我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

9 / 37
9話です! どうぞ!


9話 流石に想定外

~~サマディー地方~~

 

皆さんどうも! 馬上で風を切るハムザ君です!

 

今日も昨日のメンバーを率いて視察任務であります。

 

任務とはいえこんなに気軽に外に出られるようになったのは今までの実績のおかげだと思うが,最初は城外に行くことも許してもらえなかったことを考えるとなんだか不思議な気分でもある。

 

ちなみに今向かっているのはサマディー国営の農園で,そこで栽培されている作物の様子を見に行く予定だ。

 

あそこでは研究所とも連携して,ここの気候に適した品種の開発や栽培,この地域に自生している植物の栽培方法の効率化や確立などに取り組んでいる。

 

余談だが,この世界に来てからの俺の好物であるサボテンステーキの質の向上のためにサボテンの研究を優先させているという秘密があったりする。

 

俺はサボテンステーキという料理を初めて食べたときはあまり期待していなかったが,一度食べてからはなぜか病みつきになってしまったのだ。

 

前世ではどうだったかわからないがここでは平べったいサボテンも柱型のサボテンも食べる。

 

それぞれ食感や風味に違いはあるが,俺はどちらも好きだ。

 

ただ,俺はクールで余裕に溢れた王子を演出したいので,自分の食欲のために優先度を上げるなんていうはしたない考えがバレたくはないのだ!

 

優先させる言い訳としては味の向上によって消費量が増えたら儲けになるとか観光客に砂漠の国らしい料理を味わってもらうためだとか適当なことをいろいろ言った記憶があるが,結果として承認されたのだから問題ない!

 

サボテンの話をしているうちに無事に到着し,ここでも担当者から話を聞きながら見て回ることになった。

 

まずは品種改良に関してだ。

 

やっぱり穀物は消費量が多いのでなるべく自国内で供給を賄えるようにしなければならないが,今までは育てられる場所がかなり限られていたことと,天候によってはそこそこの頻度で収穫量が悪い意味で大変なことになることなどの問題を抱えているので,どうにかしてこのあたりの問題を解決したい。

 

そういう理由もあって重要度はかなり高い。……あとサボテンの方もかなり大事!

 

現在は凶作時でも十分に育ったもの同士をかけ合わせたり,他の地域のものとかけ合わせたりしているらしい。頑張れ!

 

次にこのあたりに生える植物の栽培方法の効率化や確立などに関してだが,先のと比べるとこちらの方が順調と言えるだろう。

 

サンドフルーツなどの食べられるものに限らず,サバンナウッドやあやかしそうなどの資材や素材になりそうなものも対象としている。

 

中には今までは自生しているものを採取することでしか手に入れる手段がなかったものもあるが,ここの研究で栽培方法を研究し,既に国内で広める用意が出来ているものもあるくらいだ。

 

ここら辺がうまくいってくると,真似されにくいという点では砂漠の環境というアイデンティティは強みになってくるはずだ。

 

さらに,ここではやくそうや毒消し草,まんげつ草などについても研究している。

 

これらはこの世界において非常に広く流通しているものではあるが,その需要は常にあるので育てていて損はない。

 

ここではそれらより効力の高く”上”や”特”と名前につくようなものを栽培しようとしている。

 

歴代ドラクエ作品の勇者達は錬金釜を用いて作ったりしていたが,正直なところ意☆味☆不☆明なので,地道に模索していくことにした。

 

これらの高位の回復植物は市場で流通自体しているものの,その多くは採取によるもので大量生産しているのは聞いたことがないので,成功すれば普通に偉業になるだろう。

 

そんな感じで農園内を案内されていくが,それらとは別に俺が思ったのが水がとても綺麗だということだ。

 

これは'サバンナの水'という名前の水で,これも実はサマディーの特産品であり,飲んでよし使ってよしの素晴らしい水だ。

 

しかも魔法使いたちの間では不思議な力を持っていると言われているらしく,そういった職業の人々には重宝されている。

 

この世界には魔法的なあれこれがあるが,そういった方面からのアプローチは俺にはどうも向かないので,そういったところは実際に研究したりする人々任せになっている。

 

適材適所ってやつだね! 俺の好きな言葉だよ!

 

一人でできることなんてたかが知れているというのはこっちの世界にきてからもしょっちゅう感じているので,これからも先輩たちには頼らせてもらいますぜグヘヘ。

 

いい感じにまとまったところでそろそろ城に帰るとしますかね。あ,その前にここの人たちに挨拶してこう。

 

「うむ。諸君らの働きはこのサマディーの未来を担う大切なものだ。重圧をかけたいわけではないが,期待しているぞ」

 

「ありがたきお言葉。粉骨砕身の思いで臨ませていただきます!」

 

うんうん。こういう言葉はタダだからね! いくらでも言ってあげるよ! これは本音だけどね!

 

よし! 今日はもうおしまい! 帰ろう皆の衆! 俺についてこい!

