我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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8話です。どうぞ!


8話 挨拶と視察

~~サマディー城~~

 

皆さんどうも! 成長したハムザ君です!

 

あれからまたしばらく時が経ち,俺も10歳になりました。これをあまり変わらないと感じるかずいぶん経ったと感じるかはあなたたち次第です!

 

そんなことはさておき,これまでの出来事について気になっているだろうから話していこう。

 

まず,ダーハラ湿原の入り口あたりに外海向けの港をつくる計画は順調に進んでおり,実際に船を使用して漁ができるようになった。

 

父上がつけたこっぱずかしい”ハムザリア”という町の名前も決まり,これから人も増えていくだろうからまだまだ発展していくだろう。

 

……発展してくれないと困るんです色々と!

 

それと,ナギムナー村との交流にも成功し,なんとその際にサマディー王国の庇護を求めてきたのだ。

 

どうやら数年ほど前に起こった大嵐の被害によって当時の村長を含めた村の男衆が大きく減ってしまった影響で,海の魔物の脅威にさらされていることによる申し出だったようだ。

 

それにしても数年前の大嵐ねぇ……なんだか原作の香りがするでござるな。そのあたりも介入していくか考えどころだな。

 

まあそれが原作で登場したエピソードの大嵐だとしても原作何年前の出来事か知らないから時期の把握という面ではあんま役に立たないけどね。

 

ナギムナー村の人々にとって今までは外からの人間は珍しかったかもしれないが,これからはサマディーとの交易が活発になることで変わっていくのかもしれない。

 

また,ハムザリアの港からの船が行う漁は主に西の海を活動場所として,ナギムナー村とは場所や採れるもので差別化を図っていきたいと思う。

 

例えばこっちではべっこうの素材となる海亀がたくさん捕れて,あっちは真珠がたくさん採れるみたいにね。

 

あと,あの町で商売をしたいという話が想像以上に多く,商船も少しずつ来るようになった。そのことも発展を後押ししてくれるだろう。

 

それらの理由であそこの港の重要度は高い。近海の安全確保のための軍港としても機能できるようにしていかなきゃならないしね。

 

続いてダーハラ湿原の開発計画に関しては,概ね順調だと言えるだろう。

 

ひとまずは道の整備を最優先に行っており,一部では原作のような三次元的な道を作っている。

 

原作では魔物が登りたい放題になっていたせいでその意義が迷子になっていたが,なるべく警備の兵もおいて安全な道にするつもりだ。

 

ダーハラ湿原は大きく分けて四つのエリアがあり,東から順番に,俺たちが港をつくっているエリア,比較的浅い部分で地面も多いエリア,原作ではダーハルーネに続く道がある広いエリア,霊水の洞窟に繋がるエリアが存在している。

 

現在は一つ目のエリアまでは探索が終わっており,二つ目を探索中だ。

 

更にそのエリアの西側で鉱脈が発見されたという報告も入ってきており,ある程度の探索が済めば採掘も始まっていくだろう。

 

また,実はダーハラ湿原の土は植物を育てるのに非常に適していることが判明したので,農業も行っていけるだろう。その研究が進めば,サマディーの地でも農業の規模が拡大できるかもしれない。

 

まあ西方への進出の成果はこのくらいで良いだろう。

 

実はサマディー国内の産業も以前より成長を遂げており,様々な分野で成果が出始めているのだ。

 

それについても話していきたいところだが,少し待ってほしい。

 

なぜなら俺はこれからその成果を自分の目で確認するためにサマディー国内の視察に向かうからだ。

 

どうせならそれを見ながら説明した方が分かりやすいだろう。

 

「王子,まずは城下の視察からとなります」

 

今日の予定を教えてくれるのは先輩で,随分とそのポジションに馴染んだものだ。

 

俺は実力が認められたことによってあれから城壁外での魔物の討伐任務をはじめとした危険な任務も何度か受けているが,どうやら王子隊というのは父上公認の俺の部隊になってしまったようで,彼らは任務の度に俺と行動している。

 

俺たちは自由に動けるように大きな権限を認められていて,なにか事件が起これば西へ東へと駆け回る日々を送っている。

 

そのせいかおかげか,部隊の皆の実力もどんどん高まっていき,今ではサマディーでも屈指の練度を誇る部隊へと成長した。

 

……これって俺の不甲斐なさをカバーするためにみんなが強くなったとかじゃないよね!? そう言ってよ!

 

皆なんでもできるから面倒なこととかつい任せちゃうんだけどやめるべきか? ……でもそれで皆が成長できるならWIN-WINだし大丈夫ってことにしておこう!

