「糸色君、まだ意識を失ってはいけない。辛うじて『特典』の制御は出来ているが、意識を失えば丸ごと呑み込まれる。少し我慢していてほしい」
ドクトル・バタフライの言葉に頷きながら、口の中に押し込まれたものを頑張って飲み込む。お薬、少しだけ辛いのが収まった……。
けど、苦しいのは和らがない。
なんとか意識を保たないといけない。
血涙を流していたのか、赤く染まった視界の中、何かを話し合っているドクトル・バタフライと楯敷君の姿を見つめる。キラキラと光るチャフを纏い、蝶・変態するドクトル・バタフライ。
「ツカサ、君の目的は聞いておこう。本当に世界を繋げ、ラスボスになりたいのかね?」
「当たり前だろう。オレのやりたいことはそれだけだ。いや、もう一つあるか…」
「ホウ。ぜひとも教えて貰おうか」
「ジイサンは隠居してろ!」
「まだ六十手前さ」
そう言うと仮面ライダーダークディケイドは素早くライドブッカーを銃状に組み替えると光弾を連射し、ドクトル・バタフライの事を追い詰める。
止めない。けど、動けない。
「先程糸色君の身体に抑え込んだアレは何かね。それについては絶対に聞いておきたい!」
「転生者の恨みや憎しみだ。オレやジイサン、他の奴らは転生して自分なりに幸せを見出だしたヤツは沢山いる。だが、転生に失敗した奴らもいる。────ソイツらは一歩も世界に踏み出していない奴らだ」
「世界の楔に集まるのはそういうわけか」
「楔か。実際、仮面ライダーの世界とスーパー戦隊の世界を繋いでいるのはふたりの糸色景だ。他の世界に渡ってみたが、此処ほど綺麗な世界は存在しない」
その言葉に私は身体を強張らせる。
「『ウルトラマン』の世界に行ったとき、糸色景はガタノゾーア、ダークザギ、エンペラ星人の依代にされてやがったし。『メタルヒーロー』の世界に行ったとき、糸色景は無理やり人間を止めさせられていた」
いや、ききたくない。
「そして、『スーパー戦隊』と『仮面ライダー』の二つの世界に存在する糸色景の共通点は、自分の意思で踏み出し、歩き出した事だ」
私は、ゆっくりと楯敷君の事を見つめる。
「他の世界の糸色景と違うのは生きるという希望を失わず、とある男に出会った事で劇的に変わった」
「……さ、の、すけ、さん」
「ああ、そうだ。他の世界の糸色景は武田観柳、志々雄真実、四乃森蒼紫、真田某なんていう奴らに捕まって生きる希望を失っていた。なによりアイツらは『物語を繋げる能力』を失っていた」
そう、ですか。
「……糸色景、次は絶対に奪い取る」
オーロラカーテンに彼は消えた。