左之助さんが交易商を営む関係上、才賀正二の手掛けた懸糸傀儡を国外へ送り出すルートは絞り込め、才賀正二自身も此方の存在に気付いている様子です。
何年か前に一度才賀正二にらお会いしている分、彼らの気持ちも何となく理解できるのですけれど。もうすぐ才賀貞義に代替わりを行い、いずれ彼の支配しやすい提携関係は変わるかも知れません。
それに才賀貞義は「からくりサーカス」の冊子を才賀正二とアンジェリーナの二人に見せる事を悉く阻んでいるようですし、動きを制限できる可能性もある。
そう思いながら私は居間に揃って座っている会う機会を探していた才賀正二と才賀アンジェリーナの二人に、どう接すれば良いのでしょうか。
「初めまして、相楽景さんね」
「初めまして、才賀アンジェリーナさん」
ゆっくりとお互いに頭を軽く下げ、向き合う。綺麗な銀色の髪と銀色の瞳、私の描いた彼女よりも美しく気品を纏う姿に筆を振るいたい気持ちが溢れる。
綺麗な
けど、今は左之助さんに懸糸傀儡の輸送を頼みたいという仕事のお話し中です。おそらくドクトル・バタフライが才賀正二に情報を流し、こうして仕事の場を儲けているのでしょうけど。
「主人が『糸色さんは面白い人だよ』と言っていたけれど。多分、貴女の父親のことね。貴女はとても穏やかな香りがするもの」
「穏やかな香り、ですか?」
それは、初めて言われたかもしれませんね。
いつもいつも悪役とか黒幕とか知恵の者だと言われ、追われて怖い思いをずっと続けていたから、そう言ってもらえるのは嬉しい。
「フフ、ありがとうございます。アンジェリーナさんも太陽のような香りがして安心できますよ」
「あら、ほんと?」
「はい。とても素敵な香りです♪︎」
「ふふふ」
なんだか面白くて、私とアンジェリーナさんはクスクスと笑いながら話していると、左之助さん達が会話を止めて、此方を眺めていました。
もう、お話しは終わったんですか?と聞けば「いや、自分の惚れた女が笑ってたら見るだろ。なあ?」と才賀正二に言葉を預け、「ああ、見るのは当然だ」と彼も同意して笑っています。
なんで、そこで協力できるんですか。
「しかし、あの変な男の話しに聞いていた糸色さんとは似ても似つかないな。以前はもっと物静かな雰囲気だったと思っているのだが」
「それは、左之助さんや娘達のおかげですね。大抵の事には驚かなくなったと自負しています」
「いや、まだ臆病だろ」
……それはそれ、これはこれです。