「ん?ん゛ッ、痛い痛い痛い痛い!?」
「まだ軽く押しただけだぞ?」
「い、痛いものは痛いんですっ」
大陸由来の全身按摩の本を片手に、肌着だけでうつ伏せに寝転んでいる私の腰の辺りを押す左之助さんに抗議の悲鳴を上げつつ、枕の向こう側に置いた眼鏡を手に取り、彼から本を受け取る。
「…これ、押す場所が違いますよ」
「なに?」
「えと、肩甲骨と背骨の近くを軽く押して下さい。んッ、そう、そこです」
肺兪というツボで、肺機能の改善を促すツボ。強すぎず、ゆっくりと手のひらを広げたまま背中に添えるように押し当てて、背骨と肩甲骨の間を軽く触って貰います。
コキコキと私の骨の軋み、ズレを正す音を聞きつつ、浅くか細い呼吸を繰り返す。深呼吸に合わせて押して貰えると、とても助かりますけど。
「景、こういうのって効くのか?」
「点穴経絡自体は実在していますよ。清国で会ったお爺さんが居たでしょう?」
「お爺さん?……ああ、居たな」
「あの年齢に至るまで経絡を極めて、ようやく擒拿術の武人足り得るのでしょうね(私は『料理のスキル』で正確に弱点を見れるかも知れませんが……)」
怖いので絶対に見ませんね。
そもそも『料理のスキル』で、どうして人体の急所を見ることが出来るのかを神様にお聞きしたいです。いえ、やっぱり怖いので聞きたくないです。
しかし、どうやって左之助さんはこういう本を見つけて貰ってくるんですかね。私がよく似たような本を買っているから?
「景?景?おい……脱がせるか」
「脱ぎませんよっ」
「チッ」
「し、舌打ち…?」
ショックを受ける私の腕を掴み、パタパタと足を動かして暴れてみるものの、背中に乗っている左之助さんを押し退けることなんて出来ないので、だんだんと息が乱れ、ケホケホッと咳き込んでしまう。
「ッ、悪い。ふざけすぎたな」
「い、いえ、けほっ、ごめんなさい」
私の身体を引き上げて向かい合うように抱き締めて、ゆっくりと背中を擦って苦しくないように、深呼吸しやすいようにリズムを作ってくれる。
……少し、怖かったけど。
「(やっぱり優しくて、大好きだなあ……)」
そう思いながら、やっぱり私に出来ることをしてあげたほうが良いのかな?と想像してしまい、嫌がらず、恥ずかしがらず、受け入れる方が……と、さらに不安なことばかり想像してしまう。
「……左之助さん、あなたがイヤでも子供達のために私の記憶を持っている人形を作りませんか?」
「嫌だ」
「痛っ、痛いですっ」
ぎゅうっと私を力強く抱き締める左之助さんに抗議するも聞いて貰えず、彼の背中に届くギリギリまで手を回して、ポンポンと叩いてあげる。
分かりましたから、ね?