木々を薙ぎ倒していく二人と、空を壊す姉妹。
どちらも元気一杯の恐ろしく凄まじくとんでもない行動を繰り返している事に目眩を起こしながら、家族の無事を願っていると象より大きなハエが現れた。
ヴヴヴヴヴッ……!と恐ろしい羽音が聞こえる。
「いやあぁーーーっ!!?」
「ホウ。おそらくDr.リヒターの創造物だな」
「絹を裂く乙女の悲鳴とは、この事だな」
「また、何ともグロテスクな見た目のモノを」
私の悲鳴に気付いてくれたしとりとひとえでしたが、象より大きなハエを見ると動きを止め、物凄くイヤそうに顔をしかめて飛行船の周りを飛行しています。
何か使えそうなものをトランクケースから探しながら窓越しに見える数百を越える複眼の動きに吐き気を催してしまう。
集合体が、あんなに…!
『Mrs.には悪い事をしたかも知れないが、君達の会話には興味を唆られた。着いてきて貰おう』
「フム。まさかハエが蝶に勝てると?」
『勝つではなく確保だ』
その音声が聴こえた刹那、ハエは背中を向ける。
あれは、ハエの胴体じゃない?
あれは、蜘蛛の胴体で───そう思った次の瞬間、糸が吐き出され、私の身体に纏わりつき、繭のように包まれる。
押し潰されるかと目を瞑るも、痛みや衝撃は来ず、恐る恐る目を開けるとドクトル・バタフライがチャフを固めて防壁を作り、私と一緒に包み込まれていました。
「全く、世話の掛かる子だよ。君は…」
「す、すみません」
「しかし、困った事になった。如何に私がホムンクルスでも編み込まれた強化繊維を破るのは苦労する」
「えと、トランクケースありますよ?」
困ったと話すドクトル・バタフライに抱き締めていたひみつ道具を詰め込んだ四次元トランクケースを差し出すと「やはり、君は用意周到だね」と言われた。
それにしても、また誘拐ですか……。
「私、何回拐われたんでしょうね」
「覚えているだろう?」
「覚えてますよ」
それでも聴きたくなるんです。
みんな、私の事を悪役とか黒幕とか怪しいとか言いますけど。私は戦える力なんて持っていないですし、みんなが考えるほど万能じゃないです。
「さて、問題は左之助君だ。君とこんなに近付いていたと知られたら殺されるかも知れないな」
「流石に、友人ですし……」
そう話していると浮遊感は無くなり、身体に掛かっていた圧迫感は直ぐに消える。
「待っていたぞ。Mrs.イトシキ」
「……私は、もう相楽です」
外国の人にも相楽景ではなく糸色景と認識されている理由は何なんでしょうね。アメリカのときも相楽景と名乗っていた筈なんですけど。