「左之、その肉は剣路のために育てているものでござるよ。お主の鍋は彼方でござる」
「ん?ああ、話し込んでて間違えた」
そう言いながらもお肉を食べて戻ってきた左之助さんの代わりに、しとりが溶き卵を絡ませたお肉を剣路君に「あーん」としています。
左之助さんは僅かに動きそうだったので、袖を握って押さえつつ、ひとえにお肉を装っていると、追加のお肉を運んできた佳さんが私を見つめる。
「……えと、なにか?」
「いや、食が細いとは聞いていたが、ほとんど食べずに他の人に渡しているな。私の手塩に掛けて味をつけ、味わいを高めたというのに残念だ」
「うっ、た、食べます…!」
「フッ。そうだろう、是非食べてくれ」
ドンと置かれたお肉の山に頬を引き釣らせ、これはもう牛鍋というより焼き肉なのでは?と思いながら、お鍋に出汁と野菜を入れ、煮立つ前にお肉を入れる。
グツグツと煮えるお鍋を見ていると、左之助さんと緋村剣心が酒盛りを始めているのが見えた。最近は忙しくてお酒を飲んでいませんでしたからね。
「しんちゃん、元気?」
「んー」
「えへへ、かあいいねえ」
いつの間にか明神心弥を抱っこしているひとえに驚きつつ、操さんと四乃森青紫の子供にも同じように接しているから、二人のお姉さん像をひとえが壊していたらどうしましょうか。
「賑やかな町だな。此処は」
「フフ、それもまた良いところです♪︎」
そう言って私は笑みを向けると「お婆ちゃんは本当に可愛いな。ツカサやアイツが固執しているのも納得できる」と頷き、厨房に戻っていきます。
「ああ、それからお婆ちゃんに渡しておきたいものがあるんど。これを見てもらえないか?」
ダークガタックゼクターとは違う。
灰色や黒色に近しい見た目のカブティックゼクターに少し頭を抱えそうになります。おそらく向こう側の転生者の使っているものでしょうが、酷く損傷している。
「私にどうしろと?」
「直せるか?私は大抵の物事は超一流に熟せるが、流石にゼクター関連の知識は少ない。分解しても良いんだが、私のゼクターが怒るからな」
そう言うとお店の中を突き抜けるクワガタに男性のお客さんは色めき立ち、あの大きなクワガタを捕まえると言って何人か走り出してしまった。
「男はいつになっても虫が好きだな」
「あ、あはは、私は苦手ですねえ」
だって、何を考えているのか全く分からないし。いつも私に向かって飛んでくる虫もいるから、本当に辛くて怖くて恐ろしいんです。
やっぱり、佳さんは違うのでしょうか?