しとりの近くには妖怪や幽霊などこの世ならざる者が訪れやすく、最近の騒動や危険を考えると彼女の持つべき「妖刀」を先に渡しておくべきなのでしょうけど。
無銘の妖刀。
刀々斎の号を継ぐ彼女によって打ち直された刀は倉の中に大切に保管しているものの。時折、しとりを呼ぶように鳴動を繰り返している。
ゆっくりと長細い桐箱を抱えて、居間ではなく広間の方に運ぶ。しとりも一緒に着いてきて、私の運べない桐箱を幾つか抱えています。
座布団の上に正座するしとり、その真向かいに正座して私は襷を使って彼女の袖を結い、同じように自分自身の袖を結い留める。
「しとり、この九振りは貴女のために用意された刀達です。電光丸を含めれば十本の妖刀が、貴女を主と認めています。四年後の元服の際、どちらを持ちますか?」
「全部欲しい」
「しとり、妖刀は危ない物なんです。全てを欲しがるのは危険な事ですよ?」
「ん!みんな、わたしが使う!」
天真爛漫に全てを受け止めると宣言するしとりの笑顔に戸惑いつつ、北海道で導かれるように彼女が手に入れた妖刀の鞘と柄を握り締める。
戦骨の贈り物であり、先代刀々斎の作品。
その刀身は乙女に贈る品物として刃紋を持つ打刀より太刀の形状に近い。しとりは数年振りに触れた刀を鞘に納め、ぎゅうっと優しく抱き締める。
意思を持つ妖刀達を慈しみ、穏やかに受け入れる。
「みんな、しとりの刀だから」
優しく口ずさむ。
カタカタと九振りの刀は飛翔し、しとりの周りを浮遊し始める。まるで、如来の背負う
「フフ、なんだか刀の神様みたいですね」
「ん!じゃあ、母様も神様!」
そう言ってくれたしとりの背中に浮かんでいた妖刀達は姿を消す。いえ、違いますね。個魔の方の影の中に入り、魔鞘として扱っているようです。
「母者、嬢ちゃんの刀の扱いが完璧なのは認めるけど。私の影に沈めるのはやめてくれ。すごく焦ったわよ。斬られたら全部吸われるし」
珍しく焦った顔で影から出てきた個魔の方に申し訳なく思いながらも「わたしは大丈夫!」と答えるしとりに、クスクスと笑ってしまった。
「ポジティブなのは良いけど。私がいなかったら十本背負うことになっていたんだからな?」
「ん!母様の道具で小さくする」
ひみつ道具の「スモールライト」の事を言っているんでしょうが、アレは時間制限付きですからずっと小さいままにすることは出来ないですよ。
それこそ、武器を変えるほどにです。