糸色景は何でも知っている。
そういう噂を真しやかな吹聴する人は多く、その噂を信じて私のところにやって来る人達もいる。けど、私はただの物書きですから、探偵ではありません。
「今日もお悩み相談ですね」
「お寺や教会に行けよ」
「あはは、そういうところに行けなくて私のところに来ているんでしょうけど。私の家系って警察や政界にも親戚は沢山いるんですよね」
最近は、海外進出を繰り返す私に取り入って協定を結びつつ、乗っ取り計画を企てたおじ様がお父様の華麗なる言葉を受け、自供したそうです。
華麗なる言葉とは、何でしょうか?
そう不思議に思う私の目の前に座るお爺さんのしゃがれてくぐもった言葉を聞く。
「わしの、村の祠を、戻してくれ」
「(どう考えても厄ネタですね)」
しゃがれた声を止めたお爺さんはいつの間にか消えてしまっていた。念を飛ばしてきたのか、はたまた私の事を狙い撃ちにしてきたのかです。
「(そもそも祠と言われても何処にあるのか。いえ、心当たりというか、なんと言うべきなんでしょう。絶対にプレシャス関連の出来事です)」
あの声、幻のゲッコウでしたもん。
絶対に罠の解除を押しつけるつもりですね。いえ、謎を解いたところで奪取してしまえば問題ないと考えている可能性もあるわけですけど。
「景、知ってるのか?」
「使えるのは
そう言うと更に首を傾げる左之助さんにクスクスと笑いながら私は「祠を戻してくれ。あれだと正しくしてほしいと言っているようなものです」と伝える。
「ってことは、あのジジイは」
「普通に奪えずに帰ってきた人ですね。ただ、純粋に忍術を使えば簡単に壊せるものを私に頼んでくるあたり、とても用心深い人なのでしょう」
「クソ野郎じゃねえか」
「くそ?」
「しとり、真似しちゃダメです。左之助さんも女の子がいるところでそういう言葉はダメですからね?」
「……おう」
「ひーも言っちゃだめなの?」
「ん!わたしもだめだった!」
しとりとひとえのやり取りを聞きつつ、今後のために「兵の弓」は必要になるかも知れないという考えを抱いてしまう。
実際、「兵の弓」は強力です。
弩弓。
いわゆるボウガン型の兵器であり、広範囲に及ぶ破壊力を持つ光弾を撃つなど。使い手次第の、とても強力……いえ、強力すぎる兵器です。
武器の使い方は担い手の心のままですが、左之助さんは手に入れたら絶対に壊しますね。サージェスの出来る以前の出来事扱いでしょうけど。
そういうのは、やめておきましょう。