雪代縁に培養槽の中に浸かっているのは彼のお姉さんではないと告げた翌日も雪代縁は鍛練を終えるなり、地下施設に向かい、雪代巴の「ホムンクルス」を眺める事に時間を費やしている。
結局、私には何も出来なかった。
「……今日も行っているのね」
「神谷さんが悔やむ必要は、ないです。悪い人に捕まってしまった私の不注意でこうなっているのは事実ですから。それに左之助さん達ももうすぐ来てくれますよ」
そう言って神谷さんを励まし、一向にやって来ない外印に違和感を抱く。隙あらば自分の才能をアピールしていたあの人が、来ないというだけで不安になる。
左之助さんと戦っている?
もしかして、緋村剣心と戦っている?
頭の中を駆け巡る激闘、あるいは死闘に不安が募る。いくら二人が強いとはいえど人形を相手にし続けた後に、あの卑怯な小手先、小足先の攻撃をする外印を相手にしたら大怪我を負う可能性もある。
そう、最悪の想像をしてしまう度、私の不注意で捕まったせいだと悔やみ、どうにかして雪代巴の復活だけは阻止しないといけない。
「糸色さん、船が…!」
「左之助さん!」
来てくれた。
その嬉しさに私と神谷さんは笑顔になる。
───だけど。この島には緋村剣心に見せてはいけない。知られてはいけないものが沢山ある。それを壊すことも隠すことも出来ず、私は雪代縁と緋村剣心の最後の戦いを見ることになるのは嫌だ。
「……神谷さん、先に行って下さい」
「ダメよ!糸色さんも一緒に」
「えぇ、貴女はダメですよ。糸色先生」
「糸色さんッ!!!」
私に手を伸ばす神谷さんよりも速く、私の腕を掴んだ外印に抵抗する間もなく囚われ、部屋の外に連れ出され、林の中を駆け抜けていく。
目指しているのは地下施設。
でも、そこには雪代縁がいることを外印は知らず、鉄の扉を開けた瞬間、強烈な掌打による打撃が外印の顔を撃ち抜き、弾き飛ばした。
「ぐはあっ!?」
「此処で待っていれば来ると思っていたぞ、外印。まさか抜刀斎だけじゃなく、飼い犬にすら手を噛まれるのは思いもしなかった。お前も姉さんの敵だ…!」
其処から始まったのは一方的な暴力だった。
外印は抵抗しているけど。目にも映らないスピードで駆ける人間に攻撃を与えることは不可能に近い。
「目覚めなさい、
その叫び声に答えるように入り江に通じる砂浜を突き破って現れたのは「四星」だった生ける屍───。
彼らの継ぎ接ぎだらけの身体は筋繊維の移植に始まり、様々な物を付け加えられた挙げ句、個々の特性を高めた怪物「ホムンクルス調整体」に成り果てていた。
「まさか、
「生憎と私の目的は糸色先生だけだ。蝶野爆爵が来ているとなれば、もう君と遊んでいる暇は無いんだ。一刻も速く彼女を起動しなければ…!」
そう言うと外印は私諸とも地下施設に向かって飛び込み、外で戦う雪代縁に勝利を確信した笑みを向け、そのまま鉄の扉を閉めてしまった。