ぞろぞろと正門を抜けて、木箱を運び込む左之助さんのお友達に困惑する私に気さくに挨拶をしてくれる彼らにお辞儀を繰り返していると、しとりとひとえを連れて遊びに行っていた左之助さんが戻ってきました。
「お帰りなさい」
「おう。ただいま」
「これ、何ですか?」
「骨董品だ。景、好きだろ?」
骨董品は確かに好きですけど。
どちらかと言えば古書や漢文など昔の内容を書き記した書物を読んだりするのが好きなだけで、私の胸程の高さまである木箱が三つもあるのは流石に困りますね。
「……一人じゃ開けられませんから、木箱を開けるのをお願いできますか?」
「おう」
「ん!わたしも見る!」
「ひーもみる!」
木箱の蓋を指の力だけで引き剥がす左之助さんの怪力にビックリしながらも木箱の中をみんなで見る。坪やお皿、刀剣の類いも乱雑に置かれている。
「刀!」
「あ、こら!危ねえぞ」
「父様より得意だよ?」
木箱の中に入っていた刀の一振りを掴み、引っ張り出したしとりは刀の柄と鞘を握り、ゆっくりと刀を少し引き抜いて、その刀身を見つめる。
「あら、乱れ刃・重花丁子の刃紋なんて珍しいですね。刀身に血脂の汚れもありませんし。芸術品として送り出された内の一振りでしょうか?」
「……母様、これ刀じゃない」
「え?」
ゆっくりと切っ先まで引き抜かれた刀の先は両刃拵え。どちらかと言えば中国剣の三才剣に近しく、滑らかに湾曲しているように見えた刀身は真っ直ぐ。
しとりに渡して貰った刀を手に取り、もう一つの違和感にも気付けた。この刀は、とても軽く私でも戸惑う程に簡単に振るえる。
しかし、一番気になるのは刀身です。
「焼き付けてますね」
無理やり刀身を焼いて繋いでいる。接ぎ木のように日本刀とさての刀身は凡そ20cmほどまでしかなく、その先は両刃拵えの中国剣だ。
「どうして、こんなことを?」
「とりあえず、一通り見たら倉に入れるか?」
「そう、ですね」
左之助さんの言葉に頷き、ゆっくりと食器を取り出していく。傷や汚れはない。けど、やっぱり形はバラバラ、余ったものを押し付けているように思える。
「……これは、村正?」
「むらまさ?」
「なんで、こんなところに?」
虎翼が在ったからまさかとは思っていましたけど。そういうものを作っている人が、何処かに居るのは間違いないということですね。
しかし、本当に珍しい。
こうして刀を握ることもそうですが、ここまで存在感を放つ刀は見たことがありません。これは、姿お兄様にお譲りした方が良さそうですね。