「じゃあ、行ってきます」
「剣心、弥彦、暫く喧嘩屋は任せるぜ」
「おう、任せとけ!」
「おろぉ…責任重大でござるな」
「二人とも気を付けてね」
神谷道場の前でみんなと挨拶を交わし、私と左之助さんは銀成市がある埼玉県へと向かう。ちゃんと杖や編み笠は用意したから大丈夫だと自信を持っている。
着替えや旅費は左之助さんが持ってくれるけど。
私の荷物重くないのかな?と思いつつ、我が家の居間に鎮座する蛮竜を持ってこようとした時に比べればマシと割り切ることにした。流石に、アレを持って歩くのは危ないですからね。
そして、蝶野爆爵との話を終えたら埼玉県の更に向こう側にある長野県へと向かい、左之助さんの家族にも挨拶をする予定だ。
御庭番衆と警察の捜査力は本当に凄いと思う反面、これでも未だに消息不明の雪代縁と外印を見つけることは出来ていないという事実に不安になる。
「景、大丈夫か?」
「はい、平気ですよ。まだ歩き始めたばかりですし、この機会に少しでも運動して、出来る限り体力を付けておかないとです」
「危ないときは担ぐぞ?」
「いえ、甘えすぎは良くありませんから!」
そう言って私はフンスと両腕を上げて力瘤を作る。まあ、私の腕には力瘤を作れるほど筋肉はないから、日に焼けていない不健康そうな色白の肌しかない。
「オレ以外に見られたらどうするんだよ」
「いふぁいっ、いふぁいれふ…!」
自分でも少しはしたなかったと反省しているのに、左之助さんは私の頬っぺたを引っ張ったり、ムニムニと動かしたりして叱ってくる。
自分だってムキムキの胸板や腹筋を見せつけてるのに一方的に怒るのは酷いと思うのよね。……まあ、そのカッコいい人が私の旦那様な訳ですが。
他愛なくも楽しいやり取りをしながら歩いていると橋を抜け、通って東京の外へと続く道が見えてくる。二年前に此処を通って、ごろつき長屋に行き着いて、左之助さんと出会った。
「そういや景の実家は何処にあるんだ?」
「長野県です」
「目的地同じなのか!?」
正確には信州県の某市にあるのが糸色本家です。
私の二つ上に兄、ひょっとしたら弟か妹が産まれている可能性もあるけど。あの子煩悩すぎる上に自己中心的且つ自己陶酔の激しく、他人にも甘くて厳しい両親に左之助さんを会わせるのは苦労するわね。
ただ、私が気にしているのは両親だけじゃなくて左之助さんの家族の事だ。時系列がズレているのか、まだ何も事件は起こっていないそうだ。
斎藤一の部下の言葉だから信用できる情報ではあるものの。たまに原稿をチラ見しようとする人もいるから、とても大変だったりする。
主に斎藤一が、だけど。