お妙さんと巓さんが未来に帰ってから数日後。剣路君の稽古にやって来た比古清十郎にしとりも挑んだもの、比古清十郎は電光丸相手に無刀取りを決めた。
やっぱり人外じみていますね。
「ん!比古先生、どうしたの?」
「酒の肴を探しに来たところだ。お前の母親の作る薩摩汁が一番美味いからな。嬢ちゃん、お前はどの飯が一番好きだ」
「えとね、さばの味噌煮に!」
「ホウ。中々に通な物を好むな」
バシバシと竹刀の打ち合う最中、しとりの呼び掛けに答えた比古清十郎は道場の床に脳天を叩かれて倒れた剣路君に「足腰がまだ弱いぞ。道場の周りを三、いや、五十回は走ってこい」と告げる。
さっきもそうですけど。
比古清十郎、稽古を付けるという事を名目に私達の料理を食べるために来ていますね。自由気ままに過ごす孤高の陶芸家と称されるのもそのせいです。
「糸色、今日の飯は何だ」
「え?トンカツですけど」
「……胃に来る物だな」
「師匠はもう歳でござるからな」
「お前も似たようなもんだろう」
比古清十郎はそう言うと竹刀を振り下ろして緋村剣心の脳天を叩き、親子二代に渡って比古清十郎によって気絶していますね。
いか、それはいいんてすけど
我が家に来るのは確定事項なんですね。
「もう一本だ!」
のっそりと起き上がるなり、剣路君は素早く比古清十郎の背後に回り込み、竹刀を振るうも逆に手首を捕まれ、投げ落とされています。
「景さん、どうしましょうか」
「みんなの分を作るしかないですね。折角ですから豚肉を使った薩摩汁もやりましょう」
「さっきの褒め言葉、嬉しかったのね」
ご飯を褒めて貰えるのは嬉しいです。
でも、一番嬉しいのは美味しく食べて貰えて、その人の笑顔を見るときですね。左之助さんとしとりもひとえも個魔の方もみんな顔に出やすいですから。
「ひこ先生、ひーもやりたい!」
「悪いな。嬢ちゃんはまだ無理だ」
しとりとひとえは数え年の三歳差。まだ一桁の年齢のひとえの事を心配してくれるのは助かりますが、その子はとても寂しがり屋さんです。
「ひーもやる!!」
「おっと、すばしっこいな。嬢ちゃん、お前の妹ならしっかりと見てやらねえとダメだぞ」
「ん!ひーちゃん、下から斬る!」
「した!」
「ホウ。逆風に蹴りの複合技か」
今のは、倭刀術の動きですね。
しとりは北海道で雪代縁に会っていますから、その可能性はありましたけど。まさか、この土壇場でひとえに使わせるとはビックリです。
流石は、左之助さんの娘達です。
勝負勘というものも強いですね。