しとりとひとえは元気良く身体を動かしています。朝のストレッチは健康のため、少しでも長生きするために必要な地道な努力です。
私に出来ることはこのくらいですし。
左之助さんも一緒にしてくれているのですが、私が着物ではなく袴を履いているせいか。ずっと腰回りやお尻に視線が向いているような気がします。
いえ、無いですね。
おそらく細すぎて折れないか心配してくれているんでしょう。私も自分の貧弱さを知っているから、あまり無理に動くことはしません。
「ばんざーい」
「バザイー!」
「ん!」
ひとえとしとりも私に合わせて、背筋を伸ばすように両手を上に伸ばし、ブンブンと両手を振ってストレッチの終わりと同時にドンと親分、ボスのところに向かう。
朝のお散歩ですね。
今更ながら我が家の変わったところを受け入れてくれる近隣の方々には感謝です。まあ、私の事を三界を見通す神仏のように扱う人も居ますけど。
普通に私は人間ですからね?
しかし、本当に糸色家の事を狙う人は多い。
「景、ちょっと良いか?」
「はい。なんですか?」
「いやな。お前を訊ねてきたヤツがいるんだが」
そう言ってしとりとひとえの出ていった正門に振り返る彼の視線に誘われ、そちらに首を動かすとこの明治時代にはまだ存在しないジャンパーとジーンズ、シャツを身に付けた女性が赤ちゃんを抱っこしていた。
「やっ。久しぶりだね、景様」
「お妙さん!?ど、どうかしたんですか」
あの時、ほんの数分だけの邂逅だと思っていた未来の私と左之助さんの娘にビックリしながらも居間の方に案内している途中、赤ちゃんの視線に気付き、その目に思わず、クスリと笑ってしまう。
左之助さんに簡単に未来から来た武藤君達とは違う私たちの娘だと伝えると納得し、赤ちゃんの事を見ながらソワソワとしている。
この場合は、玄孫になるのかな?
「白と黒の
そう言いながら赤ちゃんを見つめる左之助さんから、ぷいっと視線を逸らして、私に手を伸ばす赤ちゃんの事をお妙さんから受けとり、優しく抱き締める。
「フフ、良かったですね。白面の者、貴女の纏う悪因悪果を断って人と生まれることが出来たのは、とても喜ばしいことです」
「フン。最初から気付いていたのか」
ギョッとする左之助さんにニヤリと笑みを向け、「クックックッ。我を一度は滅ぼし掛けた左之助が、こうも固まるのは愉快なモノだ」と笑っている。
「デコピンしてやろうか。こら」
「や、やめんか!我は赤子だぞ!み゛ぃっ!」
妖気も霊気も赤ちゃん故に私より弱く慌ただしく私の腕の中で逃げようとする白面の者は迫り来る左之助さんの手に怯え、可愛らしくお妙さんに手を伸ばしている。
「ハハハ、お爺様も人が悪いね。巓、この人は貴女の事をそんなに虐めないわよ」
グスグスとお母さんにしがみついて、左之助さんを睨み付ける白面の者改め、てん……おそらく絶巓の「巓」という名前をプレゼントしたんですね。