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東京を出立してから十分も経たずに私の足腰は疲弊し、杖を突いている老婆の如くフラフラとしながら左之助さんの隣を必死に歩いている。
「…ひぃっ……けほっ…はひぃ…!………」
「なあ、おぶるぞ?」
「だ、だひっ、大丈夫です!」
「良いから、乗りな。辛いだろ」
フンスと頑張って力瘤を作って元気だと伝えるものの、左之助さんは私の目の前にしゃがみ込み、大きな背中を向け、私におぶさるように言ってくれる。
申し訳無さと自分の体力の無さを嘆きつつ、左之助さんの背中に抱きつき、おんぶして貰う。……うぅ、どうして私は頑張っても体力が増えないんだろう。
そう自分の貧弱さを悲しんでいるのに、もう半分……半分以上は左之助さんに背負って貰えることを喜んでいる自分が居ることに恥ずかしさを覚える。
「重くないですか?」
「重くねえな。むしろ、もっと肉食えよ?」
「け、検討しておきますね」
お肉は嫌いじゃないけど。
左之助さんや神谷さん達は事ある事にお肉をお勧めしてくるから胃もたれしてしまう。そんなに痩せているかな?と自分の腕や腰回りを触ってみる。が、至って平均的な体型だと思う。
「あっ、道は此方です」
「おう。此方だな」
藪の中に入ろうとする左之助さんの顔の横に身を乗り出して、行き先を指差して教える。二年前も通った道だから何となく覚えている。
あのときは一人っきりだったけど。
今は左之助さんもいる。
……よく考えると二年前の私ってひとりで東京まで歩いてきたけど。あの時の私は今より体力があったのだろうかと疑問を抱きつつ、休憩所を見つける。
「少し休みますか?」
「団子か。良いねえ」
ゆっくりと長椅子の近くに下ろして貰い、優しそうなお婆ちゃんにお茶とお団子を注文する。のんびりと景色を楽しんでいると店内にいた先客が話しかけてきた。
「其処のお二人さん、この街道にとんでもねえ妖怪が出るって噂知ってるかい?」
「妖怪?」
チラリと私を見る左之助さん。
いや、いやいや、流石に妖怪に知り合いは居ませんよ?と少し首を横に振って否定する。まあ、ホムンクルスやら何やらと戦ってきた左之助さんからすれば、もう妖怪なんて怖くないかも知らないですけど。
「その妖怪ってのが不思議なヤツでな。見た目は人そっくりだが、人に寄り添ってもらえねえと『寂しい寂しい』って繰り返して、フラフラと歩き回り、自分を助けてくれないと分かったら消えるそうだ」
「……怖いか、それ?」
「怖い妖怪も居ねえってこったな!」
「お、恐ろしい妖怪ですね…」
「「ん?」」
おじさんの話す妖怪の恐ろしさに身震いする。
「それって助けてくれる人だったら、寂しさを埋めるために何処かに連れていくって事ですよね?寂しいから誰かに居てほしい、来てくれるなら連れていく。引き込み型の妖怪ですよ、それ」
「「…………」」
私の言葉にゴクリと唾液を飲む二人は引きずり込まれる誰かを想像してしまったんだろうけど。おじさんは出会うことはないと思う。
多分、その妖怪の正体って、私ですし。
なんとなく、思い出した。
あの頃も体力が無くて、泣きながら舗装された道を歩いて、世界に絶望しながらそれで惰性的に救いを求めて彷徨っていたから……。