みんなに取り囲まれて起きた男の人は悲鳴を上げる間もなく口を押さえられ、四乃森蒼紫達の尋問を受けています。正直に話してしまえば済む話です。
「ぼ、ぼくは、彼女に見惚れていただけだ!」
突然の告白にビックリしながら、薫さんと御庭番衆がの方々は物凄く妖しそうに男の人を見据える。斯く言う私も突然の告白に戸惑っています。
別段、惹かれませんけど。
少し妖しさを感じます。そして、なにより私よりも可愛い人や優しそうな女の子は沢山神谷道場の門下生として通っているというのに、私を選ぶ理由は?
綺麗だからというのは妄言です。
「景さんは左之助の奥さんよ」
「っ、こんな粗暴そうな男と!?」
「おう。粗暴な男だぜ」
「左之助さんは優しいですよ?」
そう言うと彼の視線は私に向き、まるで信じられないものを見るように見つめ、直ぐにまた左之助さんを睨み付け始める。
かなり自分の考え方に自信を持つ人のようですが、左之助さんはとても強くて優しくて頼りになる素敵な旦那様です。ちょっと破廉恥ですけど。
あまり知りもしないのに見た目だけで決めつけるのはいけないことだと思うし。相手を選んで真摯に接することを怠るのは人としてダメです。
「……そんなやつより僕の方が貴方を大事に出来る!どうせ、日雇いの呑んだくれだろう!」
「坊、左之は日本交易の重役でござるよ」
「は?こいつがか?」
この子、少し言葉遣いが現代人っぽいですね。よく見ると髪色も茶色がかっていますし、ちょっと怪しく思える点が幾つかある。
あとで、ドクトル・バタフライに相談して彼の素性を調べて貰っておきましょう。不安要素は出来るだけ取り除いて、しとりとひとえの生活を応援したいです。
「くっ。認めるか!」
「御頭、どうする?」
「放っておけ」
「相楽に食って掛かる度胸は認めるが、ありゃあ華族か士族のガキだな。全部、自分の思いどおりになると信じてやがる目だったぜ」
癋見さんとひょっとこさんの言葉に四乃森蒼紫はそう告げると私の方を向くと「お前は少し自分の顔立ちを理解しておけ」と
何故か呆れられました。
確かに、お母様とお父様も姿お兄様もカッコいいし綺麗な人ばかりですけど。私は、普通です。老け顔や妖しい顔なんて言われたくない。
「大体、おめえらのせいだな」
「なぜ、そうなる?」
「景を見るなり警戒してたじゃねえか」
「アレは糸色の才覚故にだ」
こそこそと話さなくても聴こえていますよ。
全く、私は妖しい黒幕なんかじゃありません!