「すまぬが其処行く人の子、ちと道を訪ねたいんじゃが構わんだろうか?」
「はい、どこまで、で、すか」
左之助さんや斎藤一より背丈の高く、ほっそりとした痩躯の男性が、「ゲゲゲの鬼太郎」の父親であり、マスコットキャラクターとも言える目玉親父(生前の姿)に驚愕してしまった。
白髪と赤い目、トラ柄の縞々の霊毛ちゃんちゃんこを羽織った幽霊族の彼が目の前に佇んでいる。腰帯に差した長煙管と横笛を腰に佩いている。
「この近くに糸色書店というものがあるそうなんじゃが、如何せん土地勘が無くてのう。出来れば店まで案内してほしいんじゃ」
「えと、糸色書店はここですけど。本の購入ならお好きに手にとって選んで下さい」
「僥倖僥倖。ワシの
サスリと顎を撫でる仕草にテレビの向こう側で観ていた懐かしさを覚えつつ、座敷の方に腰掛けて、「うしおととら」を読み始めるゲゲゲの親父様を見る。
霊気を抑えて、人間のように振る舞っているけれど。私程度の霊視でも正体は見える。多分、わざとなんでしょうが、声が良すぎますね。
そう思いながら店番をしていると、後ろの方ですすり泣く声が聞こえて、後ろに振り返るとゲゲゲの親父様が号泣していた。
やっぱり「うしおととら」はいいですよね。
「全巻、買う。いくらじゃ…」
「全巻は一円ですね」
一冊、三銭の割合です。
子供には楽しく読んでほしいから割引しますけど。ドクトル・バタフライに「儲けるときに儲けておけば子供のためになる」と言われ、この値段です。
「よし、買おう!」
袖口に手を差し込み、財布を取り出したゲゲゲの親父様は一円を払ってくれ。一巻から最終巻まで風呂敷に包み、型崩れしないように帰っていった。
結局、何の目的だったんでしょうか?と首を不思議に思いつつ、お座敷の方に振り向くと木箱が置かれていた。忘れ物なら大変ですね。
「ボス、頼めますか?」
妖怪ムジナのボスに頼めば、私の姿に変化して木箱を抱えて走り出していく。前に言われた私が妖しいというのは、ムジナの変化した姿を誰かが見たからなのかもしれませんね。
もっとも私はあんなに素早く走ったりすることは出来ませんし。妖怪のように強くもありませんから、あまり良いことばかりではない。
更に言えば私の事を怪しんでいる人達はあのムジナのボスを見て、もっと私の事を怪しんできたりすることあるわけです。本当にどうやったら、私の黒幕説は綺麗に消えてくれるのでしょうか。