左之助さんの許しを得たものの、まだまだしとりよりも弱いらしい剣路君の猛特訓は続いている。昔の明神君を思い出して懐かしい気持ちになるかな。
まあ、そういうところも健気だと思う。
「しとりは手加減してあげないの?」
「ん。しないよ、したら負けるもん」
電光丸を抜いて太陽光を集めるしとりの言葉に思わず、キョトンとしてしまった。負ける?確かに最近の剣路君は強くなったけれど。
まだ、しとりが負けるようには見えない。
「どうして、負けるの?」
「けんちゃんの手ね、しとりより大きくて竹刀を打ったときに力で押されちゃうんだ」
そう言ってしとりは電光丸を鞘に納め、素早く抜刀すると同時に巻き藁を中程まで切り裂く。
剣路君も同じような事が出来るのかと考えつつ、電光丸を巻き藁から引き抜いて不満そうに頬を膨らませる彼女の顔にクスリと笑ってしまう。
「むぅー、しとりも妖刀ほしい」
「フフ、それはダメです。大人になったら貴女に贈られた刀は返すけど。まだ子供のしとりには返せないから、電光丸で我慢してね?」
「ん!あと四年だもんね」
ニコニコと笑うしとり。
あと四年……あと四年です。
頑張って保てば問題ない筈です。
しかし、楯敷君を倒さなければ私の身体や子供に掛かる負荷を消すことは出来ません。
しとりとひとえには出ていませんし。個人差があるのは間違いないのでしょうが、ひょっとしたら楯敷君は相手を選んでいる可能性も十分にあるわけです。
「母様は父様と夫婦になって良かった?」
「えぇ、良かったですよ。あの人は少し直球すぎるけど、優しくて頼りになる素敵な人ですから」
ごろりと私のお膝の上に頭を乗せてきたしとりの髪を優しく撫でてあげ、擽ったそうに目を細める彼女の愛らしい顔に微笑みを向ける。
「んっ。しとり、わたしって言った方がいい?」
「さあ、それは貴女の自由ですからねえ……しとりがそうしたいのなら私は応援しますよ」
「妖逆門のとき、わたしって言ってたの。みかどちゃんと一緒にいるとき、すごく嬉しかったから大人っぽくしちゃってた」
「あらあら、かわいいですねえ♪︎」
少し恥ずかしそうにするしとりの頬っぺたを両手で包み、うにうにっと捏ねて笑いながら「貴女の人生は貴女のものです。自由で良いんですよ」と告げる。
「わたしって、言ってみる」
「はい。応援します」
「ん!今日からしとりは、わたし!」
フンスと胸を張って宣言するしとりですが、元々しとりは貴女なんですからそんなに力まなくても問題はないんですよ?