「景、褌が喋ってたぞ!」
「おいは褌じゃなかばい!」
左之助さんの右腕から頭に絡み付いている赤い目の特徴的な布の妖怪「一反木綿」に思わず、私はこめかみを押さえてしまった。
別に何を言うつもりはないのですけど。
少しばかり登場するのは早くないですか?せめて、ゲゲゲの鬼太郎が産まれてからにしてもらえると助かるのですが、いえ、妖怪の世界ですもんね。
そういうことは仕方ないですよね。でも、どうして左之助さんは嬉々として一反木綿を掴まえて帰ってきたのかを質問したいです。
「おー、
「わっ、滑らか……」
「毎日洗って天日干ししとるけん。よか匂いするとね」
私の身体に巻き付いてきた一反木綿にビックリしたものの、かなり高品質の肌触りに感心しつつ、左之助さんを見たら何故か怒っています。
自分で連れてきたのに、なぜ?
不思議に思いながらも一反木綿の身体を見ていると解れたところを見つけ、折角だからと虹の反物の余りを使って解れを縫い直す。
未来のゲゲゲの鬼太郎の手助けになると良いんですが、余計な事を追加してしまっていたら、私に『地獄の鍵』を預けてくれた閻魔大王様に申し訳無いです。
「綺麗か布ばい!ありがとね」
「フフ、良いんですよ。あなたは未来で私の子供達を助けてくれるかも知れませんから」
そう言うと左之助さんも何となく私が彼に優しくしている理由を理解してくれたのか。渋々と不貞腐れたまま居間の定位置に腰掛ける。
あとで膝枕してあげますから、ね?
「オレの女房に抱き着きすぎだ。河童の褌にするぞ」
「いやばい!?」
「左之助さん、さすがにそれは」
ちょっとだけ怖いことを言う左之助さんに苦笑を浮かべつつ、あまり危ないことをしないように一反木綿に伝えつつ、ゆっくりと縁側の方へと彼を差し出す。
空に飛んでいく彼を見送った刹那、部屋の中に引きずり込まれ、首筋に鋭い痛みと身体を締め付ける太く逞しい腕の筋肉に身体が震えてしまう。
「景はオレのもんだからな?」
「は、はい……」
噛み傷を舐めながら笑う左之助さんにドキドキしてしまう。抱き着かれているから、この心臓の高鳴りも彼には聴こえてしまっているんでしょうけれど。
やっぱり、こういうことは恥ずかしいです。
「左之助さん、痛いです」
「痛くしてんだよ」
チョーカーを外され、そこにも噛み傷を刻まれる。
左之助さんの独占欲がまた上がりました。いったい、どうしたら私は左之助さんに安心してもらえるのか。それが知りたいです。