 

「さて,ではこのまま城に戻るとするか」

 

「そうですね。あとは城下の孤児院のみになりますか」

 

……わ,忘れてた~。そうかまだあるんだった。口に出してなくてよかった~。

 

「……そうだな。よし! 行くぞ!」

 

そう言って相棒に乗ると,俺たちは駆け出した。

 

俺が今握っている手綱は以前のウマレースで手に入れた”おうごんのたづな”だ。

 

ウマに乗るときにこいつを使うと調子がいいんだ……。

 

……冗談はさておき,この手綱はホントにすごい。なんといっても相棒が全然疲れない。

 

以前の大会での勝利は接戦の末のものだったが,これを使った俺と相棒は比喩抜きで他を圧倒する世界最速の人馬だという自信がある。

 

……そう! なにかあってもすさまじいスピードで逃走することが選択肢に入るのだ!

 

逃げるのは騎士道が~とか思うかもしれないが,それは状況によりけりだ。他人のためなら逃げることもありなのだよ! まる!

 

ちなみに過去に半分悪ふざけでこれを自分に巻きつけたら疲れないのかを試したことがあるが,とんだ徒労に終わった。

 

……それにしても誰にも見られていない時で良かった。流石にあんな情けない現場を見られていたらしばらく落ち込んだだろう。

 

はいそこ! もう散々見られてるなんて言わない! 俺の気持ちの問題なの!

 

このアイテムにはなにか俺が感知できない不思議な力が宿ってるんだろうが,仕組みはさっぱりだ。なにせ研究所に出した時も分からなかったんだから俺にわかるわけない。

 

だからこいつの量産は早々に見切りをつけた。やっぱり優先順位ってものがあるのでござるよ。

 

……それにしても暇だな~。

 

部隊の皆も俺が全速力ではないとはいえついてこれるくらいのスピードで走ってるわけだからかなり速い。

 

そんな状態では魔物も襲ってきたりすることはほとんどないし実に暇である。

 

何か起こったりしないかな~。

 

――パーン

 

え? 今何か音しなかった?

 

「ん? お,王子! あれをご覧ください!!」

 

うおお!? びっくりした! じょ,冗談じゃないですかやだー。トラブルとかないにこしたことないよホントに!

 

部隊の一人が示した方に顔を向けると――

 

……いや,なにもない。なにもないんだ! でかいサソリとそれに追われてるやつなんて見間違いだ!

 

「あれはまさか砂漠の殺し屋デスコピオン!? 王子! 如何しましょう!」

 

悲報)見間違いじゃなかった

 

出てくるにしても魔蟲のすみかとかなんじゃないの!?

 

如何するって言われても! 襲われてる人は助けなきゃならんでしょうが。(内なる騎士道精神)

 

くっそー! 少人数で来ていたことが悔やまれる!

 

「俺が奴に当たる! お前たちはその間にあの者を救助しろ!」

 

デスコピオンさん出てくるのが早いよ! 数十年に一回出てくるかどうかならそろそろでもおかしくないとは思ってたけど!

 

一応この中では俺が一番強いんだからあいつとやらなきゃならん! だけど代わりたい人がいたら交代してあげなくもないよ? チラッ

 

「はっ! ご武運を!」

 

やっぱりね! 最近の俺の扱いなんてこんなもんさ! ワイバーンドッグの時に俺を心配してくれてた先輩はどこへ?

 

そ,そうだ! 皆俺への信頼度が上がったんだな! そうに違いない! そういうことにしておこう!

 

「シャアアアアア!!!!!」

 

まだ遠いが、こちらに気づいたらしいデスコピオンが標的を俺に変えたようだ。

 

さあ! やろうか!

 

 

【デスコピオンが あらわれた!】

 

 

俺は相棒に乗ったまま敵との距離を詰めていく。

 

その間にいつものブレードガードを積んでおき,ここでさらに呪文を重ねる。

 

「”バイキルト”! ”スカラ”!」

 

その瞬間,体中の筋肉が熱くなりこうげき力としゅび力が格段に上昇したのがわかる。

 

この呪文は何かと縁があった御前試合で戦った騎士から教わって習得したものだ。

 

彼はいくつもの呪文を習得した魔法騎士とも呼べるタイプで,俺は彼から補助呪文や回復呪文などを吸収することができたのだ。

 

……攻撃呪文の方はあまり芳しくないが。

 

ちなみに彼は父親の件で責任を感じて騎士をやめようとしていたのだが,優秀な騎士はこれからさらに大切になってくるのだからとなんとかして踏みとどまらせ,ちゃっかり自分の部隊に取り込むことに成功していたのだ。やったぜ!

