我が家の倉の一つをひみつ道具で開け、大事な道具や思い出の品々を四次元ポケットの中に仕舞い、私は才賀正二と一緒に懸糸傀儡の製作に取り掛かっている。
歯車の一つを手作業で仕上げるため、一体を作るのに費やす時間は数日は掛かり、歯車の微妙なズレや傷だけで簡単に人形はバラバラに飛び散る。
「糸色、五番の鉋を取ってくれ」
「はい。才賀さん、突き鑿を貰えますか?」
「こいじゃな」
私は『料理のスキル』のおかげで、ミリ単位のズレや調整を行えるので失敗しないけれど。才賀正二、彼は長年の経験によって私では追い付かない速度で人形の部品を仕上げ、撥条の製作を行っている。
この人でもフェイスレスを止めることが出来なかったのは、やはり不思議ですが、抑止力めいた何かが機能している可能性もあり得る訳です。
「糸色は飲み込みが早いなあ」
「そうでもありませんよ。私の場合は才賀さんという先達が居ましたから、あまり気負う必要なく製作に携われるわけですから」
「ハハハ、そう言って貰えると助かるよ」
「(しかし、彼の技術は高度すぎます。ひょっとしたら芸術の観点では比古清十郎を凌ぐのでは?)」
そう思いながら撥条を歯車に掛け、キリキリキリと少しずつ撥条を締め、右手の動きを確かめる。うん、指の動きもスムーズだし、しっかりと稼働している。
あまり乗り気ではなかったですけど。
前世もこうして何かを作ったりしていましたし。まあ、何個か作ったら満足して別のものを作り始めて、色々と手当たり次第だった気もしますけど。
左之助さんは私達の作業を眺めているものの、ものすごく不満そうに顔をしかめている。あなたが、私の好きにして良いと言ったんですよ?
「しかし、私が言うのも何だが一朝一夕で身に付くとは思えない技術をどうやって身に付けたのかね?少しばかり気になってしまうのだが」
「どうやって……見て、学んだ?」
ヤスリを持っていた手を止め、才賀正二の質問に首を傾げながら答えると「成る程、秘密は誰にでもあるものだからな」と良いように解釈して貰えた。
「では、糸色の名前を
「それは姿お兄様の事です。日本十本の指に入る剣客です、今は京都の方に居を構えていますから、会いに行って見るのも良いかと」
「ふむ、剣客か」
「ちなみに私の左之助さんはその姿お兄様に勝利している日本最強の喧嘩屋です」
「ホウ!」
ギラリと才賀正二の目が好戦的に光った。
少し、煽りすぎてしまいましたね。