某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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相楽夫婦、出立する 急

お団子を食べた後、また左之助さんの背中に乗って移動している間、手持ち無沙汰で彼の髪の毛を弄る。少し癖毛の私からすると羨ましいストレートヘアーなのに、彼は毎日のように髪の毛を逆立ている。

 

拘りの強い人だ。

 

休憩所の奥の部屋や二階で休めるけど。左之助さんとしては一日でも早く蝶野爆爵の話を聞き終わりたいのかも知れない。この招待も不服だったから。

 

「……擽ってえな」

 

「気のせいですよ」

 

サッと両手を彼の首元に回して抱きつき、身の潔白を証明する。私は悪戯も悪いこともしていないので仕返しは止めて下さいね。

 

そう心の中で願う私を背負ったまま歩く左之助さんに。ほうっと溜め息を吐きつつ、もう少しだけバレにくい場所を触れば良かったと反省する。

 

……それにしても左之助さんの見ている世界は高くて大変だな。こんなに背が大きかったら頭が色々なところにぶつかるかもと考えてしまう。

 

実際に家でも当たっているところを見たことあるし。左之助さんや斎藤一は背の高さで損している気もするけど。決して羨ましがっている訳じゃない。

 

本当ですよ?

 

…………私は誰に話しかけているんだろう?

 

「景、さっき妖怪の話したよな」

 

「はい。しました」

 

「アレがそうなのか?」

 

そう言ってゴクリと唾液を飲み、かなり遠くではあるけど。確かにフラフラと揺れ動き、歩いている人影らしきものが見える。

 

しかし、あの妖怪の正体は私の筈では?でも、ああして目の前にいるのに、いきなりお前は偽物と決めつけるのは良くない事ではある。

 

「行きましょう、左之助さん」

 

「お、おお、マジか」

 

ゆっくりと左之助さんは警戒しながら、ふらつき、今にも倒れそうな棒を持つ人影に近付く。目視で見える背丈は私より低くて、妖怪には見えない。

 

いや、アレは子供なのでは?

 

「アレは、子供でしょうか?」

 

「こんなところにか?」

 

こんなところ。

 

確かに、人通りは少なく人気も無ければ行き交うのは旅費を押さえるために歩いている人か、たまに俊足で駆け抜ける郵便配達の人くらいだろうか。

 

「子供一人でこんなところには放っておけませんし。左之助さん、お願い出来ますか?」

 

「……まあ、しょうがねえよな」

 

渋々と私のお願いに応えてくれた左之助さんに抱きついて、私が弄っていた髪型を誤魔化すように彼の頭を撫でてあげる。そんなこんなしている内に、パタリと子供は倒れてしまった。

 

慌てて私達は子供に近付き、左之助さんの背中から降りてうつ伏せに倒れ伏す十か、それくらいの年齢の少年を見下ろす。でも、どこかで見た覚えのある顔……?

 

「死んでねえよな?」

 

「君、大丈夫?」

 

「…め……めし…くれッ……」

 

ぐぎゅるるるるぅ…!

 

すごいお腹の虫の鳴き声と怖い人相に身体がビクンと跳ねるけど。相手は子供だからと深呼吸し、さっきの休憩所で包んで貰ったお団子を差し出す。

 

「飯…!」

 

「すげえ食い意地だな」

 

「良い食べっぷりですね」

 

バクバクとお団子を食べる少年の姿に、ふと何かがダブって見える。そう、どこかで見たことのある顔付き、誰かを連想させる。

 

「(…長谷川…悪…太郎?…)」

 

いや、それは無いかと頭を振って否定する。

 

「助かった!じゃあな!」

 

「……おい、そりゃあ食い逃げ」

 

「左之助さんもしてましたね」

 

「…つ、ツケは払い終えたろ……」

 

まあ、悩むのは後にしよう。

 

それよりも今は銀成市に行かないと。

 

 

 

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