某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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巾着切りの士族 急

ごろつき長屋の騒動は比留間兄弟の依頼相談に来たという言葉で終わりを迎え、私の長屋の戸も比留間兄弟が大家さんに金銭を払い、予備の物を頂いて直ったものの。

 

今日も喧嘩できると思っていた左之助さんは不満げに口許をへの文字に歪めて、何処かに行ってしまった。おそらく喧嘩する相手を探しに行ったのだろう。

 

「あっ、糸色さん!」

 

「あら、神谷さんもお出掛けですか?」

 

「えぇ、少し買い出しに来たの」

 

ヒラヒラと袖を押さえて手を振る神谷さんに私も同じように着物の袖を押さえて手を振り返す。あまり人前で女性が素肌の見える腕を見せるのは少々お行儀が悪いという、はしたないと思われるのだ。

 

「この子は明神弥彦、新しい門下生なのよ!」

 

「と言うことは神谷活心流も遂に再始動ですね」

 

「えぇ、ビシバシこの子を鍛えるつもりよ!」

 

そう嬉しそうに話す神谷さんに「ケッ。直ぐに薫も追い越してやらァ!」と吠える明神弥彦の言葉に「ちょっとまた呼び捨てにしたわね!?」と神谷さんも竹刀袋を抱えたまま向きになって怒る。

 

「おろろ。また始まったでござる」

 

穏やかに微笑みを浮かべて嘯く緋村剣心をチラリと見つめ、それから直ぐにまた私は明神弥彦へと視線を移していく。少しずつ大所帯になって、この中に後数日後、数週間後には左之助さんも加わることになるのよね。

 

「緋村さんは剣術教えてあげないんですか?」

 

「拙者の剣は後世に残すつもりも誰かに託すつもりもない……が、薫殿と神谷活心流であればきっと弥彦の性根に合っているでござるよ」

 

「……フフフ、そうですね」

 

私に笑顔を向ける緋村剣心に苦笑しながら返答する。左頬の十字傷を見る度、幕末最強の維新志士だった頃の緋村剣心を思い出してしまう。

 

「剣心危ない!!」

 

神谷さんの悲鳴じみた声に驚き、彼女の方に身体ごと視線を移した瞬間、私の真横にいた緋村剣心の横っ面に、ゴッ!と鈍い音が響き、それはもう見事な角度と速さを維持した神谷さんの竹刀袋が緋村剣心に命中した。

 

「おろぉ~~っ」

 

「遂に殺ったか!」

 

「やってないわよ!?」

 

「二人とも口論より手当てが先っ!」

 

緋村剣心の身体に触り、ゆっくりと抱き起こす。

 

左之助さんに比べると細身に感じるけど。

 

これは刀や防具の重さを考慮した上、より軽やかさと瞬発力を高めるために敢えて余分な筋肉を削ぎ、飛天御剣流のスピードを活かした戦法に特化した正しく人斬り抜刀斎の身体をしている。

 

「強いのか弱いのか分かんねえ奴だな」

 

「剣心は強いわよ、ちょっと抜けてるけど」

 

「意外と重たいですね、緋村さん」

 

やいのやいのと話しながら私達は近くにあったお団子屋さんに席を借り、打ち所が悪かったのか。はたまた狸寝入りしているのかも分からない緋村剣心を長椅子の席に寝かせる。

 

「二人ともお団子食べます?」

 

「い、いや、ただでさえ迷惑を掛けてるのにお団子まで奢って貰うのは悪いわよ」

 

「それなら、明神くんだけ食べる?」

 

「くれるなら食う」

 

私の提案に戸惑う神谷さんをしり目に明神弥彦は貰えるものは貰っておくの精神で私の提案を受け入れ、御手洗団子や三色団子の注文を店員の女の子に四人分のお団子を頼み始める。

 

こういうのもたまには良いわね。

 

 

 

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