某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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茶会 序

「やあ、待っていたよ」

 

ゆっくりとチャフを滑るように溶けていく繭の粘着糸の向こう側、ソファの背もたれに腰かけて座っている死体卿の協力者でありアシュヒト・リヒターの父親、顔の半分を仮面で隠したゲバルト・リヒターが立っていた。

 

「糸色君一人を呼び込もうとした理由を問いたいところだが、随分と用意周到にフランケンシュタインを部屋の隅々に配備しているようだね」

 

「当然だろう。Dr.(ドクトア)バタフライ、君のように化外の存在を内側に招くとなれば細心の注意を払い、君の行動を潰さねばならない。Mrs.イトシキ、君の噂も良く聞いている」

 

「あまり、知りたくないですけどね…」

 

私の噂となれば悪口に決まっています。

 

いえ、あるいはもっと酷いことかも知れませんけど。おそらく、あることないことを誰かが言い触らしているのでしょうね。

 

「さて、君を呼んだのは他でもない。ロンドンで話していた死者蘇生の方法を教えて欲しい。あるいは、人造人間の再人間化の情報だ」

 

「成る程、糸色君を狙うわけだ。私の『知性』にも死者蘇生の知識は載っていない。是非とも教えて貰いたいものだよ」

 

「(知恵も知識も『タイムふろしき』を使えば元の状態に戻りますし。化石を復元したり、焼き鮭を元に戻したり、ミイラをふっかつさせたりと出来るじゃないですか)」

 

そう言ってしまいたい。

 

───だけど。言えない。

 

言ったら、面倒臭いことになりますし。

 

「どうかね。私の創造に手を貸してくれないか」

 

「もしも、もしも貴方の願いが死者の冒涜ではなく死者を想っての行動なら監視を解除して下さい。ゲバルト・リヒター、貴方の創造ではありません」

 

ゆっくりと深呼吸を行い、彼を見据える。

 

「───想像し、創造する。いいえ、違います。貴方に必要なのは創造する力ではなく現実化です。一度だけ時間を作ります」

 

すでにヒューリーさんの身体を改造人間に作り替えるという冒涜を行ってしまった私は地獄行きです。それなら、せめて人の愛に報いてあげたいです。

 

ドクトル・バタフライに目配せをして、私の行う死者を冒涜する罪を見届けて貰います。

 

巨大な水槽の中に沈み、眠るように亡くなっているゲバルト・リヒターの奥さんをタイムふろしきで包み、風呂敷内で十年以上の時間が巻き戻る────。

 

「脈拍数正常。脳波回復。心肺再起動。呼吸確認。生きている、活きている、生き返っている!どうやって!その布を被せるときに何をしたんだ!?」

 

それは、教えません。

 

教えても理解できるのはドクトル・バタフライか向こう側の私ぐらいでしょうし。そもそも私を怪しんでいる人に教えるわけがないです。

 

 

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