遠路遙々と動けるほど体力は回復しておらず、私は「どこでもドア」を使ってお爺さんの言っていた祠までやって来ています。
左之助さんと二人きりで来ているのはしとりとひとえに危ないことはないですが、わりと危険な物は転がっているように思えますね。
「(殆んど罠を解除している辺り、本当に最後の祠を直すところだけが分からないんですね)」
そう考えながら部古びた洞窟の中を左之助さんに抱っこして貰ったまま進んでいると、あっさりと祠まで辿り着いてしまいました。
しかし、祠の周りも同じです。
「景、罠なんてねえぞ?」
「フフ、罠はありますよ。あの祠こそが罠で、この洞窟も罠の一部です。そもそも『兵の弓』は強力すぎて普通の人間には使えない代物」
アシュという異なる進化を遂げた人間を倒すために用意された兵器。本来、私達がおいそれと触れていいものではありませんからね。
「景の言いたいことは分かるぜ。けどよ、アイツらは分からねえんじゃねえか?」
そう言うと左之助さんは私の事を地面に下ろし、ゴキゴキと拳を鳴らしながら次々と現れる忍び装束の人達を睨み付け、錫杖を構えた何人かもいる。
おそらく高丘一族の方々ですね。
戦えない私は座って、左之助さんの戦いを見ることしか出来ません。けど、私だって何度も楯色君の襲撃を受けていれば学習するんです。
ゆっくりと袖の中に仕舞っていた手袋型の発明品「蜘蛛手」を取りだし、両手に嵌めて五指に粘着性の高い糸を出し、自分の周りに蜘蛛の巣を作り出す。
園田君のお友達に居た蜘蛛男の人に頼まれて作った発明品の一つですけど。まさか私が蜘蛛のように使うことになるなんて想像もしていませんでした。
「おのれ、絡新婦のアシュか!」
「私は、普通の人間ですよ」
あやとりをするように糸を組み合わせ、私に向かって飛来する苦無や手裏剣をからめ捕り、ぎゅうっと刃をくるんで使えなくする。
自然ポリマー製の糸ですから置いておけば普通に分解され、土の養分に変わって、この封印の祠の存在その物を隠してくれるはずですね。
「オレの女に刃物を向けんじゃねえ!」
「がっ!?」「ぐほおっ!!」
洞窟の壁にめり込み、動かなくなる人達に少しだけ申し訳なく思いつつ、私の真後ろに飛んできた錫杖は霊気を帯び、粘着性の高い糸を斬って地面に突き刺さる。
「高丘殿、封印を!」
「…………無理だな。アレは人だ」
「最初からそう言っていますよ」
「おう。オレは許さねえからな?」
ちゃんと人の話しは聞いてほしいです。