最近、しとりと剣路君は良い雰囲気です。
まだ元服を迎えていないけれど。剣路君は真剣にしとりと夫婦になる事を考えているようですし、しとりもそういう剣路君の事を好いています。
その幼なじみ二人の仲睦まじい光景を邪魔しようとする左之助さんの複雑な心境を察するのは難しい。剣路君を事ある毎に警戒し、しとりを遠ざける。
「左之助さん、些か度が過ぎていますよ?」
「……分かってるけどよ。オレや剣心に勝てねえヤツが本当にしとりを守りきれると思うか?せめて一太刀かかすり傷を付けるぐれえじゃねえと」
「大事に想うのは良いことですけど。ひとえのときもしていたら流石に嫌われますよ?」
「ぐっ、ぬうぅぅ…」
「唸ってもダメです。私と夫婦になるときはお父様に報告する前だったし、子供の頃から知っているんですから不埒な輩とは違うでしょう?」
そう言って私は「しとりを倒す」と目標にしていた剣路君が、いつの間にか「しとりを守る」という目標に変わり、しとりを追い越そうと剣を振るっている事実を伝えると左之助さんも渋々と不貞腐れたように「オレも分かっちゃ居るんだよ」と呟いた。
「じゃあ、どうするんですか?」
「……景、アイツらが十五になるのはあと四年だったな。ならよぉ、四年以内に剣心が剣路を強くしちまえば問題ねえってことだよな?」
「えぇ、そういうことです」
しかし、飛天御剣流は比古清十郎に習っているようですし。緋村剣心は飛天御剣流を剣路君に教えるつもりは無いと公言し、神谷活心流を勧めている。
その理由も「術」ではなく「道」に変わり始めた剣術の術理を学ぶ機会を増やすため、しとりは「術」としての側面は強いですからね。
どうしてもしとりに追い付くには、飛天御剣流は必須と剣路君は考え、その事に気付いている比古清十郎は暇潰し程度に剣術を教えているわけです。
「しとり、ひとえ、ちょっと来てくれ」
「ん?ん、なにぃ?」
「あーい」
ひとえとお手玉を使って遊んでいたしとりは此方を向き、ひとえを猫のように抱っこし、トタトタと近付いて来ると私の隣に座る。
「しとり、剣路は好きか?」
「ん!大好きだよ?」
「ぐっ、ぬぅ……そうか。じゃあ、剣路と祝言を挙げてお嫁に行くのも良いのか?」
「お嫁さんになる約束したよ?父様、けんちゃんのこと嫌いなの?しとり……わたしはお嫁さんに行っちゃダメなの?」
「元気な嫁になれよ!」
うるうると不安げに潤んだ瞳を向けた瞬間、即座に左之助さんは許可を出した。さっきまで真剣に話し合っていたのは何だったんでしょうね。
全く、しようのない人です。