左之助さんに背負って貰いながら唐倶利武者とアルレッキーノを追いかけていく。人の寝静まった夜、十五夜の月に照らされた道を駆ける長身の人影を追い、一本だだらの唐倶利武者が地を走っている。
人気は失われ、段々と家屋より草木が増える。追う唐倶利武者と逃げるアルレッキーノは同時に足を止め、アルレッキーノはゆっくりと後ろに────此方を見据えるように振り返った。
だけど。それよりも気になる事がある。
「(此処って鵜堂刃衛と緋村さんの戦った朽ちたお堂のある場所…)」
ぼんやりと朽ちたお堂の傍に見える人影に身体を強張らせながらも左之助さんの背中を降りて、唐倶利武者とアルレッキーノの事を見つめる。
「フランシーヌ様に賜った衣服を傷付けた蛮行、決して許しはせん。東洋の自動人形オートマータ、貴様は必ず私の手で破壊してやる」
「某は自動人形おうとまあたに非ず、某は機巧人形カラクリにんぎょう、お館様に糸色機巧軍カラクリぐん侍大将の任を授かった唐倶利武者カラクリむしゃに候う!いざや仕合おうぞにござる!!」
カカン!と効果音の付きそうな歌舞伎めいた動きを取った唐倶利武者は腰に佩いていた刀を抜刀し、アルレッキーノに向かって車輪を旋回させ、駆け出す。
「見え透いた剣など受けるものか!」
チリと人差し指の指先に火を点らせ、突き構えたアルレッキーノは業火を放つ。
咄嗟に左之助さんが蛮竜を引き寄せて、結界を張ってくれたおかげで、私達は無事だったけれど。唐倶利武者は業火に呑み込まれる────。
アルレッキーノ最大の武器「
効果は単純明快。
一瞬の内に千度を越える業火を指先と掌の二種より発射し、長距離・中距離・近距離、どの間合いだろうと無敵の火炎を以て一切合切全てを焼き尽くす。
尤もそれは普通の相手なら、と前に付きますけど。
「糸色流旋回剣!!」
「私の炎を切り裂くだと…!」
その叫びと共に
小指と薬指、左腕の一部が地面に散乱する。
「景、ありゃあどういうことだ。何で唐倶利武者は燃えてねえんだ?」
「倫敦に備えて唐倶利武者の鎧はタングステン鋼の物に新調していたんです。前回のカーボン仕様の甲冑は炭素でしたから、燃えやすかったんです」
今後の戦いを見据えると軽さと強度もそうですが、硬度を必要とする可能性もあり得ましたからね。
「成る程、お前を侮っていたというわけだな」
「左様、お主の侮り故に某は一刀を振るえたでござる。しかし、もはやお主に侮り無し!お主の素っ首を跳ね飛ばすでござる!」
「─────カラクリ武者、貴様の強さは確と理解した。ならばこそ、私も貴様を倒すために本気を出そう!歌い狂え!諧謔曲『
残った三指を使ってリュートを掻き鳴らした次の瞬間、私達も唐倶利武者も見えない衝撃に吹き飛ばされ、ミシミシと骨の軋む痛みに血を吐いてしまう。
「ッ、ぐぶっ、おぇ゛……」
「景!?テメェ…!」
「奥方様に何をする。この無礼者めがァ!!」
血を吐く私の姿に怒った唐倶利武者の仮面が怒りに変わり、凄まじい衝撃波の中に向かって突撃し、一本だだらの足を折り曲げ、前のめりに倒れ伏すように刀を振り抜いて、切っ先がリュートの弦とネックを掠めると同時に唐倶利武者の車輪が砕ける。
「おのれ!グッ、疑似体液が……」
透かさず、止めを刺そうとしたアルレッキーノのでしたが刀の切っ先はリュートだけでなく首筋を斬り、銀色の血液が飛び散る最中、アルレッキーノは刀を支えに立ち上がった唐倶利武者を見据える。
「この勝負は預ける。イトシキは必ずフランシーヌ様の御前に連れていく。覚えておけ」
「奥方様もその子供達も渡しはせぬ。次こそお主を素っ首を切り裂き、お主を……あるれっきいのを倒す」
「フッ、違うな。お前を倒すのは私だ」
これは、和解で良いのでしょうか?と首を傾げながらアルレッキーノと唐倶利武者のやり取りを見つめ、ぼやける視界が暗転し…て、い…………。