「母様、ぬらりひょんいたー!」
「そう引っ張るでない。儂は逃げも隠れもするが、童に引き摺られるのは趣味ではないぞ」
後頭部の伸びた独特な頭を持つ老人。日本妖怪の総大将ある「ぬらりひょん」を連れて帰ってきたしとりの行動力に私はこめかみを押さえる。
流石に予想外すぎますけど。
用件は分かっています。ぬらりひょんの探していた妖刀「浦鮫」をしとりが手に入れてしまった。その噂を聞き付けてやって来たのでしょうね。
「お久し振りです。今回の用件は浦鮫の事ですね。しとり、貴女の持っている赤鞘の刀をぬらりひょんに見せてあげてもらえますか?」
「ん!」
「────うむ、紛れもなくこの妖刀は浦鮫だ。人の身に余る妖刀を抑え込めるのは、流石は糸色家の血筋と言えるな。お主らの姿を
ついき?
聞き覚えの無い名前に首を傾げていると「お主らのご先祖様じゃな。とうに名前も忘れられたか、後に名を変えているのかは知らんが」と言葉を紡ぎ、濁す。
「ん!わたしのだから返して?」
「くれ」
「やっ!」
「くれー!」
「やーっ!」
「ならば逃げる!」
「ん!ぶった斬る!」
ダッ!と駆け出すぬらりひょんを追い掛けるしとりを見送り、何とも言えない気持ちになります。あの子は本当に物怖じしない、優しく強い子に育っています。
孫が生まれたら、より一層の強さを持つことが出来るのでしょうが、日本妖怪の総大将と妖逆門の優勝者の鬼ごっことなれば、当然のように妖怪は現れる。
真っ昼間に、百鬼夜行の開幕ですね。
「おー」
「ひとえは行かないの?」
「ひーは刀持ってる!」
ムフーっ!と私の譲った守り刀の懐剣を握り締めて、とても嬉しそうに笑うひとえの頭を優しく撫でてあげる。二人ともスクスクと成長しているから、もうすぐ身長が抜かされてしまいそうです。
「な、なんなんだ、この娘は……」
「ん!また、捕まえた!」
「何だと言われても、私の大事な大切な愛しい愛しい愛娘達です。しとりは今回の妖逆門の優勝者でもありますから参加していた妖怪達とはお友達ですし」
「なに!?華院一族を打ち負かした最強の巫女とは童のことだったのか!」
華院一族。
アニメ版の「妖逆門」に登場にする妖怪達を滅するために「げぇむ」に参加していた一族ですね。糸色家より後に誕生した霊能名家ですが、糸色家と比べると霊能力は限定的であり、傲慢な人ばかりです。
もしも愛娘達を狙ってきたらどうしましょう。