「最近、視線を感じるんです」
「左之助じゃないの?」
「いえ、左之助さんはジットリしていますから」
「左之、言われているでござるよ」
「そんだけ愛してるって事だ」
「おろぉ……」
パチ、パチ、と将棋を打つ左之助さんと緋村剣心の近くに座って世間話をする私と薫さんの会話に入り、勝手に困る緋村剣心に苦笑を浮かべてしまう。
まだ、実害は無いんですけど。
しとりとひとえに危険が及んでしまったらと想像するだけで不安になりますし、怖いことにはあまり関わりたくないので出来れば早急に対処したいんです。
「それに、あと二年もしたら三十路を向かえますし」
「私に対する嫌味かしらぁ?」
「ういっ?!いふぁい、いふぁいれふ!」
「くっ。なにが三十路を迎えるよ、こんなモチモチした頬っぺたしているくせに!」
「姦しいでござるな」
「剣心、いつもこんなもんだろ」
「そうでござるな。ムッ、王手」「待った」
パチンと飛車を動かして王手を決める緋村剣心に「待った」と右手を挙げ、ウンウンと唸る左之助さんの後ろの茂みに人影を見つける。
多分、あの人が視線の犯人なんですけど。
誰も動いてくれませんね。
そう思っていた次の瞬間、茂みに向かって沢山の苦無や手裏剣、撒菱、指弾が放たれて、大太刀を手に持った四乃森蒼紫を始めとした御庭番衆が、神谷道場の敷地内に攻撃を行っていく。
「今日は蒼紫が護衛でござるか」
「まあ、そんなこったろうと思ったぜ」
二人の反応に困惑する私を無視して、ドタドタと道場の方から走ってくる音が聴こえ、渡り廊下を見るとしとりと剣路君が竹刀を持って走ってきていました。
他にも沢山の門下生が集まってきます。
やっぱり、気になりますよね。
「あ、逃げた」
「ん!!」
薫さんの呟きよりも素早く竹刀を振り抜き、私の事を見ていた人は脳天に竹刀を打ち込まれ、緩やかに膝を突き、そのまま倒れた。
左之助さんに似てきましたね、しとり。
昔は傷付けないように優しく倒していたのに、今は痛みを感じるよりも素早く衝撃を与えて、訳も分からぬままに倒してしまっています。
本当によくやります。
「糸色、知っているやつか?」
「先月、『月光条例』の最終巻を買いにやって来ていたお客さんですね。けど、この人は最終巻しか買っていないはずです」
いつもお客さんの声も顔も体格も何もかも覚えていますから、本当に最終巻しか買っていない、ちょっと変に私の手や顔を見ていた人ではありますね。
まあ、兎に角、初対面の男の人です。