんな感じが限界でした……

それではまた!('ω')ノシ
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