「しとり、ひとえ、ただいまです」
「か、母様!んー!!」
「かーさま、おかえりー!」
「へぶっ」
玄関で草履を脱ぎ、廊下に据わる私に突撃してきた姉妹の頭が顔と胸に直撃し、変な悲鳴を上げ、床に倒れながら痛みと苦しさに身悶える私にしとりとひとえの二人は可愛らしく小首を傾げています。
だ、大丈夫ですよ。
お母さんはこの程度の痛みには慣れていますから、ちゃんと受け止めましたから大丈夫です。そう、私を見つめる二人の頭を撫でつつ、玄関に車椅子を置く左之助さんの手を借りて、ゆっくりと立ち上がる。
「ん!ん!ん!」
「フフ、しとりも支えてくれてありがとう」
ゆっくりと壁に手をついて、歩く。
まだ筋肉は硬直していますし、マッサージを繰り返していますけど。やっぱり以前のように歩くのは大変になりそうで、とても憂鬱です。
「んしょ、んしょ」
「ひーもささえる!」
「あ、ありがとう、けど、そこはお尻ですよ?」
「? おっきいね!」
「そこまで大きくないです」
私のお尻を押して倒れないように支えてくれるひとえの優しさは嬉しいです。嬉しいですけど、さっきから左之助さんが「その手があったか!」と良いことを思い付いたように笑っている。
できれば、その、普通に支えてほしいかなあ、と。
そんな事を内心で思いつつ、左之助さんの手が下がってきたのでペチンと叩いておきます。ひとえとしとりは善意のお手伝いですからね?
左之助さんは、破廉恥なのでダメです。
しかし、悩ましいことに私はそういうお茶目な左之助さんも好きなので許してしまいそうになります。最近の左之助さんは弥勒様のように破廉恥です。
「景、居間に座っとくか?」
「いえ、書斎の方へ」
「……何かするのか?」
「彼処には座椅子がありますから」
「ん!しとりも座ってた!」
「ああ、やっぱり入っていたんですねえ?」
にこやかに私を支えてくれるしとりに、そう伝えると「ん!ばれちゃった!」とビックリして、思わず、彼女の可愛らしい顔にクスクスと笑ってしまう。
そんなこんなと話しながら廊下を歩いて、書斎にたどり着いたとき、イヤな予感を感じて戸を開けた瞬間、私は少しだけ溜め息を吐いてしまった。
あからさまに何かを探した後ばかり。
しとりとひとえの届かない場所ですから、おそらく左之助さんですね。きっとドクトル・バタフライに言われて、何かを探していたのでしょうけど。
「せめて、巻数は順番は正しましょう」
「お、おう、わりい」
「フフ、怒ってないですよ」