自分の血筋に関わっている誰かの事を知るというのは、とても貴重な体験と言えるけど。しとりとひとえが、もしも戦骨のようになってしまったら、と。
そう考える度に不安になります。
二人とも可愛いから余計にです。
「……あぁぁぁぁぁぁぁ」
「いきなり、どうした?」
「椿さんの子孫を聞きそびれました」
「ああ、そういうことか」
ビックリしたように私の事を見遣る左之助さんに思い出したことを伝える。椿さんの子孫となれば、糸色家の親戚になるわけですし。
一応、知っておきたい気持ちもあります。
しかし、知る機会はまだあるわけですし。そう不用意に知ろうとして迷惑を掛けるのはダメな事です。ただ、糸色對様を放って大陸に向かった戦骨は許せませんね。
いつかお仕置きをするように言うべきでしょうか?と首を傾げ、ウンウンと唸って悩んでいると左之助さんの手が頭を掴み、おでこにおでこが当てられる。
「……熱はねえな」
「風邪じゃないですよ?」
そう言いながら彼の手をずらして、ポンポンと私は自分のお膝を叩いて左之助さんの頭を受け入れ、いつものように膝枕をしてあげる。
────とは言え、です。
私、しとり、ひとえの身体に流れる戦骨の血の存在は、彼の受肉体に成り得るということ。千年パズルの内部に封じ込めている戦骨の魂が、肉体を得るには持って来いの「器」と言えるけど。
あの戦骨が狙うなら絶対に境君ですね。
私の見立てでは、おそらくお妙さんより彼は強くなるポテンシャルを秘めている。いえ、すでに越えつつあるとさえ感じていました。
「オイ。今別の男を考えたろ」
「左之助さんはたまに変ですよ?」
別の男って、普通に私と貴方の未来に生まれる子供なんですから、そんなに警戒しなくても問題ないでしょう。そう思いながら左之助さんの目を隠すように、そうっとハンカチーフを重ねる。
「……景の匂いがするな」
「えっ、く、臭いですか?」
「あ?あー、椿の香りだな」
たまに使う椿油でしょうか。
でも、私の癖毛は全然治してくれないのに、しとりとひとえのキューティクルは完璧に艶やかに仕上げてくれる。優れた代物です。
「椿の匂いって、よく分かりましたね」
「ん。いつも嗅いでるからな」
「いつも?」
思い返してみる。
お風呂上がりや抱きついているとき、しとりとひとえに勉強を教えているときも、たまに顔を近づけて、匂いを嗅いできていますね。
「左之助さんはよく嗅いでましたね」
「そこまで頻度は高くねえぞ?」
そうでしょうか?