「飛び蹴り?」
「そうだ。ヒューリーの右足には蓄電機能を搭載している。任意のタイミングで蓄えた電圧を蹴りと共に繰り出せ、言わば最強の切り札だ」
「……そこもアイツらと同じだな」
じろりと私を見る左之助さんから、ふいっと視線を逸らして知らないふりを続けます。私が仕込んだわけではなく、ドクトル・バタフライの仕込みです。
Dr.ピーベリーの改造には手を貸しましたけど。その他の事はドクトル・バタフライに任せていましたし、あまり派手な技を仕込めるほど私は多才ではありません。
「差し詰め、ライダーキックと言ったところか」
「(聞き馴染みがすごい)」
「しかし、飛び蹴りなど避けやすい技です。エルムも使いますが、あれだけはほぼ当たりません」
「そこで、私の運動神経特化型人造人間としての最大走力を加える。如何に再生機能特化型と言えどヒューリーの速さには追い付けん」
そう言った刹那、ヒューリーさんは死体卿の両腕をチョップで両断し、傷口を焼き焦がし、再生の妨害を行いながら顎を蹴り上げ、片足を掴み、力任せに上空へと死体卿を放り投げる。
「超電稲妻キィック!!!」
「うむ、叫んでくれたね」
「ドクトル、責任は取りましょうね?」
「仮面ライダー」を知らない男の人に脳を焼くほどの憧憬を与えて、その姿と力、必殺技まで教えるのは些か悪い人すぎます。
全方位に迸る電光を受けて、死体卿の身体は粉々に砕けていく。消し炭になるというのは、ああいうことを言うのだろうかと思いながら、私は顔を背ける。
「…終わりだな」
「そう、ですね」
地面に落ちてきたヒューリーさんをドクトル・バタフライの武装錬金が受け止め、すでに変身の解けてしまった彼は「……疲れた」とだけ呟き、目を閉じた。
「死んだか?」
「元々こいつは死体だ。それよりお前達は死体卿がまだ隠れているかも知れない場所をしらみ潰しに探せ。私はヒューリーの身体を直しておく」
「しとりとひとえはお母さんと一緒に居て下さいね。二人が迷ったり怪我をしたら大変ですから」
「ん!」
「あい!」
「行くぞ、オッサン共」
ジョン・ドゥの言葉に促され、左之助さんとアバーライン警部、エルムさん達も捜索に向かう最中、アシュヒト・リヒターだけが私達の傍に残った。
「母の件、ありがとうございました」
「……いえ」
「エルムを治す手段はもう問いません。しかし、彼女を人間に戻す方法を教えて下さい。このエルムを助ける方法を私は知りたい」
私の目を見て話してくれた彼に、どう答えるべきなのかと悩みながらも私はまた罪を重ねる。死者の意志を冒涜する行為を何度もしてしまった。
きっと、私は地獄行きですね。