 

「たしか最初は研究所だったか?」

 

「ええ,例の病の特効薬の開発は完了しましたが,今は原料の供給が安定し次第量産体制に入れるように,その準備とコスト削減方法の研究中という報告です」

 

先輩とそんな話をしている内に一つの建物に到着した。

 

入り口近くには案内を任された研究員が待っており,彼に促されて中に通される。

 

ここは元はかなり小規模で予算も少なかったが,俺が父上に話をつけて予算を回してもらい,規模を拡大したのだ。

 

こういった研究部門は成果がなかなかでないことも珍しくなく,必要な費用も少なくないので今まで重視されてこなかったが,ここに予算を回せるようになったのは資金に少しは余裕がでてきた証拠だろう。

 

ここが最初に出した成果は,このサマディー地方でも長い間猛威を振るっていた感染症に対する特効薬の開発である。

 

この世界にも状態異常以外の病は当然ある。

 

これはあまり感染力の強い病ではないが,発症すると死に至ることもある恐ろしい病で,治療法は確立されていなかった。

 

感染力が強くないことから今まで大きくは騒がれていなかったが,外国でも感染者が出ている病なので量産できれば多くの人を救うだけでなくこの国の輸出品としても有用になるだろう。

 

ただ,薬の原料となる植物はダーハラ湿原で見つかったもので,安定した供給と輸出が可能になるのはまだまだかかるだろう。

 

しかし本格的に動き始めてから早い段階で結果を出せたのは良かった。これで他の研究に対する予算も継続できるだろう。

 

医学・薬学以外のも,先ほども言ったダーハルーネの土壌の研究や他にも研究がなされている。

 

こちらも既に騎士団や旅の者でも使えるものとして,サマディー地方に出現する"からくさネズミ"というモンスターが落とすばくだん石を加工して作った緊急時に居場所を伝えて救助を求めるための花火や,過酷な環境でも食料の長期保存ができる魔法のバッグなどの成果が出ている。

 

これからも頑張ってくれたまえ!

 

それらの様子を研究員の説明を聞きながら確認した後,研究所を後にする。

 

「次はサーカスとウマレースですな!」

 

先輩は楽しみなのか声が弾んでいるが,ウマレースなぁ……。

 

以前にウマレースに出場した際に残した成績のせいで,俺がレース場に行くだけでめちゃめちゃ目立つのだ。

 

そのせいで俺はプライベートでウマレースを見に行けなくなったんだよ!

 

今回は一応仕事なので行きますけどね!

 

「どちらから行くのだ?」

 

「ウマレースからになります。サーカスはもう少し遅くの方が活気がありますしね!」

 

……そうですね〜。

 

 

 

~~サマディー城下町・ウマレース場~~

 

今回はゴールド杯の難しい方のレースに視察に来ている。

 

レースの様子だけじゃなくて,観客や運営の様子なども見ておかなくてはならない。

 

レース場は以前にも増して活気があり,聞いたところによると俺の活躍に影響されてかレース熱が爆発しており,観戦者だけでなく出場希望者も増えているそうだ。

 

そう考えると俺の頑張りも無駄ではなかったのだと思えて少しだけ誇らしくなる。

 

「あれは王子!?」

 

「なんと!? ということはやはりこの一戦は注目のレースじゃのう」

 

「こっち向いてー! ハムザ王子ー!」

 

ぐおお! そんなに反応しないでくれ! ほら! 選手たちもこっち見てるじゃん! 邪魔しに来たわけじゃないんです信じてください!

 

「王子の来訪は選手たちにとってもいい刺激になるでしょうし定期的な視察はいいことかもしれませんな」

 

ならねーよ! 緊張させるだけだよ! 授業参観より迷惑してるよきっと!

 

「そろそろ始まるようですな!」

 

俺の心の叫びをガン無視して先輩は言う。

 

俺はその様子を嘆きながらも真面目に見ることにする。

 

観客席の人数は以前のゴールド杯と比べても多くなっている。中でも注目したいのが,おそらく国外から来たであろう装いの者たちが増えていることだ。

 

彼らの多くも札を持っていることから賭けに参加しているんだろう。やはり港を通じて人の往来も活発になった良い影響が出てきている。

 

しかし,そういった人々が増えるということは国外からの犯罪者やスパイに対する警戒も強めていかなければならないということでもある。

 

しかしそういう者たちを完全にシャットアウトしようとして入港の条件を厳しくしすぎると今度は普通の人々も寄り付かなくなってしまうので,そのあたりのバランスが大事だ。

 

港に入る荷や人の検閲だけでなく,内側に入られた際に問題を起こす前に捕らえられるように警備の質も上げていかねばな。

 

だからというわけではないが,騎士団はもっと役割ごとに特化した育成を行うことも検討するべきかもしれない。

 

