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孤島での激闘を終え、私達は日本本土に帰ることが出来たけれど。原作と同様に、雪代縁は雪代巴の日記を受け取った後、忽然と船から姿を消してしまった。
日本のどこかで世捨て人になったのか、孤島に戻って雪代巴の「ホムンクルス」調整体を守り続ける事に残りの人生を費やすのか。
それは私にも分からない。
しかし、それでも生きているのなら、それで私は良いと思える。大きな接点もないし、彼に献身を捧げる程の関係ではないけれど。悪に染まったとはいえ雪代縁が立ち直ることを私は願うばかりだ。
「糸色さん、準備は良いですか?」
「は、はい!」
思考の渦から私を呼び起こしてくれた神谷さんの言葉に上擦りながら返事を返す。……お、落ち着こう。冷静になれ、糸色景。こういうのは何度も読んでいるでしょう、慣れているはずよ。
そう私は自分自身に言い聞かせ、唇に赤い染料を塗り、鏡に映っている自分の姿を見つめる。真っ白な着物、白無垢を身に付け、あとは綿帽子を被ると準備は終わる。
今日、私は祝言を挙げる。
孤島を出るとき、左之助さんに怒られ、それはもう凄い圧力で「帰ったら祝言を挙げる。もし破ったらオレもお前を死ぬまで取っ捕まえる」と言って聞かず、お互いの両親に会うのは祝言の後ということになった。
それは、まあ、良いんですけど。
左之助さんの実家は無事なのだろうかと考えてしまう。いや、左之助さんの父親も中々に腕っ節に自信のある人だから、大丈夫だとは思うものの。
少しだけ不安になる。
既に同居している私達の場合はその場で出迎えることになるけど。親族は後で呼ぶため、私達の親類……ここだと神谷さん達に代わってもらっている。
式場も神谷道場だ。
その方が良いと左之助さんと決めて、緋村さんや神谷さん、明神君にも許可は貰っているので問題はない。
「眼鏡って外した方が良いですか?」
「オレが手ぇ引いてやるから安心しろよ」
「あっ、コラ!勝手に入っちゃダメでしょう!」
ポツリと呟いた言葉に、いつの間にか部屋の中に忍び込んできていた左之助さんが応えてくれた。紋付きの着物を纏った、普段とは違う姿にドキドキとしてしまう。
「あっ、おい!」
「全く!糸色さん……じゃなくて、もう相楽さん?それとも普通に景さんって呼べば良いのかな?」
「フフ、神谷さんが呼びたいように呼んで下さい」
思えば、左之助さんと同じくらい長く話して仲良くしてくれたのも神谷さんが初めてだったな。こうしてずっと楽しく出来ていけるなら、きっとこれからも私の生きる場所は大丈夫なんだろう。
怖くても生きていける。
「準備終わったわよ、左之助」
「おう!行こうぜ、景」
「……フフ、喜んで」
嗚呼、本当に綺麗な世界だな。
「(……絶景かな、なんて言ってみたり……)」
ゆっくりと左之助さんに手を引かれて、みんなの待っている神谷道場へと向かう。