「いらっしゃいませー!」
太陽の香りがした。
初めて会ったはずの女の子に懐かしさを抱くという奇妙な感覚に陥る私の手を握るひとえに気づき、ゆっくりと深呼吸してお団子を注文する。
「店主さん、新しい人を雇ったんですか?」
「んにゃ、あれは孫娘だ」
「お孫さん!」
お団子屋さんの店主の言葉に感心しながら、しとりとひとえにお手拭きを差し出してくれた彼女にお礼を言いつつ、イヤな視線を感じてしまった。
多分、妖怪の類いではないけれど。
「お団子お待ちどうさま!」
「フフ、ありがとうございます」
「ん!ありがとう!」
「ありがとー」
「いよっしゃ、褒められたぜ!」
グッと小さくガッツポーズをする彼女に何となく理解してしまった。彼女は「かぐや姫」です。ただ、本人にその自覚はないでしょうが、彼女の事をジーッと空の上から見ている人がいますね。
「(私が関わることはないでしょうけど)」
もしも関わったら絶対に悪役とか黒幕とかお前は敵だとか言われるに決まっています。暗黒微笑なんて浮かべたことないのに酷い話です。
しかし、本当に悩ましいです。
私は、何も悪いことはしていないのに。いえ、イギリスでフランケンシュタインの怪物を改造してしまった罪はありますね。
「先生もあの娘が気になるかい?」
「笑顔の素敵な女の子だと思いますよ」
「だろう。わしも良い娘だと思っとるよ」
店主さんの言葉に頷きながら、彼女の姿を手帳に書き記す。未来の世界まで、この手帳が残っているのかはわからないけど。彼女が「演劇部」になったら、いつか思い出して貰えると嬉しいかな。
「そういや旦那がいつもの坊主達を連れて何処かに行っていたが先生は知っているのかい?」
「お昼ごはんですね。うちの主人は浮気なんていう最低最悪のことはしませんから」
「惚気るなら赤べこ行きな」
惚気ているわけではないですけど。
それだけ彼の事を信頼しているということです。まあ、私と出会う前は色々とそういうところに行っていた事は知っていますけど。
男の人はとても辛いんですよね?
「ん!母様の分!」
「フフ、ありがとう。しとり」
もにゅもにゅっと小さなお口を頑張って動かし、お団子を食べているひとえの背中を優しく擦りつつ、彼女の湯呑みを差し出すと少し飲んで、ほうっと息を吐露する。
やっぱり、急いで食べるのは危ないですからね。こういうときに、しっかりと学んでおけば綺麗な所作を覚えることが出来ます。
まあ、変なことを勧める人はいますけど。