 

うむ。こんなことを考える余裕があるのは調子がいい証拠だ。

 

まだ相手との距離がある状態で俺は剣に氷の力をまとわせて敵に向かって一気に振り上げた。

 

「ふんっ!!」

 

剣から飛んだ氷の斬撃が敵に命中し体の一部を凍らせる。

 

技の発動は以前よりかなりスムーズになり,威力も増している。

 

だが敵は体が大きいからあまり凍らせることはできないか……一応は以前よりパワーアップしたはずなんだがなぁ。

 

まあ良い。凍らせてもすぐに割られてしまうが,そのまま相手の足元を中心に凍らせていって動きを鈍らせ,そのすきに相手の背面を拝める位置に移動する。

 

そのまま敵の背の紋様めがけて剣に残った冷気すべてを込めた斬撃を放つ。

 

「はあっ!!」

 

それを無防備に受けた敵は背中が氷に覆われてしまう。

 

今回の氷はかなり頑丈だ。なんとか砕こうとしているようだが先ほどまでとは違ってしばらくは砕かれないだろう。

 

よし。これで奴の使う厄介な”あやしいもんよう”による混乱の状態異常を封じることが出来たはずだ。

 

以前の任務中に混乱状態になったことがあるが,あれは回復要員の仲間も対策もない状態で絶対に戦闘中に陥ってはならない状態異常の一つだと感じた。

 

今回のような戦いでは食らった瞬間にほぼ負けが決まりかねない。

 

しかも俺の耐久は相変わらずの紙なので,ダメージで解除みたいなことをしようとすると普通に死んでしまう!

 

だからやっぱり一方的に殴り続ける戦い方をせざるを得ないのだ! ほかの奴らとは心の余裕が違う!(もちろん悪い意味)

 

先ほどから攻撃してみて分かったのが,奴は固い装甲に身を守られてはいるが魔法的な攻撃に対する耐性があまり高くない。

 

つまり成長した俺の魔法剣による攻撃は奴に十分な有効打になる!

 

なのでせっかくこの前に覚えた“渾身斬り”や“ぶんまわし”より魔法剣を多用すべきかもしれない。

 

だがやはり大きなダメージを通すならば接近と地面での踏み込みは必要だ。俺は相棒の背から降りて敵に向かって駆けだすと,剣に炎をまとわせて敵を斬りつけた。

 

「シャアアアア!!」

 

よし! 効いているぞ。このまま熔岩解放を行い追撃しようと跳び上がる。しかし……

 

敵は素早い動きでこちらを向くと,俺が跳び上がると同時にこちらに”サンドブレス”を吐き出してきた。

 

「なにっ!?」

 

俺は躱そうとするが空中で思うように動けずにまともに食らってしまう。

 

しまった! 奴はダメージに大げさに反応して油断を誘っていたのか!

 

俺はダメージと共に追加効果の幻惑もしっかりと食らってしまい,敵との距離感をつかみにくくなってしまう。

 

俺はブレスを受けた勢いのまま砂の上を転がった。

 

さらにその直後,敵が大振りの攻撃を繰り出そうとしているのが見えたので躱そうとする。

 

しかし十分に余裕をもって躱したつもりだったが,幻惑のせいか躱しきれずに攻撃が直撃してしまい,大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐおっっ!!」

 

オエエエエエ!! ……あっぶな!今一瞬意識とびかけたし吐きかけた! この明らかに尋常じゃないダメージ……まさか痛恨の一撃か!?

 

「べ,”ベホイミ”」

 

すさまじいダメージに,自分に回復呪文をかけるが完全に回復しきれなかった。さらに幻惑状態はいまだ継続中だが俺は”マヌーハ”を覚えていないので治すことができない。

 

毒を治す"キアリー"や麻痺を治す"キアリク"は覚えているのだが……。

 

幻惑の危険度を低く見積もっていたから習得を後回しにしていたのがここで響くとは。

 

この少しの間で一気に形勢が不利になってしまったが,先ほどの俺の攻撃が効いていたのは確かなようで敵には大きな傷ができていた。

 

よし! 攻撃が当てられれば十分に勝機はあるんだ!

 

幻惑で視界があてにならないと感じた俺は目を閉じて体中に意識を集中した。

 

相手の気配を感じることができれば幻惑なんて意味ないはずだ! ここはドラクエ世界なんだからそんなに突飛な発想ではないはず!

 

もっと精神を落ち着かせろ。集中するんだ。もっと深く深く。

 

……すると俺は体中の神経が研ぎ澄まされ,力がみなぎってくる感覚に襲われる。

 

なんだ? 明らかに異常だが,今は好都合だ。

 

俺はデスコピオンが近づいてくる気配を感じ取り,そちらに向き直る。

 

俺はそのまま剣を構えなおし,こちらへ向かってくる敵にどんどんと近づいていく。

 

敵は何かを感じ取ったらしく,早く俺にとどめを刺そうとすべてのツメを使ってラッシュ攻撃を繰り出してきた。

 

だが俺はそのすべてを躱すか受け流しながら歩みを続け,敵との距離を着実に詰めていく。

 

先ほど大ダメージを食らった敵であるにも関わらず,今の俺は相手を不思議と脅威には感じていなかった。




なぜだろう……自分はもっと平和なところを書きたいのですが脳内の主人公が戦いたがる……。

それと活動報告なるものを少し書いてみました。

それではまた!('ω')ノシ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。