私を鋼線で縛り上げた外印は雪代縁に受けた傷を治すことも手当てすることもせず、雪代巴の浸かっている培養槽の前で何かを動かし始める。
しかし、私の位置からは彼のやっていることは見えない。いや、私は外道の技術なんて知りたくもないから、目を逸らしている。
「糸色先生、どうです!貴女の知識と私の技術を重ねて作った
「……貴方の技術じゃないでしょう。錬金術の技術は蝶野爆爵の流用、機材の一部も盗んだものに自分勝手なアレンジを加えて……」
「は?何を言っているんですか?」
「その生き方もフェイスレス様の模倣して、チグハグで無理やり繋いだだけの中途半端なものだし。そもそも私の描いたものを我が物顔で披露されて、ハッキリと言えばキモいんですよ」
「…れ…だッ……」
「薄っぺらな芸術に心は惹かれません」
そう言い放った瞬間、私を縛り付ける鋼線が深く身体に食い込み、ギリギリと私を締め付ける強さに気持ち悪さと痛みを感じながら耐える。
「だまれえぇえっ!!少し頭が良いからと調子に乗るなよ、小娘がッ!お前の作品を真に理解しているのは、この私だけなのだ!!」
頭巾越しでも分かるほどに顔を真っ赤に染めた外印の叫び声を私は黙って睨み付ける。フェイスレス様の強烈な存在感に脳みそを焼かれて、自分がそうだと思っているだけの……その程度の男だ。
自分は特別な存在と妄想する。
「どれだけ真似ても本物にはなれないわ」
「…グッ、ギイィッ!!」
私の言葉に頭巾を剥ぎ取って怒り狂う外印は力任せに鋼線を引き、私の身体を断とうとした瞬間、三本の刀剣が私達の間に降り注いだ。
逆刃刀、大鉾、そして、倭刀の三振りだ。
「漸く見つけたぜ、景」
「フフ、もう遅いですよ」
私を守るように立つ『悪一文字』の背負った彼の姿に安堵を覚え、ゆっくりと緩んだ鋼線を外して左之助さんに抱きついて、抱き締めてもらう。
嗚呼、やっと帰ってこれた。
「縁、貴様等は怨み合っていた筈だろう!?なのに、なぜ肩を並べて戦っている!」
「オイ、勘違いするな。俺の目的は俺から姉さんを奪ったコイツへの復讐だ。例えお前が本物の姉さんを真似て作ろうと其処に居るのは姉さんじゃない、俺の愛した姉さんの姿形だけの紛い物だ」
「な、なら、抜刀斎!お前は愛する女を奪った縁を恨んでいるだろう!」
「……確かに一度は絶望した。それでも拙者と薫殿のために動き、薫殿の無事を知らせるために皆が駆け、集まり、拙者を後押ししてくれた。何より縁の拙者を恨み、死を望む理由は分かっている。───だが、貴様の様な外道に二度も大切な人を死なせる訳にはいかない」
外印は雪代縁を挑発して、その場を切り抜けようとするが失敗し、それならばと緋村剣心を怒らせようと言葉を続けるものの。
それも失敗して焦りと怒りで顔が変になる。
「フッ、フフッ!それならば彼女を使って…!」
もはや取りつく島がないと分かったのか。外印は培養槽を解放するボタンを押そうとした瞬間、カァンッ…!と杖の先を地面に叩きつける音が響く。
そこに立つ紳士なおじ様は間違いなく蝶野爆爵だけど。どこか原作を知っている人間としては違和感を抱かずにいられない姿だ。
だって、この時代に蝶野爆爵はいない。
「その見苦しさはbadすぎる。もはや君の負けは確定しているのだ。私の技術を我が物顔で発表し、他者の生き様や在り方を真似たところで一流には足り得ん。いい加減に負けを認めたまえよ、かつての友よ」
「…だ、…だまれ!…これは私の生き方だ!…貴様の様な変な髭を生やしたヤツに貶され、錬金術の才すら与えられなかった私に対する嫌味か!!!」
「その問いは当然の如くYesだ」
「くたばれ、この似非紳士がァ!!!」
その言葉を皮切りに外印は隠していた五体目のホムンクルス調整体を呼び出した。そのホムンクルスの中心には呉黒星の顔が嵌め込まれ、先程の「四星」と同じ末路を辿った事を理解してしまう。