ダークシャドウの歴気を築く影の軍とアシュを封印する高丘一族の方々を退けて、私と左之助さんは無事に東京府の我が家に戻ることは出来ました。
正直に言うと不安だった。
自分を活かす能力を高めるために「兵の弓」を狙うとは想像し難く、むしろ彼らは切り札を欲しがっているようでしたね。
ただの切り札ではなく如何なる盤上も容易くひっくり返してしまえる切り札です。私の場合は機巧軍に所属する機巧人形達で、左之助さんは蛮竜になる。
「アイツら、鬱陶しすぎるぞ」
「えと、あはは…」
影の軍と高丘一族とは関わった事は一度もありませんし。なにより私達の事を利用した相手です。ほんの少しだけ、警戒しておいたほうが良さそうですね。
「ん!おかえりー!」
「おかえい」
うつらうつらと夢に旅立とうとするひとえのお腹を優しく、ポンポンと叩いて眠りやすいリズムを作ってあげているしとりの姿に、思わず、ほっこりとしてしまう。
やっぱり、子供はかわいいですね。
「ただいま、しとり、ひとえ」
「ただいま。お姉ちゃんしてて偉いぞぉ」
「んー!」
二人のそばに座り、ひとえの事を抱っこする。もう、すっかり大きくなりましたね。一年か二年もすれば私より背丈も大きくなってしまいそうです。
左之助さんに似て本当に元気に育ちました。
この子達の未来は健やかで楽しくあってほしいけれど。私の影響を受けた世界はどの様に拡がっているのかも分かりません。
怖いことに巻き込まれないで下さいね?
「ん!ん!ん!」
「もちもちしてんなあ」
もちもちとした、しとりの頬っぺたを両手で触る左之助さん。お膝の上に乗せているから、後ろから持ち上げています。私もよくしていることです。
二人とも柔らかいのです。
「わたし、ふとってないよ?」
「フフ、しとりは綺麗ですよ」
「ん!母様は、もっと食べるべき!」
「うっ、た、たべてはいるんですよ?」
その、食べられる量が少なくて、お母さんもいっぱい食べられるようにトレーニングは続けているんですけど。やっぱり、もっと食べるべきなのでしょうか。
───いえ、そういうことではなくですね。
「左之助さん、触りすぎです」
「ん!父様、反省!」
「んー?するわけねえだろう」
「ひとえはお休みしましたから、抱っこして寝室に連れていってあげてほしいんですけど」
「ああ、そういうことか」
「はい」
くうくうと眠るひとえを抱っこして連れていく左之助さんと代わって、私はしとりの事を抱き締めて、お膝の上に彼女の頭を優しく撫でてあげる。