新しく備わった電気を操作する能力の試運転を終えたヒューリーさんは手足の感覚を確かめ、分厚いゴム手袋を両手に着けると飛行船に戻ってきました。
やっぱり手袋は必須でしたね。
「変身機能はまだなのか?」
「ああ、見張りを考えると手札は隠すべきだ。ケイも言っていたが、おいそれと変身を繰り返すのは却って身体に負担を掛ける」
「そうか」
残念そうにするヒューリーさん。
男の子って、変身や刀とか好きですよね。しとりの電光丸を欲しそうにしたりしますし、ひとえの身に付けている私の譲った懐剣を欲しそうにしています。
悪いとは言いませんけど。自前のナイフを持っているんですから自重しましょうね。そう思いながらドクトル・バタフライの用意してくれた酔い止め薬を飲み、少しだけ気分が紛れる。
「しかし、動物型のフランケンシュタインとなると死体卿の裏側に居るものは限られる。電極プラグを付ける場合、小型化に成功しても精々が犬や猫が限界だった」
「なら、相手は仏国だろうぜ」
「フランスが?何故だ」
「彼処には手先の器用なヤツがいる。景も何度か会っているヤツだ」
左之助さんの言葉に頷き、私はディーン・メーストルの事を想像する。まだ襲撃事件まで年月はありますし。せめて、手助け出来れば良いんですが……。
流石に、もう身体が持ちません。
「フランスの諜報員がいるわけか」
「ん!しとり、アイツきらい!」
「ひー、あったことない?」
「ん!会わなくていいやつ!」
しとりの珍しく人を嫌う発言に、みんなも何となく理解してくれ。あまり聞かないようにしてくれます。それにしても、奈落と同列の扱いなんですね。
「景、疲れてるだろ。寝るか?」
「…いえ、今はお薬のおかげで、ましですから」
「かーさま、だっこ」
「うぇっ、うっ…っ…だ、だいじょーぶですよ…」
どんとお腹に抱きついてきたひとえに変な声を出しながらも優しく抱き締めてあげ、未だにドイツまでたどり着いていない長い長いお空の旅に戦慄する。
私は、母親の威厳を守れるのでしょうか。
「ん!ひーちゃん、あばれちゃめ!」
「あい!」
「母様は弱いから守る!」
「し、しとり?」
「あい!がんばる!」
元気に返事するひとえは和洋折衷の着物スカートを揺らし、楽しそうにしとりの言葉に頷きつつ、後ろ腰に差していた懐剣を取りだし、掲げる。
結界を展開するひとえの成長の速さに喜びたいけれど。実の娘に「弱いから」と言われてしまい、悲しさに涙を流しそうになる。
いえ、ひとりだったら泣いていますね。