もちろん幅広くこなせるのはいいことだが,対魔物の訓練を主に行う騎士や,要人や建物の警護のための訓練を主に行う騎士といった具合にそれぞれの精鋭を育てたい。

 

まあこれもぼちぼち考えていくとしよう。

 

そんなことを考えている間にレースは終わり,一位は見事に目標記録を達成しての勝利だった。

 

優勝者は馬上で大喜びしている。

 

緊張させちゃっただろうにすごいな。彼は大物になるかもしれん。

 

「良いレースでしたな! それでは次はサーカスを見に行きましょう!」

 

お! サーカスね! 俺はサーカスも好きだし楽しみだ! ここのサーカス団長とも仲良しだしね!

 

 

 

~~サマディー城下町・サーカステント~~

 

王城やウマレース場と並んで今のこの国のシンボルともいえるだろうものがこのサーカステントだ。

 

かつては旅のサーカス団だったが,サマディー王からの一度目の定住の誘いを断ったにもかかわらず,二度目の来訪時にわざわざ専用テントを用意してもらえていたことに感動して国のお抱えサーカス団になったという歴史がある。

 

ここのサーカスも以前から盛況だったが,観光客の増加などによって席をとるのがさらに難しくなってきている。

 

団長は才能ある人物をスカウトして団員を増やそうとしているそうだが,まだまだ忙しい状態は続きそうだという。

 

また,近頃は積極的に外からゲストを招いたりして演者たち同士でも切磋琢磨して腕を磨いているようだ。

 

ちなみに今回は完全に抜き打ちの視察だ。

 

ただ,そのために一般のルートでチケットを入手したので俺と先輩の分だけしか用意できなかった。

 

申し訳ないが他の騎士たちにはどこかで時間をつぶしておいてもらうことになる。文句なら先輩に言ってね!俺を恨まないでおくれ!

 

「こういう狭い空間だと何かあった時に対応しにくそうで不安になるな」

 

「ふふっ。最近は気を張る任務も多かったですしね。ですがここの警備は厳重ですし,なによりこんな楽しむ場で無粋なことをしでかすやからなんぞおりませんよ」

 

なんかフラグみたいだなーと思う人もいるかもしれないが,この世界の人々はホントにこういう場で問題を起こしにくいのだ。

 

たまにとんでもない大悪党が現れたりするわりには意外とこの世界の犯罪件数は多くない。

 

……もちろん土地や場所にもよるだろうけど。

 

さて,ここでも周りをチェックしてみよう。ウマレース場と同じように人が多くて外国からの客も多いようだが,あちらとは違う点もある。

 

まずは子供が少ないことだな。サーカスは夜にやっているので子供が見に来ることはウマレースと比べると多くない。もしこの先朝や昼の開催があるとしても,それはサーカス団が進めている団員の増員を待たなければならないだろう。

 

もう一つは身なりのいい人物が多いことだ。原作でもそうだったがこの会場は商人の商談や貴族の密談にも使われることがあり,サーカス側もわかっているので,それが警備の厚さの理由の一つでもある。

 

特に今は商人が多く,交易の活発化の影響が感じられる。

 

「お集まりの皆さん! 今宵はわがサマディーサーカスにお越しいただき誠にありがとうございます! 本日はゲストに旅の一座を迎え――」

 

どうやらショーが始まるようだ。せっかくの機会だし純粋に楽しませていただくとしよう。

 

……というよりそろそろ疲れたので普通に見させてもらいまーす!

 

 

 

 

サーカスは大盛況の中で幕を閉じ,俺と先輩はサーカス団とも少し話をしてから残りのメンバーと合流した。

 

ちなみに残りのメンバーと言っても,俺たちは王子隊全員で今日の視察をしていたわけではない。

 

ほとんどの者たちは城で訓練するなりそれぞれの任務についてもらっているため,今回同行していたのは数人だけだ。

 

任務には適切な人数というものがあるからね!別に仲間はずれにしてるわけじゃないよ!

 

ちなみに俺と先輩以外の同行者はじゃんけんで決まった。この世界にもじゃんけんってあるんだよ。

 

「今日はもう暗くなってきましたし残りの視察は明日になりますな」

 

「そうだな。では今日は城までで解散するとしよう」

 

「王子! サーカスはいかがでしたか?」

 

「また行きたいと思うくらい面白かったぞ。特に最後に出てきた女性の芸は――」

 

「あの王子が大爆笑でしたからね」

 

「「ええっ!?」」

 

そんなたわいもない話をしながら俺たちは帰路に就いた。




端折りすぎ……そんな声が聞こえるような聞こえないような。恐らく気のせいですね!

それではまた!('ω')ノシ
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