「……すげえ味の染みた沢庵だな」
「そうじゃろう。そうじゃろう」
ポリポリと歯応えも味も絶妙すぎる沢庵を食べる左之助さんに釣られて、しとりとひとえも沢庵を食べて美味しさに頬を緩める。
私の作ったものより美味しくて、どうやって作っているのでしょうか?と不思議に思いつつ、雑穀米にも合う沢庵の味わい深さです。
「ところで、この婆さんだれだ?」
「一反木綿の友人の砂かけ婆さんです。痛みに効く妖怪印の薬を持ってきてくれたんですよ」
そう言うと左之助さんも察してくれたのか。
その先は追求せず、しとりとひとえもご飯を美味しそうに食べています。あまり多く食べると塩分過多になりますから、気をつけて下さいね。
「ほれ、もたんとお食べ」
「い、いえ、これ以上は…」
「何を言っとるか!そんなに細い身体でずっと絵ばかり描いておるから疲れやすいんじゃ。食えるときに食う!人も妖怪も食わねば生きてはいけん」
「名言だな」
「ん!いっぱい食べる!」
ずいずいっと唐揚げを食べるように差し出してくる、みんなに頬を引き釣らせ、帯を緩めるべきかを真剣に悩みつつ、少しずつご飯を食べます。
唐揚げ。美味しいけど、そんなに多く食べることは出来ないんですよね。前世も今世も油物は苦手で、食べ続けるというのも難しい。
モグモグと唐揚げを食べながら、どうやってひとえにいっぱい食べて貰おうかと考える私に砂かけ婆は「身体は心より分かりやすい。弱っているのなら休み、食事を楽しみ、緩やかな時間を楽しむとええ」と言ってくれました。
心の休まる時間────。
絵を描いているとき、でしょうか?
「今日は泊まっていきますか?」
「迷惑にならんか?」
「いえ、よくして頂きましたから」
「……いや、ワシは今回は帰るとしよう。お前さんも安易に妖怪に泊まるのかを聞かん方がええ。お前さんは一度受け入れると拒絶するのが苦手じゃろう。───妖怪にとって、その気持ちは取り憑きやすい器じゃ」
取り憑きやすい器。
確かにソウタロスも簡単に取り憑けると言っていたけど。そんなに私は取り憑きやすいのかな?と自分の手や身体を見る。しかし、とくに変わったようには思えない。
「左之助、お前さんもな。すでに何度か取り憑かれとるようじゃが、本来のお前さんなら取り憑かれることなぞあり得ん。おそらく自分の嫁のことを強く想いすぎておるせいじゃろう」
「自分の女房を愛すのは当然の事だろうが」
「左之助さん…♪︎」
そんなにまで私のことを想ってくれていたんですね。私は、感激でドキドキしてしまいます。