「かーさま、おきゃくさん!!」
「はあい、今行きますね」
鈴の音のように可愛らしい声に呼ばれ、玄関に向かうと大風呂敷を背負った私より背丈の低く、穏やかな表情を浮かべた砂塵を彷彿とさせる妖気に、ほんの少しだけ目を見開いてしまった。
一反木綿の事もあり、来るとは思っていましたけど。まさか一月も経たずに訪ねてきたのは驚きです。いえ、そういうものだと理解していますが、やっぱり「ゲゲゲの鬼太郎」の大御所様が来るのはビックリしてしまう。
「お前さんが糸色景じゃな。ワシは砂かけ婆、気軽にオババとでも呼んどくれ。一反木綿が世話になったと聞いて、少し話をしに来たんじゃ」
「では、お婆様と」
「あい!おばーちゃん!」
居間の方へ案内する途中、モヂカラの結界による怪我や衝撃を受けていない彼女に少し気が滅入る。一反木綿もですが、ある程度の実力を持っていると千を越える結界網さえ意味を成さないようです。
あるいは、無意識的に私が砂かけ婆を安全な人だと、妖怪だと選んでいるのでしょうね。来客用の湯呑みと急須を御盆に乗せて、お茶菓子を持って居間に戻る。
「おばーちゃん、すごい!もっかい!」
「ホホホ、妖怪に物怖じせずに笑えるとは善き出会いに恵まれたんだねえ……」
砂の形を操って猫や犬を作り出す砂かけ婆に驚いたものの、妖怪だから出来るのは当たり前だと思い出す。サンドアート。今度私もしとりとひとえとやってみよう。
「遅くなりました」
「ワシが勝手に押し掛けてきたんじゃ。こんな高価な茶菓子まで出してもらえるだけで有り難い。一反木綿のヤツに聞いたが、ここが弱いんじゃったな」
トントンと砂かけ婆は自分の胸を指差し。
私は苦笑を浮かべながら「ひとえはまだ小さいですから」と言葉を濁し、曖昧に答える。しとりはもう気付いてしまっているから、私が安心できるように、ひとえを守れるように強くなろうとしている。
「……まあ、そういうことにしておこう」
「はい。そういうことです」
「しかし、難儀な人生じゃて」
それは自覚していますし。最愛の人にも会えて、家族を持つことが出来ましたから、私は満足です。そんなことを考えていると小坪が差し出された。
「ワシの用意した妖怪印の薬じゃ。痛みを和らげる効果しかないが、お前さんを延命しようにも……いや、言わん方がええな」
「はい。言わなくて大丈夫です。それと、お薬はありがとうございます。子供達が怪我をしたときにも、大事に飲ませて貰いますね」